反面、腐敗防止のためのスパイスの利用は必要なかったのか、または、素材の味を楽しみ、旬の味に季節感と美意識とが加わり、自然へのこだわりを見て取れる。極力添加物やスパイス更には調味料を避ける方向に進んだことは、良し悪しの判断は別にして、日本人の味覚の幅を狭めてきたようである。海外旅行へ行って、現地語で書かれたメニューを見て分からないままに食事を注文し、出てきた料理の味をうまいと感じることはラッキーで、まずは、受け付けない方が多いのではないか。こうしたエピソードなどをご紹介できればと思った次第である。
味覚には甘い、辛い、苦い、酸っぱい、えぐいであるが、これらの組み合わせがあり、中でも辛いは芥子の辛さや胡椒の辛さの違いがあり、その強さは激辛や大辛、中辛など段階がある。胡椒と唐辛子はどちらも辛いスパイスであるが、同じ辛いといっても、こしょう辛さか唐辛子辛さとでは微妙に異なる。山椒の辛さも独特なしびれを伴う。正しく伝えるためにはスパイスの名前でいうほかない。つまり、味覚の表現は個人的な感覚であり、舌は覚えていても再現する表現が難しい。
九州で生活していたときに胡椒というと唐辛子のことをいっていたようだ。ホワイトペパーやブラックペパーもやはり胡椒と呼んでいて、テーブルに卓上瓶があるとどれをいうのかとまどうことがあった。唐辛子は南蛮ともいい、南蛮漬けは有名である。胡椒の胡の字は国外のことを指すので、胡椒は外国のものという意味が含まれていたのであろう。唐辛子は唐から来たのであろうか、いずれ検討したい。(次回へ続きます)