滅多に見せない尾羽を広げてくれました。
生活に必要な住に関わる信頼関係に広がりを見せている問題が発生した。建物を支える地盤改良に使用したコンクリート杭の支持基盤に到達しているというデータが流用され実際と異なることが判明したからである。マンションの住民が、手すりのズレに気づき、その原因を調査する過程で生じた事柄である。この業者が手がけたマンション等は全国に4000棟にも及び、住民の不安は止まるところを知らぬ状態が続いている。改築や、新築となるとすでに生活している居住者にとっては、補償問題等多くの難題に遭遇する。
こうした問題の再発を防ぐために投げかけられた課題は今後どのようにして改善を図っていくか、業界や国を挙げての対策を講じていかなければならない。まずは手がけた建物の調査であるが、公表を拒む居住者も多いと聞いている。同様な不正が総てではないにしても、資産価値の低下は容易に想像がつく。補償が十分行われたとしても立て替え等の期間は仮住居に移転する必要もあろう。居住地域が異なれば、生活全般にわたって影響を受ける。ここは粛々と進めなければならないが、同様な手抜きやデータの改ざんは、同業多社に及ぶ可能性もあり得る。大手に同様な不正が判明すれば、業界全体の信頼関係は失墜する。
原因を追及している段階でのコメントは避けたいが、自分なりに思いついたことについて述べることにしたい。建設業の重層構造はゼネコン、一次下請け、二次下請け以下、下請けが孫、ひ孫、玄孫と続く。管理体制が複雑化し、最先端で工事に関わる人材は、専門家ではなく、日雇いや、非正規労働者である。人材不足のため、外国人労働者も多い。
このことはプロの職人集団ではなく、将に素人集団が関わっていることである。経験が乏しく、低賃金で3K職種でもある。工期が決まっていればどこかに手抜きが行われることが常態化するという問題が内在しているのである。
重層構造をすぐに改善できないことは利益追求が根底にあり、効率を最大限に追求した結果であるため、そう簡単に構造転換は難しい。では管理体制を強めること、法整備を強力にといっても、業界全体に及び、管理だけではどうにもならない。自然を相手の仕事で、地形等バリエーションも多く、知らなくてはならないことが多い。とはいえ、時間はかかるが、専門家の養成以外に解決策はない。人材の育成である。
若者が集まらない世界でもあり、魅力的な職場への一層の改善が求められているのであり、デザインや営業ばかりに就職希望者が集まるのは、どこかでミスリードが行われているに違いない。本質的な信頼関係の醸成は、居住者の性善説にあぐらをかいてきた業界の怠慢が起こした事故ともいえる。