縄張りの中のようでしたが、結構広く、定位置が定まっていないようでした。
単純に就職率の向上だけを考えれば、強制的に企業の採用条件を下げさせることや、採用する企業の条件にマッチした教育を行えばよい。そう単純ではないのは、企業の体質が変わり、即戦力になる人材を採用する傾向が一段と強くなっているからである。従来は、無垢の新入社員を採用後、企業独自の教育訓練をOJT,OFF-JTを通じて使える社員に育ててきた。それが採算性や指導者不足等の環境変化で十分に機能しなくなったことによる影響が強くなったといえる。
グローバル化の影響も無視できない。国内の生産部門は海外への移転によって、空洞化している。現地で活躍する人材の必要性は大企業ばかりではなく中小企業にも及んでいて、販路拡大や、現地の従業員の管理など、海外要員の採用は必然である。異文化の中で実力が試され、世界を相手の業務は単なる事業内訓練だけでは限界がある。前例がないパイオニア的要素が強くなり、指導者がいないという状態が続いていることにも関係している。残念ではあるが、海外勤務指向の若者が減っていることはどのように対処すればよいのか、力及ばず、即効可能なアイディアは持ち合わせていない。
企業に従業員の育成・指導体制がなければ、採用者の条件は即戦力になる人材ということになり、企業経験のない学卒は就職できないか出来辛いことを意味する。人材登録会社からの派遣労働でその場を凌ぐ現象が起きている。場合によっては派遣労働者の繰り返し延長を行っている。新規採用しても企業は解雇による労働争議のリスクを回避する目的で、非正規とする方法を取るため、正規社員を敬遠する傾向が強くなる。従って、就職時点までに、即戦力に近い人材の育成を行わなければ就職率の低下と正規社員の割合が低下することに歯止めはかからない。
即戦力といっても、生産工場は徹底した合理化と無人化、情報機器の導入、センサーやロボットによる自動化が進み、人材は一人で何役もこなす高度な熟練者や技術者、企業戦略に必要な情報ハード・ソフトを操作し、総合的な管理業務までもできる万能人材と自動化設備から除外された業務処理をアルバイト的な業務をこなすパート従業員の二極分化が進行していて、学卒にはどちらもふさわしい環境にはなっていない。従来は単純業務を処理から始め、ジョブローテーションによって時間をかけて一人前になっていたが、もはや期待することは出来ず、その余裕は企業にはないといえる。
果たして、就職に際し、どこまで、必要な上記のような能力を獲得できているのか、採用試験や面接で、様々な対策をいわれているが、現在の大多数の学生等が受ける高校から7年間の教育期間を経て、これらの条件を具備できる人材は数が限られている。(次回へ続きます)