黄昏どき

老いていく日々のくらし 心の移ろいをありのままに

戦争のない平和な世界を

ぽたり先生

2018年03月20日 | 思い出

 

1946年(昭和21年)4月

道北の小さな町に女学校が新設され

 

私は転校生として再び1年生になった

 

60人1クラスだけの1年生 

 

運動場も音楽室もない仮校舎

 

先生たちは 復員してきた人 神主さん お坊さんなど経歴も様々だが

 

自由に勉強できる嬉しさでいっぱいだった

 

しばらくして 中年女性の音楽の先生が赴任してきた

 

 東京の大空襲で家族も家も皆失い 

身寄りがないという先生は 校内に住むことになった

 

 美しい洗練されたソプラノで はじめて聴いたクラシック歌手だった 

皆は 先生を大好きになり音楽の時間が待ち遠しかった

 

普通教室で

オルガンを弾きながら最初に習ったのが 

“ぽたり”の歌 

 

いつも歌うので “ぽたり先生”とあだ名がついた

 

追憶 ローレライ 希望のささやき など

 少女の愛唱歌は 楽譜などなしで教わった

いつ頃だったか覚えていないが

 突然 

別れの言葉もなしに 風のように去っていってしまった

しばらくして贋の先生 免許のない教師だったことを知ったが

良い思い出だけ残っている

70年以上経ても ぽたりの歌と

 先生のことは クラスメートの集いでも話題になる

落椿という題名で 

大正時代に作られた曲と知ったのは ずっと後の事である

 

落椿

 

 

作詞 吉丸 一昌
作曲 ウェーバー

 

ポタリ 地(つち)の上に
小さな音が ころがり落ちた
  ハテナ 何が落ちた

 

ポタリ また聞こえる
雨戸をあけて よくよく見れば
  アハハ 椿の花

その頃は椿の花は観たことがなかった


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