食品以外に寒冷地では長靴の中に唐辛子を鞘のまま入れて保温効果があると思われているが、カプサイシンにその効能はない。唐辛子の構成成分が強いため、接触した皮膚が炎症を起こし、発熱するためにそれを暖かいと感じる。長期間繰り返することは避けるべきで、状況によっては、皮膚がただれ、化膿することが考えられる。
カプサイシンが舌や皮膚に対して痛み(ヒリヒリする)の感覚を与える辛さで、痛感をうまみと感じるサディスティックともいうべき食感である。アルコール類の中でもウイスキーやスピリットと呼ばれる酒類で、ストレートを好む人は、のどで感じる〔のどを焼くという表現もある〕痛さを好む。ウナギの蒲焼きや肝吸いに山椒を多量にかけて舌を麻痺させた感覚もよく似ている。痛みがうまいと思う感覚は、あまり意識されていないが、「辛い」の意味が広範であることや、習慣化し、長い期間に食することにより、皮膚や舌の感覚が徐々に麻痺し、または鈍感になり、香辛料の摂取量が増えても、うまみの快感に変化するのであろう。
激辛カレーや激辛ラーメンを食し、辛さの感覚を押さえるために、水を飲んでみるが、舌を刺激した感覚は水で打ち消すことが出来ない。口に激辛成分の食物が入り、胃に送られるが、口には舌にある辛さの受容体が水で直ぐには辛み成分を薄めるか除去することができないため、何時までも辛いのである。
汗がでるのは辛さが身体に与える痛みは舌の麻痺によって、熱さの感覚も同時に脳に伝えるため、脳が下熱作用として発汗が起きるようだ。この現象は個人差があり、汗をかかない人もいる。
衣食住の人間生活で、衣類の多様性の殆どは、湿気や気温から来る。居住文化は、人間の生活空間から来るのであまり変化はないが、食文化といわれる要素は多様で、辛さは要素の一つに過ぎないが、食文化といわれる辛さだけを取っても、国によって異なる辛さの感覚など多様性を十分知ることが出来る。(このシリーズ最終回です)