ミカンの房ごと食べる姿は豪快です。
トビは高い空中で輪を描きながら優雅に舞う。上昇気流を捉え、殆ど羽ばたかずに舞い飛ぶ。タカ属に属し、鋭い嘴を持ち、羽を広げると1m以上になる大形の猛禽類であるが、頻繁に現れるせいもあり、カメラマンからは余り好んで撮影する題材にはなっていないようだ。眼窩が凹んでいるため、眼孔をクリアーに撮るのは難しい。今回のテーマは野鳥のトビではなく、鳶職のことである。
鳶職は建築の基礎工事や建築物の骨組みの組み立てなどをする職種で、江戸時代は消防の仕事をした。冬至は、纏を振り回す、威勢振りと果敢に消火に挑む姿が称讃されていたのであろう。手に持ったトビ口で、燃えさかる柱を崩し、酸素の補給を絶つ消火の仕方を行っていた。建物の骨組みを知っていたので、火消しとも呼ばれていた。トビ口は棒の先端にトビの嘴に似た鉄製の鉤を付けた道具で、丸太を移動するときや、回転させる。
鳶職が、門松作りや商店街の注連縄を張る仕事があるのはご存じであろうか。この時期になると、注連縄作りや松飾りなどの正月装飾品を作り、又は販売しているのは、鳶職である。地域には町内毎に区分けされた場所に店舗を構える。この区分けも江戸時代から続く火消しの担当区分と一致しているのであろう。
高校時代のアルバイトとして、近所の畳屋の加勢をしたことがある。畳屋の知り合いの世田谷にある鳶職で、正月を迎える前に、言葉を換えると歳神様をお迎えする前に、各商店の門前に注連縄を張る。竹笹を左右に立てて、御幣を渡した藁縄に取り付ける。結界すなわち、神様の入り口を作るわけである。飾り付けが済んで家からはお礼に金一封がいただけた。門松については植木職人が作る場合も多い。注連縄などの商品はおそらく専門職が作り、俄店舗に並ぶ。最近は榊(サカキ)や、若松はスーパーマーケットでも売られるようになった。注連飾りには裏白と呼ばれるシダを用い、ユズリ葉を飾る。ユズリ葉は新芽が育って始めて葉を落とすので、世代交代を示す。
松飾りは門前に飾るが、若木を使うことで、環境破壊に繋がるとして、印刷した若松を使うところもあるようで、そのこと自体はよいとしても、神様を迎える神事であれば、正月用に栽培されているので、自然破壊にはならないであろう。新たな年を迎える儀式は、心機一転の機会であり、禊ぎによる精神性の清らかさも合わせて生み出すのであろうか。