2015年5月13日。
足元がヒヤッとしたので目が覚めた。
布団が猫の小便臭かった。飼い猫ミックの仕業だ。
昨夜、職場の斉藤君から頂いたアンピーオのサドルをつけかえるべく
玄関で作業し台風なのでそのままにしておいた。ミックの便所の
邪魔になったみたいだ。報復として俺の布団はやつの小便まみれになった。
そこでふと思い出した。
今日は俺の数多い記念日の中のひとつ上京記念日だ。
21年前の5月13日。
俺は福岡からベース一本とかばんだけでこの街へ来た。
住む家も、働くとこも決めず来た。
「俺が日本のロックを変えますけん」と鼻息も荒く。
笹塚って町は顔見知りが住んでいて、新宿や渋谷に近いという理由で
住む場所と決めた。上京当日は大学受験の合格発表を見るべく
共に上京した大橋の親戚を尋ねるべく渋谷を経由し友達の家に泊まり、
翌日に始めに入った不動産屋で家を決め、始めに入ったスパゲティ屋で
仕事を決めた。
風呂トイレなしの四畳半。バイトは自給650円。財布には親父が
「お前どうせすぐ帰って来る事になるやろうけん、往復の交通費たい」と
くれた餞別と警備員のバイトで貯めた20万。
全てが、本当に全てがそれらからスタートした。
今日に至るまで色んな事が起きたよ18歳だった俺よ。
有名なバンドの前座、テレビ、ラジオ、サイン攻め、全国ツアー、
アメリカツアー、契約、CD発売。
色んな事が起きたよ18歳だった俺よ。
結婚、4人の子供達が産まれ5人目がおなかにいる。
死人も出た。死人も出た。
君はこの人性をこの39歳の俺の人性を想像できるかい?
無理やな。あまりにも喜びと悲しみに満ちている。
あまりにも楽し過ぎる。
18歳の不完全な田舎侍にこれを想像する事はできん。
だが、これは俺の人生だ。
いつのまにか
いつのまにか
人の為の人生だって事に気がついたんだ。
そしてそれに気づいた瞬間、俺は俺の人生を
本当の意味で生きているって事に気づいた。
己を明け渡したのよ。運命に。
最高の人生でした。
この先何年生きるか分からんが、この感覚を忘れないようにな。
さて、洗い物でもして
子供達に朝が来た事を教えないとな。
今日は記念日だ。
今村竜也