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女子プロレス小説書くなら、コレ読んどけっ! 其の弐

2010年09月23日 | 女子プロレス

 今回は前の記事で紹介した『慟哭のリング』だけでなく、様々な女子プロレスを題材にした小説やマンガに多大なる影響を与えた《歴史的名著》を紹介!


『プロレス少女伝説』(井田真木子・著 かのう書房 1990年)

                      


 女子プロレスが多団体時代を迎え、客層もローティーン少女たちからコアな男性プロレスファンたちへと変革した、90年代を彩ったいわゆる《女子プロレスブーム》が始まらんとする以前に発表されたルポタージュで、この(執筆された)時点では全日本女子には《大スター》と呼べる選手は皆無で、ヒールのトップであるブル中野がたった一人で団体を支え、その後の対抗戦で一躍スターとなった北斗晶などはまだ格的には彼女に比べ二枚も三枚も低かった時代だ。

 そんな《冬の時代》に、一般スポーツファンからは認知されていない《女子プロレス》という題材で、作品中で扱う選手も、柔道出身で先輩選手とのシュートマッチで名を上げた神取忍、中日混血の天田麗文、日本の女子プロレス団体に《参戦》ではなく《所属》したアメリカ人レスラー、《メドゥーサ》ことデブラ・ミッシェリーという、華やかなスター選手ばかりを見ていたらまず目に付く事はない選手を採り上げて、特殊な生活環境下で育ち、それぞれの《理由》でプロレスラーという《特殊》な職業に就いた女性たちを見事に描いたヒューマンドキュメンタリーだ。

 冒頭に書いたように、このルポタージュは後に発表される女子プロレスを題材とした創作物に多大なる影響を与えた。『慟哭のリング』の主人公・紅華は紛れもなく天田麗文その人だし(かなりドラマチックに脚色されてはいるが)、神取忍に至っては彼女が団体対抗戦により一般知名度が高くなる前に描かれた長短ある女子プロレスマンガに登場するライバル像(男勝りでセメントがめちゃめちゃ強い)にエピソードを含めかなりパクられている。それだけ彼女が当時の女子プロレスに於いて異質の存在だったか、そしてこの本で《最強幻想》を抱かせるほどに《魅力的》に描かれていたかという事だ。
 
 ワタクシもこの本を読んで《神取忍・女子プロ最強》という幻想を抱いていた一人なので、団体対抗戦に於ける対・北斗晶戦以外その真価を見せられないまま今もプロレスを続けている神取に「なんだかなぁ…」という気持ちを持たずにはいられない。せめてシングルで長与千種と対戦していてくれればなぁ…

 (書影は1993年に文春文庫から発売された時のもの)