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管理職の人事考課制度の現状と課題(11回シリーズその8)

2013年05月01日 00時00分01秒 | ブックレビュー

b.昇給考課と賞与考課の考課要素の違い
 昇給考課と賞与考課について、同じ考課要素、考課方法で評価した場合、実績重視の企業では、将来を嘱望されるべき人材にもかかわらず、業績貢献度が低かった場合、昇給でも賞与でも低位となり、その芽を摘みかねない。また反対に、将来性を重視する企業では、その評価が低い者は、好業績を上げたにもかかわらず、賞与についても低い結果となってしまう。従って、「名選手(名コーチ)、必ずしも名監督ならず」の格言を肝に銘じて、昇給考課と賞与考課はその目的とするところから、異なった考課要素・方法を用いることが大切であると思われる。

 具体的には、昇給考課では、現在の個人的な能力の発揮度や業績のみならず、組織活性化に対する貢献度や部下管理、あるいは全人格的要素も含めて、つまり、現時点という点ではなく、将来の幹部登用までの線上でとらえて、考課を行うことが求められよう。一方、賞与考課は、短期的な全社及び個々人の業績に対する考課であることから、企業業績への貢献度、個人目標値に対する達成度などに重点を置いた考課とすることが必要であろう。

 また、近年、部門業績を個人の考課に組み込む企業が増えているが、組織の和が重視される我が国にあっては、個々人の業績の評価を補完する意味でも、部門別業績賞与制度を導入する意義があろう。因みに、アンケート調査では、同制度導入済みの企業が22%、今後導入したいとする企業が28%との回答結果となった。

 なお、業績を評価するに際しては、多くの企業で目標管理制度の導入など、より客観的な物差しでの考課を行い、被考課者の考課結果に対する納得性を高める努力がなされているが、目標管理だけでなく、別立てで、努力度や姿勢といった数値には表しにくい要素も取り入れて、考課を実施している点に注目しておく必要がある。

 ところで、個人主義の欧米などでは、自己のノウハウを人に伝授することには積極的でない傾向があるとの見方がある。一方、我が国では、QCサークル活動が成功したことでも分かるように、話し合いを重んじ、個々人が有するアイディアやノウハウをオープンにすることで、企業業績を向上してきた風土がある。従って、今後の人事考課においても、このよき風土を壊さぬためには、個々人が直接的に上げた業績の高低のみで評価するのではなく、間接的に他の人の業績向上に貢献した部分(成功・失敗のノウハウの伝授、組織活性化・士気向上に繋がるがんばりや潤滑油的働きなど)をも評価していくことが大切であると思われる。(次回へ続きます)