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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】独在住の日本人が語るドイツ 日本人への警鐘

2021-12-28 13:46:02 | 【経営】 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】独在住の日本人が語るドイツ 日本人への警鐘

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

本

■  今日のおすすめ

 

  『「メルケル仮面の裏側」―ドイツは日本の反面教師である―』

                     (川口ロマーン恵美著 PHP新書)

  『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』

                     (川口ロマーン恵美著 WAC)

  『住んでみたドイツ9勝1敗で日本の勝ち』

                     (川口ロマーン恵美著 講談社α新書)

本

■  ドイツ在住35年の日本人が語るドイツ(はじめに)

 

 著者は、1985年ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科を卒業、以来35年ドイツに在住し、拓殖大学日本文化研究所客員教授を勤める作家です。その間、巾広く政治・社会・経済に関わる30冊以上の著作を発表。ドイツを中心とするヨーロッパから見た日本に関する記述は「真実」に溢れています。

 ドイツと言えば、明治維新から間もない日本にとって、「近代国家」として歩み出したという共通点があり、法制、軍事、科学、芸術 など様々な分野で模範となる国でした。

 現在も、技術、経済、医療面での交流は活発で、日本にとってドイツはヨーロッパ地域最大の貿易相手国、ドイツにとっての日本はアジア地域で中華人民共和国に次ぐ貿易相手国です。自動車産業においては最大のライバル同士として、世界でトップ争いをしています。

 著者から見た日本像・ドイツ像は「住んでみたドイツ9勝1敗で日本の勝ち」の表現に現れているように、ドイツ礼賛ではありません。特に東西ドイツ統一の1990年から2021年9月にメルケルが4期16年の首相任期を終えるまでの政治・経済・社会の変化を、メタ(必ずしも表に現れない事態の原因となっている真の事実)から解き明かしているのが紹介本です。

 紹介本が語る日本人の知らないドイツの「真実」について、次項でその一部をご紹介します。

本

■  東西ドイツ統一の象徴メルケルの16年間の長期政権とドイツ、EUの行方

 

 1989年から1991年までは、東欧の脱共産化、ベルリンの壁崩壊、東西ドイツの統一、そしてソ連崩壊と続きます。冷戦が終わると同時に「世界地図が塗り替わった時代」でありました。

 この時代に生きたのがメルケルです。父親ゆずりの「第三の道(民主的プロセスによる社会主義を目指す)」の思想をバックグランドに持ちながら、「私は社会主義とは決別」と表明し、ベルリンの壁崩壊を機に保守政治家への道を歩みます。

 賢さ抜群のメルケルは、身ぎれいさを貫き、他の東ドイツ出身の政治家がソ連のスパイ容疑などで失脚する中、唯一の東ドイツ出身の政権中枢の政治家として生残り、要職を順調に昇っていきます。

 1991年1月には女性・青少年問題大臣に就任。1994年には環境・自然保護・原子力安全大臣を務めます。1998年~2005年はCDUからSPDに政権が移りますが、その間にCDUの幹事長を経て、2000年にCDUの党首に就任します。

 2005年CDUが総選挙で勝利すると同時に首相に就任。メルケルの16年間の長期政権がスタートするのです。

 著者はこの16年間の変化について、「ドイツは変わった。社会主義化、中国との抜き差しならない関係、難民問題、エネルギー問題、反対意見が抑え込まれ活発な討論の出来ないソフトな全体主義化」とコメントしています。そんなドイツのこれからの行方はどの様になるのでしょうか?

 

【もう誰もドイツを信じない―中国投資協定の謎―】

 2020年12月30日、ドイツがEUの議長国でいられる最後のタイミング、言い換えればメルケルのEU発足28年に於ける16年のEU治世の最後のタイミング。一方中国の様々な暴力が明らかになり、米国の大統領がバイデンに替わりEUと米国が共同で対中包囲政策を敷こうとしているタイミング。

 そんな時、法治国家ではない中国相手の投資協定交渉は2014年以来遅々として進まなかったにも拘らず、突然合意の発表が行われました。

 何故この様な突然の合意が発表されたのでしょう。それは、バイデンになったら対中政策で共闘せざるを得ないと予測し、ドイツの自動車を中国で確実に売るための何らかの下地を作っておく必要を感じたのではないかと言われています。著者は次のように指摘します。「EUの国々は、メルケルのした事をちゃんと見ている。メルケル治世の後遺症は、彼女が政界を去ってから次第に現れてくるに違いない」と。

 

【EU発足から28年の内16年のメルケル治世で、EUの静かな崩壊へ】

 メルケル治世の大きな問題は難民問題です。EUにおける特徴的な基本ルールはダブリン協定とシェンゲン協定です。2015年9月5日、メルケルはこの2つの協定を破ることまでしてハンガリーで足止めをされていた難民にドイツの国境を開いたのです。

 ハンガリーに到着した難民はハンガリー国内のみで滞留できるのです(ダブリン協定)。難民は到着国以外へは自由に移動できません(シェンゲン協定)。両協定は難民以外のEUの移動の自由と安全を確保する、経済安全保障上の協定といって良いでしょう。

 しかしメルケルは、この経済安全保障のルールを人道問題に置き換えハンガリー到着の難民を、自由にドイツに入れたのです。ドイツに流入した難民は100万人を超えたのです。この後、2015年11月にはパリで、2015年12月にはケルンでテロが起こります。難民とテロの関係は明らかではありませんが、EU各国はドイツから難民が漏れ拡散することを恐れ、非常時の例外規定を使い国境を閉め入国検査を始めたのです。

 ここでダブリン協定とシェンゲン協定は一時停止となったのです。その後、詳述しませんが、難民問題はドイツ国内では様々な矛盾を生み、EUに於いても社会不安の増大、アイデンティティーの喪失と分断を招いているのです。イギリスのEU離脱の要因にもなりました。

 「メルケルは大変な種を蒔いた。100年後のヨーロッパはどうなっているだろう」と著者は記します。

本

■  メルケル退任後のドイツとEUの行方を見守ろう(むすび)

 

 2021年12月8日、メルケル政権に代わり、社民党(SPD)、環境政党の緑の党、リベラルの自由民主党(FDP)の連立政権がスタートしました。ドイツにもEUにも早速変化が出始めています。ポスト・メルケルに注目です。

本

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

  http://sakai-gm.jp/index.html

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

 

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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 世界最高峰の経営教室

2021-06-24 09:30:32 | 【経営】 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 世界最高峰の経営教室

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

■  今日のおすすめ

   「世界最高峰の経営教室」(広野 彩子編・著 日経BP)

 

■  「世界最高峰」の名に恥じない現代の必読書(はじめに)

 世界の主流の経営学である「演繹的理論」「実証性経営理論」を日本に持ち込み、日本の経営学に一石を投じ、「世界標準の経営理論」を著作した早大の入山教授が序文で次のように述べています。『本書に出てくる17人の世界的な経営学者・経済学者は豪華。よくぞこれだけのメンバーを集めたものだ。「世界最高峰」の名に恥じない、現代の必読書』と。

 一方著者は“おわりに”で面白い感想を述べています。『好奇心のおもむくままアプローチし、一見まとまりがないように思えたものが、一つのテーマに貫かれていたことに気づいた。それは、「どうすれば日本人の意識や行動が、環境の変化に合せて進化していけるのか」だ。これは、どの教授に対しても“日本ではこうだが、この現状からどうしたら変われるか、どう変わったら生き残れるか”という質問を投げかけていたから』と。

 私は、入山教授のここまでの称賛を読み、また、紹介本を編集・著作した著者が17人の世界的な経営学者・経済学者と対談した背景を知り、紹介本が“激変する環境の中で、日本企業が如何に変化・進化し生残っていくか”についての有意義な示唆を与えていることに納得をしました。

 加えて、紹介本は経営学者・経済学者の理論を紹介するのではなく、著者の上記Q(質問)に対する経営学者・経済学者の熱意溢れる日本企業へのA(アドバイス)を対談調で記述しており、判り易く、示唆に富んだ知見を発信しています。

 その様な示唆の中から最も注目した“経営教室”を次項でご紹介します。字数の関係もあり、ご紹介は1項目だけですが、他にも有意義な“経営教室”が多くあります。是非、紹介本を手に取りお読みください。

 

■  「世界最高峰の経営教室」に見る“日本の企業経営に示唆となる知見”

 

【変化対応力を高める方法論「ダイナミック・ケ-パビリティ」】

 「ダイナミック・ケ-パビリティ」論の提唱者、米カリフォルニア大学バークレー校デビッド・ティース教授の登場です。ティース教授は「知識創造理論」を提唱した野中侑次郎教授とバークレー校で一緒に教鞭をとった間柄で、個人的にも親しいことは勿論ですが、「ダイナミック・ケ-パビリティ」論と「知識創造理論」との親和性を見出すことができ興味を覚えます。

 「ダイナミック・ケ-パビリティ」とは、「組織とその経営者が急速な変化に対応するために、内外の知見を結合し、構築し、組み合わせ直す能力」と定義されます。

 仕組み的には、『「Sensing(センシング〔察知:予測⇔挑戦〕)」、「Seizing(シージング〔獲得:解釈⇔意思決定〕)」、「Transforming(トランスフォーミング〔変容:学習⇔調整〕)」を実行する能力』と表せます。(以下この枠組みを、その英単語の頭文字をとってSSTと呼称する。)

 実践的には、「長期的な戦略を探索するため、ダイナミック・ケ-パビリティの核である、「分権化(組織の上下関係が緩くフラットで協働する組織)」と「自己組織化(ビジネス機会を見つけると俊敏に社内起業の形でビジネスがはじまる組織)」をプラットフォームに置き、市場における機会や脅威を察知し、新しい価値・事業創造のための人材や資源を動かし競争優位事業モデルを獲得し、その新たな事業のガバナンス体制を整備し、学習と調整により日々変化に対応しながら、定期的に主要な戦略を変容させ、最終的に“まねできない”事業を確立する展開」と表せます。

 世界のダイナミック・ケ-パビリティ企業として、日本では唯一トヨタが「自己組織化」に成功している企業として挙げられています。トヨタは、SSTと親和性の高いトヨタ開発方式の「LAMDA」(Look;観察する、Ask;質問する、Model;モデル化する、Discuss;議論する、Act実行する)を活かし、次世代市場の自動運転においても、競争力を発揮しています。(「トヨタ、自動運転の特許競争力、IT系を逆転し世界2位」〈日経2021.5.17朝刊〉)

 ダイナミック・ケ-パビリティに関連して面白いことを発見しました。それはティ―ス教授が「ドラッカーの語録を私が理論化した」と言っていることです。

 ティ―ス教授は、ピーター・ドラッカーの『「マネジメント」は物事を正しく行うことであり、「リーダーシップ」は正しい事をすることである』を形式知化し、「リーダーシップ」の概念を「ダイナミック・ケ-パビリティ(変化に応じた自己変革による新しい価値・事業の創造)」、「マネジメント」の概念を「オーディナリー・ケイパビリティ(現状の利益の最大化)」と置き、この2概念を対比軸に置き、変化対応力を高める組織イノベーションを達成する「ダイナミック・ケ-パビリティ」論を構築したのです。まさに、ドラッカー思想のフレームワーク化を目指したのです。

■  「世界最高峰の経営教室」から得た示唆を経営に活かそう(むすび)

 

 前項で採り上げた“特に注目した経営教室”は、私たちの経営に活かせる興味深い内容でした。他の“経営教室”にも、それぞれの立場に応じた有意な示唆を見つけることが出来ます。得られた示唆を経営に活かしたいですね。

 

【酒井 闊プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

 https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

http://sakai-gm.jp/index.html

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 『企業経営の教科書』 経営の原理原則を確認しよう

2021-04-22 05:46:00 | 【経営】 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 『企業経営の教科書』 経営の原理原則を確認しよう

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

本

■  今日のおすすめ

      『企業経営の教科書』(遠藤功著 日経文庫)

本

■  ニューノーマルの時代の「経営の原理・原則」を確認する(はじめに)

 

 著者は紹介本に至る著作の歴史を語っています。“紹介本「企業経営の教科書」(2021年1月15日刊行)は、最初の著作である「企業経営入門」(2005年刊行)とそれに続く「ざっくりわかる企業経営のしくみ」(2014年刊行)がもとになっています。前著2冊は累計46,500部のロングセラーとなりました”と。

 私事ですが、約10年前経営コンサルタントとしてスタートするに当たり、経営管理理論の原理・原則を「企業経営入門」から学びました。この度三代目となる紹介本「企業経営の教科書」と出会い、両書を比較し、企業経営の普遍性と大きな変化を同時に感じているところです。   

 「企業経営入門」と「企業経営の教科書」を比較してみますと、約三分の二(「企業経営入門」:211ページ⇒「企業経営の教科書」:322ページ)は章立て・構成が殆んど変わっていないことに気付き、改めて経営の原理・原則の普遍性を確信したところです。一方、約三分の一に相当する大きな変化が「企業経営の教科書」に経営の新たな原理・原則として取込まれています。

 今回はこの新たに取り込まれた経営の原理・原則の中から、注目点を次項で紹介させて頂きます。

本

■  新たに取り込まれた「経営の原理・原則」

 

【「VUCA」の時代の「両利き経営」】

 「VUCA(注1)」と「両利き経営(注2)」は、With・COVID-19の時代における企業経営のキーワードになりました。紹介本は「VUCA」の時代には「バックキャスティング経営」が大切と説きます。つまり、「未来のあるべき像」を起点に「今やるべきこと」を決める経営が必要と説きます。それは「未来のあるべき像」から「OODAループ(注3)」により『新規事業の「探索」』をし、「探索」した事業テーマを『既存事業の「深化」』で使うPDCAサイクルを回し事業の持続成長領域への展開を目指す事とも言えます。

 『既存事業の「深化」』は比較的取り組み易いのですが、『新規事業の「探索」』は世の中が求める価値をゼロから創造するには、組織能力、リーダーシップ、マネジメントが必要となります。経営モデルとしては、『「OODAループ」を活用する「OODAマネジメント」(本欄“私の本棚2020.10.27”)』が参考になるのではないでしょうか。

(注1)

 「V・U・C・A」とは「Volatile;変動、Uncertain;不確実、Complex;複雑、Ambiguous;曖昧」を表します。

(注2)

 「両利き経営」とは『既存事業の「深化」』と『新規事業の「探索」』のどちらか一方ではなく両方を同時に追求する経営を指します。

(注3)

 「O・O・D・A・ループ」とは「Observe:観察(見る、観る、視る、診る)」「Orient:情勢判断(分かる、判る、解る)」「Decide:意思決定(決める、

極める)」「Act:行動(動く)」「Loop:改善(見直す)」のサイクルを表します。このOODAループは、状況を監視・観察、人から話を聞く等によ

り収集した情報を通して、状況の変化や既存の理解や思考との違いを明らか

にする、「気づき方法論(Situation Awareness)」です。

 

【デジタルが変える企業経営】

 「デジタルが変える企業経営」には二つの大きな流れがあると紹介本は指摘します。一つ目は企業全体の仕組み・運営をデジタル化し、過去の延長線にない効率性の高いビジネスモデルに転換することです。二つ目はデジタルテクノロジーを活用した新たな事業の育成に注力し未来を担う新たな事業の柱を構築することです。

 一つ目の事例として、『「1on1ミーティング(2021.2.17日経朝刊記事)」』の仕組みを、『場所を問わず「オンラインでも対面でも」』出来、『AIとXaaSによる「クラウド1onアプリ」』を活用し、『デバイスは「スマホでもPCでも」』により運用する事例があります。「1on1」の仕組み・運営をデジタル化することで、場所に制約されず、AIの活用による仕組みの効果的運用、XaaSによる導入の簡易化を実現し、従業員満足度(ES)やモチベーションの向上を超えた組織・従業員のエンゲージメントを高め生産性を向上させる新しい時代の取組みと言えます。

 二つ目の事例として面白いケースをご紹介します。多くの『大手完成品装置メーカーの「部品発注図面・納期条件」』と『部品の板金・加工中小会社の「各社の技術特性」』の双方のデータを把握し、両者に存在した『非効率・非合理的な「発注」と「受注」』を『「調達」と「納品」の革新的受発注』に変換し『技術的・コンサルタント的受発注仲介業』として成功を収めているQ社の例です。Q社(仲介業者)はまず自社で、完成品メーカー(発注者)の3次元CAD(コンピューターによる設計)データを読み込み、次に図面通りの部品を作るには材料をどう切断し、穴を開け、曲げたらよいかの加工プロセスを分析し、その上で最適な部品加工会社(受注者)を割り出し、加工会社に見積もりを作成させ、発注者が見積もりに納得したところで、Q社が受注者に発注します(2021.2.17日経朝刊記事より)。

 Q社は、埋もれていた技術のある中小加工会社に活路を与え、完成品メーカーの大幅コストダウンと完成品の品質向上をもたらしました。デジタルテクノロジーを活用した未来を担う新規事業と言えます。

 

【上記以外の新たに取り込まれた「経営の原理・原則」】

 

 上述2項以外にも時代の変化を取り入れた以下の新たな経営視点が紹介本に記述されています。是非お読みください。

 

□   三つの基本戦略を超える新しい戦略(知的財産戦略など)

□   デジタル・イノベーション(デジタル・ディスラプションへの対応戦略)

□   マーケティングの新たな潮流(インバウンドマーケティング等)

□   成長エンジンとしてのマーケッティング(「マーケティング4.0」と「5a理論」)

□   コーポレート・ガバナンス(「社外」の視点を取り入れた組織経営を!)

本

■  ニューノーマルの時代に「経営の原理・原則」に立ち返ってみよう(むすび)

 

 経営者あるいは経営に係わっている皆様、現時点で注力・実施している経営課題が経営全般にわたる「経営の原理・原則」と照らし合わせて適切かどうか紹介本で確認してみませんか。何か欠けている点はありませんか。変化に対応する新たな取り組みは出来ていますか。

 世界的なWith・COVID-19の影響の下でのニューノーマルな時代の今こそ、「経営の原理・原則」に立ち返り、経営全般について見直しをする良いチャンスかもしれません。

 

本

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】169 必読!統計で見る日本の針路

2021-02-22 05:46:00 | 【経営】 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】169 必読!統計で見る日本の針路

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

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今日のおすすめ

 『数字・データ・統計的に正しい「日本の針路」』

(高橋 洋一著 講談社+α新書)

目からうろこ「統計的に見る日本の針路」(はじめに)

 紹介本の著者は自らを「数量分析家」と称しています。経営分析でも、統計や関数を使って分析すると、従来の方式によるものと異なる解が出て、新たな発見をすることがあります。著者は「日本の針路」を、世界中のデータを使い、統計・関数的に分析しその結論を示しています。

 著者の示す結論の中には、既成的考えを覆す、新たな知見を示しているものがいくつかあります。その知見は、世界情勢を踏まえつつ、これからの日本の政治・経済を正しい方向に導くための重要な鍵となるものであり、又日本の将来に希望を持たせるものです。そのいくつかを次項でご紹介しましょう。

 なお、紹介本は「現代ビジネス」連載『高橋洋一「ニュースの深層」』のコラムから特に反響のあったものに加筆修正したもので、時の経過によりコラム記事の結果が出たものもありますが、データ・統計・関数的分析により結論を出すプロセスは、これからも十分通用するものとして興味深く読むことができます。

えっ!と驚く新たな知見〞の一部をご紹介します

【日本の借金1,000兆円はウソ】

 私は、従前から財務省が国内に向けては「(消費税増税の)国際公約を守らないと国債が暴落する」といい、海外に向けては「日本の国債は安全」と宣伝する、いわゆる二枚舌を使っていることについて疑念を持っていました。海外に向けて言っていることに真実があるのではと思っていました。

著者の、日本の財政に対する分析、分析に基づく結論に「やはりそうだったか」と納得しているところです。著者は「ある意味で財政再建が完了したとも言えてしまう」と記しています。

著者が論拠としているところは、日銀も含めた連結ベースでは(平成27年12月現在)、概算で(国の借金の数字が2013年度までしか公表されていないため)、ネットの国の借金は150~200兆円まで圧縮されていると分析している点にあります。

これでいくと、国のネット借金のGDP比率は30~40%となり、同じベース(ネット国債)で数字のとれるイギリスやアメリカ(GDP比率80%~60%)と比較し、著者は、「日本の財政が危機的だという論がいかに滑稽か、よくわかるだろう」と記しています。

何故この様な状態が存続しているかについて、著者は、「(財政の貸借対照表の資産の部の中身を見ると)貸付先や出資先に、財務省所管法人が他省庁に比べいかに多いかがよくわかるだろう。天下り先を確保しているのだ。」と記しています。 

このように見てくると、残念ながら国をはじめとし、構造改革に手がついていないと言わざるを得ません。ここまでの著者の結論に至る詳細なデータは、紹介本をぜひお読みください。(高橋論に対する反論も多いですが、高橋論のポイント・核心は日銀も連結対象に含めた点です。この点は、日銀法の改正やハイパーインフレを起こさないための政策論等に論点が広がりますが、ある意味では画期的・発展的な考え方と私は思います。)

【政府の掲げる「名目GDP600兆円」は根拠がある】

 著者は、2000年代の世界の先進国のインフレ率と名目GDP成長率の数字を集めた散布図から名目GDP成長率(Ⅹ)の回帰直線式(Ⅹ=1.2+1.2×インフレ率)と相関係数0.69の解を得ています。

著者は、この回帰直線式のインフレ率に3%を入れると名目成長率は4.8%になり、これが3年強続けば、日本の名目GDPは600兆円に達すると説きます。日本のGDP600兆円の達成にはインフレ率3%達成が必須と説くのです。そのために金融・財政政策、消費税10%への引上げ策等を、どの様に組み合わせて行うかが鍵となると説くのです。

どうですか、日本の名目GDP600兆円は政策次第で実現すると思いませんか。

「日本と世界の針路」のシナリオを描いてみませんか(むすび)

 皆様がお持ちの知見と紹介本の知見を活用し「日本と世界の針路」のシナリオを描いてみませんか。どのマーケットを狙うのか、持続的成長を成し遂げるために何をしたらよいのか、答えが出てきそうですね。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】168 インテグリティマネジメント

2021-02-15 05:46:00 | 【経営】 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】168 インテグリティマネジメント

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

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今日のおすすめ

 『インテグリティマネジメント』

(新日本インテグリティアシュアランス(株)著 東洋経済新報社)

「インテグリティマネジメント」知っていますか(はじめに)

 私は、かつて、「『いい会社』とは何か」(小野泉-古野庸一著 講談社現代新書)を読み、今でも何かの時に参考にしている「持続的成長を促す75の経営要素(株価上昇率-1974~2008-上位50社の経営要素分析・抽出)」があります。75要素の中で唯一理解できなかった要素が「インテグリティ」でした。Amazonで検索すると唯一紹介本が出てきました。紹介本によれば、『「インテグリティ(誠実)」「マネジメント」は、その言葉通り「誠実な経営」をすることを経営の理念として掲げる倫理性の高い経営を指す』と解説されていました。

 日本では「コンプライアンス(調和‐法令遵守)」という言葉で行き渡っています。日本の企業では、「コンプライアンス(法令順守)」を経営の柱に掲げながら、燃費データ不正事件、不正会計事件、杭打ちデータ不正事件、日常的な談合と「コンプライアンス」が絵空事になっている状況を身近に日常的に見かけます。

 『日本人の性格上、失敗(法令違反)の責任者を特定し、批判するのを好まない「ムラ的風土」がある』(日経4月24日「風見鶏」より抜粋)との指摘があるように、『「恥の文化」に基づく悪い意味での集団主義』の日本の風土の下では「コンプラアンス」の方が馴染みやすい「経営方針」なのでしょうか。

 「法令遵守」という点に焦点を当て、「コンプライアンスマネジメント」と「インテグリティマネジメント」の結果を比較するならば、前者は「形が法令と合っていれば、中身は法の精神に違背しても止むを得ない」という方向に行きやすいのです。後者は、「法の背景にある理念・精神は何か」「法令順守の結果がステークホルダーの期待に沿っているか」まで求めるのです。先ほど記しましたように、企業の大小を問わず、日本のかなりの企業の「法令遵守」は前者のレベルにとどまっているといっても過言ではないでしょう。

 皮相的な「コンプライアンスマネジメント」を掲げていた経営者が、「インテグリティマネジメント」を新たに掲げ、誠実に実行したら企業はどう変わるのでしょう。次の項で考えてみましょう。

 

「インテグリティ」と「コンプライアンス」では成果が大きく異なる

【「インテグリティマネジメント」と「コンプライアンスマネジメント」の違い】

 「インテグリティマネジメント」は、次の4つの責任レベルから成立ちます。   「①法規範レベル(法令・法規則)」「②社内規範レベル(社内諸規則、規定類)」「③社会規範レベル(企業倫理)」「④理想的規範レベル(経営理念・社是)」の4つです。①及び②までを対象とするコントロール(内部統制)は「狭義のコンプライアンスマネジメント」と称されています。①~③までを対象とするコントロール(内部統制)は「広義のコンプライアンスマネジメント」と称されています。①~④までを対象とするコントロール(内部統制)は「社会的責任マネジメント」と称されています。「④理想的規範レベル(経営理念・社是)」の責任とは、社会貢献、フィランソロピーなどによる企業の名声・評判を確保するための行動ではなく、「業界トップの品質」等といった「経営理念レベル」を意味します。

 つまり、「コンプライアンスマネジメント」と「インテグリティマネジメント」の違いは、企業組織が求める「達成責任レベル」の高・低と、経営者をはじめとする、企業組織の構成員の誠実性・倫理性の有・無にあります。単なる言葉の違いのみではなく、内容・成果に、大きな開きが出る「コンテクスト」の違いをご理解いただけたでしょうか。

【「インテグリティマネジメント」のコントロール(内部統制)は負担のない方法で】

 コントロール(内部統制)は、米国のCOSO( Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)及びその流れを汲むJ-SOX法(金融商品取引法第24条4の4の第一項「内部統制報告書」)のフレームワークに拠るか、5SやJISQ(ISO)に代表される日本的P-D-C-Aフレームワークに拠るかの選択があります。上場企業の場合は、金融商品取引法により、米国発のフレームワークに拠らざるを得ませんが、上場企業でなければ日本的PDCAフレームワークで、かつ、負担の少ない方法を選択して行えばよいのです。

 米国型が、ある時点での組織の活動をチェックする静的モデルに対し、日本型はPDCA(プロセスアプローチ)を繰り返す動的モデルです。日本型は「バリューチェーン」の付加価値を改善しながら、同時に「インテグリティマネジメント」の結果を出し、企業活動の成果を「経営理念レベル」として実現します。

 まさに、「インテグリティマネジメント」は持続的成長企業を育てる経営手法として、その意義を認めることが出来るのではないでしょうか。

 紹介本は、かなりのページをCOSOフレームワークの記述に割いております。米国発のフレームワークを使う必要のない読者は、流し読みをしてポイントのみ押さえて下さい。

 

インテグリティマネジメントで企業ブランドを創ろう(むすび)

 私は、「インテグリティマネジメント」を誠実に行っている企業を幾つか体験を通じて知っています。それらの企業は「あそこなら信頼できる」「あそこのサービスは安全で安心できる」等といったブランドを創り上げています。

 このようなブランドを創ることは、会社の大小に拘らず出来ることです。「インテグリティマネジメント」やってみませんか。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】167  日本人の強みが活きているか

2021-02-08 05:46:00 | 【経営】 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】167  日本人の強みが活きているか

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

今日のおすすめ

 『ハーバードで一番人気の国・日本』(佐藤 智恵 著 PHP新書)

日本がハーバード大学経営大学院の学生に一番人気があるって?(はじめに)

 私は、紹介本の表題をみて、「ほんとに?」「いま?」と思い、紹介本を手に取ってみました。日本の中で暮らしていると、ハーバードが日本人の何に関心を持っているか、日本人の価値が見えにくいですね。

 まずは、次の項で、ハーバードが日本人の何処に関心を持ったのか見てみましょう。

ハーバード大学経営大学院で一番人気のある日本人のケース・スタデイ

【新幹線お掃除会社「テッセイ」が与える驚き】

 「テッセイ」の親会社JR東日本から取締役経営企画部長として送り込まれた矢部さん。「あんなところに・・・」という会社に着任して、「テッセン」に「自分たち は所詮3kの清掃スタッフ」という空気が蔓延していることに気付きます。

 この「テッセイ」が『人のために役に立っているのが楽しい』『もっと早く綺麗に清掃するにはどうしたらよいか』と思う社員の集団に変わったのです。

 矢部さんは、まず社員の意識改革をします。「皆さんは世界最高の技術を誇る新幹線のメンテナンスの一部を、清掃という面から支える技術者なのだ」と繰り返し投げかけました。自席を事務所ではなく、現場の近くに置き、現場に頻繁に足を運び、自ら現場の一員となり、現場の問題を率先して解決する役割を引き受けたのです。社員は「自分が提案したことを実現してくれる」と次から次と新しい提案をするようになりました。このようにしてトラブルの「テッセイ」が、感動を与える「テッセイ」に生まれ変わっていきました。

 ハーバードでは、このケースを「自ら現場に溶け込んでいくリーダーシップ」と位置付け、サービス企業の世界標準として採り上げているのです。

【アメリカ人を驚愕させた「プロブレム・ファースト」】

 これはトヨタのケースです。日本人はよく知っている改善手法です。現場の改善をテーマにするコミュニュケーションの場では、「失敗」「問題」を先に発言するというルールです。まず自分の功績を主張するアメリカ人にとっては驚きでした。

 しかし、問題を解決するには「プロブレム・ファースト」が合理的であることに気づき、ハーバードでは、オペレーションの授業で採り上げているのです。

【ハーバードの方が知っている「福島第二原発」】

 福島第二原発は第一原発から12キロしか離れていません。地元福島の人は「福島原発」として一つで見ています。第一原発は6機(5,6号機は当日定期点検中であったため被害が少なかった。6号機の発電機は無傷であったため、5号機と交互に使用し冷却できた。)、第二原発は4機の原子炉があります。2011年3月11日第二原発でも第一原発の1号機から4号機と同じ状況が起こっていました。唯一違ったのは、第二原発では管理棟の外部電源が一つだけ残っていたことだけです。

 第二原発で、メルトダウンやベントの事態を回避できたのは、第二原発の増田所長の「センスメーキング(チーム全体での情報共有)」を伴うリーダーシップにあったことを、多くの日本人は知りません。

 しかし、ハーバードでは、増田所長の「Leadership・with・Sense making」がなければ、第一原発と同様の事態になっていただろうと、高く評価し、リーダーシップの授業で採り上げています。

 他にも多くの日本企業のケースが採り上げられています。詳細は紹介本をお読みください。

ハーバードで認められた日本人の強みを生かすには(むすび)

 紹介本の最終章には、日本人の強みと弱みが良く纏められています。

 強みとして上げられているのは次の6つです。①高い教育水準②分析的な特性③美意識・美的センス④人を大切にするマインドと改善の精神⑤環境意識と自然観⑥社会意識(合本主義)、の6つです。

 弱みとして上げられているのは次の3つです。①グローバル化の遅れ②イノベーションの創出の減衰③若者と女性の活用が下手、の3つです。

 これだけ多くの強みを持ちながら、持続的成長維持の要件である真のグローバル化が出来ている企業はまだ少ないと言わざるを得ません。特に中小企業が遅れているのではないでしょうか。真のグローバル化とはイコール海外進出ではありません。自社の製品やサービスを、グローバル市場と繋げる、「視点と行動」により実現できるのです。

 残りの2つの弱みも、その気があれば克服できます。「マインドと仕組み」を変える気があれば克服できることです。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】166 「生涯健康脳」を創る

2021-02-01 05:46:00 | 【経営】 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】166 「生涯健康脳」を創る

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

今日のおすすめ

 『生涯健康脳―こんなカンタンなことで脳は一生健康でいられる!―』

(瀧 靖之著 ソレイユ出版)

世界最先端の脳画像の第一人者が語る脳の話(はじめに)

 今回は、楽しい、役に立つ本をご紹介しましょう。「健康な脳」を創るお話です。紹介本で扱う脳は、「大脳(知覚、知覚情報の分析・統合等)」「小脳(運動機能と知覚の統合等)」「脳幹(神経系の中枢、自律神経機能等)」の三つの大きな区分の中の「大脳」(脳全体の体積の80%を占める)に焦点が当てられています。「良性健忘(もの忘れ)」や「認知症(脳の血管に生じる疾患やアルツハイマー病から引き起きる)」は「大脳」で起こります。

 「健康な脳」を創るお話に入る前に、いろいろな角度から脳の基礎的な知識について学んでみましょう。著者は中心となる「脳のMRI画像」のデータに「認知力」「生活習慣」「遺伝子」を加えた、四つの分野のデータを数千集め、現段階での研究成果を発表しています。「脳のMRI画像」のデータをベースにした研究では、著者が世界的な第一人者と言われています。

 「脳のMRI画像」をベースにした脳の基礎的な知識は、新しい知見がありとても面白いです。そのいくつかをご紹介しましょう。詳しくは紹介本をお読みください。

〔認知機能とネットワーク〕

 『脳を断面で見ると、表面に当たる「灰白質」と内部に当たる「白質」とに分かれ、「灰白質」は機能領域(言語力、論理思考力等)毎の神経細胞の集合で認知機能をつかさどり、体積が大きければ大きいほど、能力が高いです。「白質」は神経細胞と神経細胞をつなぐネットワーク組織の集まりです。脳は使えば使うほどその機能領域のネットワークを増やして、体積が大きくなります。』と著者は言います。脳は生まれつきの体積と、脳を使って増えた体積の合計なのです。

〔脳の中枢は「前頭葉」と「前頭前野」〕

 『「前頭葉」は、言葉を話す・コミュニュケーションをとる・思考する・意思決定をする・情動、行動を制御する・新しいものを創造する・記憶をコントロールする等人間として最も高度な働きをします。この働きは「前頭葉」の最も前にある「前頭前野」に集中しており、「灰白質」の全体の30%を占めます。「前頭前野」の大きさは、人間だけの特徴です。』と著者は言います。「前頭葉」は、‟おでこ”の部分ですね。

〔脳の自浄作用〕

 『アメリカのロチェスター大学で、脳細胞と脳細胞の間に脳脊髄液という液体が流れていて、眠っているときに脳細胞間の隙間が60%も広がり、髄液が速いスピードで流れて、排出される老廃物が増えることが発見されました。』と著者が指摘します。良い睡眠が脳を守るのです。

〔「海馬」の働き〕

 『「海馬」は記憶をつかさどります。「短期記憶」を一旦「海馬」に貯め、長期に亘って記憶する必要なものを「長期記憶」として保存し、必要な時に保存された「長期記憶」から引き出す能力を持つ、まさに「記憶の司令塔(ハブ)」』、と著者は指摘します。「海馬」は両耳側の部分(「側頭葉」の一部)です。

「生涯健康脳」は自分で創るもの

 著者が、「生涯健康脳」を自ら創る実証研究の結果を挙げています。その中からいくつかをご紹介します。

【「有酸素運動」が脳を活性化させる】

 「有酸素運動」とは、ウォーキング、水泳、ジョギングなどです。いくつかの研究機関で、有酸素運動を「するグループ」と「しないグループ」に分け、一定期間継続して研究した結果を見ると、「するグループ」では、脳の萎縮がストップするとか、「海馬」の体積が増えるという結果を得ています。「しないグループ」ではこの逆のことが起こっていると著者は指摘しています。一日30分のウォーキングで十分だと著者は言います。何とか続けたいですね。

【十分な時間と質の良い睡眠が脳を守る】

 前項で記しましたように、脳には自浄作用があります。それを効果的に働かせるのが、「十分な時間と質の良い睡眠」そして十分な時間は7時間と著者は言います。質の良い睡眠とは「ノンレム睡眠(眼球運動を伴わない深い睡眠)」を言います。簡単なようで、難しいですよね。ストレスで寝つきが悪い時も有りますよね。

 また就寝前の食事や、テレビ・パソコンなども、「メラトニン」という睡眠導入ホルモンの分泌を妨げるとして、就寝2時間前はこれらを避けるよう著者は指摘しています。これもなかなか難しいですね。遅く帰ったり、急ぐ必要がある場合など、思い通りにはいかないですね。しかし知識として持ち、できる限り努力するのは良いことですね。

【ストレスは「海馬」を委縮させる】

 長期間にわたって、ストレスを受け続けたりすると、脳の様々な部分特に「海馬」が委縮する研究結果が出ていると著者は指摘します。ストレスをコントロールする「コントロール・アビリティー」を強くしたり、ストレス解消法を身に着けることが大切です。

【「飲酒」は脳を委縮させる】

 『「飲酒」は、脳を委縮させることが研究結果として出ている。しかも残念ながら許容量はない。自粛すればするほど良い。』と著者は指摘します。お酒の好きな人には困った情報ですね。

「生涯健康脳」創りは今日からスタート(むすび)

 ビジネスの基本は、言うまでもありませんが、健康です。その中で、以外と日頃気を配っていないのが脳の健康ではないでしょうか。

 平均寿命と健康寿命の差(約10歳)の要因の40%は脳に係わる疾患と著者は指摘します。

 脳は「可塑性」、すなわち、前項で記しました「健康脳」創りをすれば、プラスに変化しますし、しなければマイナスに変化します。脳には、子供から高齢者まで年齢に関係なく、「可塑性」があるのです。

 健康で機能性の高い「生涯健康脳」を創り、益々ご活躍ください。今日からスタートしても遅くはありません。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

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 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴35年の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。

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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】165 「ランチェスター戦略」の核

2021-01-25 05:46:00 | 【経営】 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】165 「ランチェスター戦略」の核

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

今日のおすすめ

 

A;『ランチェスター戦略』 (編著:NPOランチェスター協会 中経文庫)

B;『社長のためのランチェスター式学習法』(著者:竹田 陽一 あさ出版)

C;『ランチェスター法則のすごさ』(著者:竹田 陽一 中経出版)

「ランチェスター戦略」の有用性は(はじめに)

 ランチェスター戦略は、近年ではソフトバンクの孫正義氏、H・I・Sの澤田秀雄氏等が創業時に経営に応用し、成長したことは良く知られていることです。彼らは、ランチェスター戦略のどこに有用性を見出したのでしょう。言い換えれば、紹介本のどこに焦点を当てるべきなのでしょう。以下で見てみたいと思います。

 ここで、一言触れておきたいことがあります。紹介本を三つ挙げました。こんなややこしいことをしたくないのですが、A紹介本(以下協会説またはA本という)とB、C紹介本(以下竹田説またはB、C本という)が、ランチェスター戦略の一番肝心な弱者戦略と強者戦略の定義あるいは解釈が異なるのです。協会も竹田氏もランチェスター戦略の第一人者とされる人(人々)です。ご判断は読者の皆様にお任せしますが、異なることだけは、知って置いて頂くと良いかなと思い、敢えて、二つの説の違いを以下でご紹介いたします。

「ランチェスター戦略」の核はここだ

【ランチェスター戦略で最も知られている「意味を持つ占有率」】

 世界で始めて、市場占有率(自社営業範囲内)とその占有率の持つ意味を具体的に示したのは、ランチェスター戦略を生み出した、「田岡、釜田理論」です。

 市場占有率とその意味を以下に記します(詳細、計算根拠はC本をお読みください)。

① ウルトラスーパー強者(A本では「上限目標値」):73.88%以上のシェアを有する。

② スーパー強者(A本では「安定目標値」):一位で、41.7%以上かつ二位との間に1.68倍以上の差をつけている。(73.88/26,1=2.83。2.83の平方根=1.68。2.83を第一法則〈一次法則:弱者法則〉下の射程距離、1.68を第二法則〈二次法則:強者法則〉下の射程距離と呼ぶ。射程距離以内だと市場の均衡を崩せ、射程距離を越えると市場の均衡を崩せないとするランチェスター理論の一つ。)

③ 強者(A本では「下限目標値」):一位で、26.1%以上かつ二位との間に1.68倍以上の差をつけている。

④ 中間者(A本では「上位目標値」):15,6%~26,0%

⑤ 弱者のA(A本では「影響目標値」):9.4%~15,6%

⑥ 弱者のB(A本では「存在目標値」):5.6%~9.4%

⑦ 弱者のC:3%~5.6%(A本では触れていない)

⑧ 番外(A本では「拠点目標値」):3%未満

 これらの占有率は各々自社の現状の力を現すと共に、次に狙うランク目標を示します。3%未満の番外は、市場から撤退すべきかどうかの判断をすべきポジションとされています。更に言えば、特定のセグメント(地域、商品、顧客等)に於けるシェアを念頭に置いたときに、これらの占有率は意味を持ってきます。

【ランチェスター戦略は弱者が強者に勝つための戦略理論】

 ランチェスター理論は元々弱者が強者に勝つための戦略論です。

 竹田説は強者の定義を上記①②③とし、それ以外は弱者とします。1000社の内「強者の経営戦略」を行える条件を満たしているのは0.5%、残り99.5%は「弱者の経営戦略」をとるべしとしています。「弱者の経営戦略」として、小さくてもナンバーワンになれる得意分野を見つけ実現する。そこを起点にし、ナンバーワンの領域を広げて行く13の戦略・戦術(いわゆる「差別化戦略」。細かくは、「①ナンバーワンになれる商品、地域、客層を探す②攻撃目標と競争目標の分離③差別化④小規模1位主義、部分1位主義⑤商品や営業の細分化⑥⑦⑧⑩一点集中⑨直接販売⑪軽装備・軽投資⑫継続性、ステップ・バイ・ステップ⑬自社の戦略情報の漏洩防止管理」をあげています。詳細はB本をお読みください。)を掲げています。

 一方協会説は、「弱者の戦略(差別化戦略)」と「強者の戦略(ミート戦略)」が並んで出てきます。「弱者の戦略」とは、弱者が自分よりもシェアがワンランク上の競争相手(頭上の敵)の市場を奪い、小さくともナンバーワンになれる得意分野を見つける戦略と言います。「強者の戦略」は弱者が自分よりもシェアがワンランク下の競争相手(足下の敵)の市場を奪い、得意分野がナンバーワンになるための基盤強化を図る補助戦略と位置づけます。「弱者の戦略(差別化戦略)」と「強者の戦略(ミート戦略)」を同時並行的に行うべしとします。(私にはその様に読み取れました。)

 経営資源の乏しい弱者が、二つの異なった戦略を並行的に行う戦略は現実的でしょうか。弱者はあくまで弱者として「差別化戦略」を実行すべしとする竹田説が「ランチェスター戦略」の基本ではないでしょうか。

 更に注目しておきたいことは、弱者は強者から第二法則(二次法則:戦力=質×兵力数の二乗)で攻められ、弱者が強者を攻めるときは、経営資源が乏しいので、第一法則(一次法則:戦力=質×兵力数)で攻めなければならないと言うことです。弱者が強者を攻めるには、2.83倍以上の力を集中して攻めなければ強者に勝てないというのが「ランチェスター戦略」の理論でもあることです。そこには「戦略・戦術」に加え、「物理的・時間的・継続的」努力がなければ、勝利は実現しないこと現しています。

【弱者のための代表的戦略「地域戦略」】

 A本では「ランチェスター戦略」の三つのキーワードとして①ナンバーワン主義②セグメンテーション③ステップ・バイ・ステップを挙げています。それを実現する代表的戦略として、「地域戦略」(あるいは「特定のセグメント戦略」と言っても良い)を掲げています。

 「地域戦略」で成功するための5つの原則を掲げています。参考に出来る内容ではないでしょうか。

① 一点集中の原則(一位になれる重点領域、エリアの決定)

② 足下の敵攻撃の原則(競争目標:頭上〈ランク上〉の敵、攻撃目標:足下〈ランク下〉の敵の中から攻めるライバルを絞り込む)

③ 地盤強化の原則(まずエリアをしっかり固める)

④ ナンバー・ワン・キープの原則(大口顧客やリーダー格顧客を確保する)

⑤ 固定化の原則(離脱客をなくし、リピーターを増やす)

「ランチェスター戦略」を経営に応用する(むすび)

 「ランチェスター戦略」の核は何かを見てきました。「ランチェスター戦略」はどちらかと言うと馴染の薄い経営戦略論ではないでしょうか。「ランチェスター戦略」の核の部分を押さえ、その核の理論とその他の経営理論を組み合わせて使うことで、経営に有用なツールとして使えるのではないでしょうか。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

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【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】164 日本企業はCSVで飛躍を

2021-01-18 05:46:00 | 【経営】 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】164 日本企業はCSVで飛躍を

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

今日のおすすめ

 『CSV経営戦略』(名和 高司 著 東洋経済新報社)

日本企業はJ‐CSV経営で飛躍しよう(はじめに)

 私は、2015年12月に著者の名和先生(一橋大大学院教授)の講演を聞き、「CSV」という経営戦略に改めて関心を持ち、紹介本を購入し研究してみました。特に、名和教授の提唱する「J‐CSV」に共感を覚えました。お話を進める前に、「CSV」とは何か、「J‐CSV」とは何かについて簡単に整理をしておきましょう。

〔CSVとCSR〕

 CSVはHBSのポーター教授が「共通価値の戦略(Creating Shared Value)」で提唱した「戦略論」です。その戦略のポイントは、社会的価値(課題解決)と経済的価値(利益)の双方を同時に求めることで、それぞれの共通価値の実現性、スピード、規模の大きさ、継続性を、成果として効果的・効率的に出せるとします。CSR(またはSR)は、ISO2600で代表される、持続可能な社会を実現するための「社会的責任」についての「手引き」と言っていいでしょうか。CSRは、やや極論ですが、儲けが出ている時だけ社会貢献するフィランソロピー的になってしまう可能性を持っているとします。CSVの方が、実効性・継続性、成果実現性の点で優れているとしています。

〔CSVとJ‐CSV〕

 著者は、ポーターのCSVに共感しつつも、日本の文化を生かしたJ‐CSV、がポーターのCSVより優れた実効性を発揮できるとして、提案をしています。

 ポーターのCSVはポジショニング(What)が主で、そこには、「志(Why))」と「人間性(How)」の二つが欠けているとして、特に「志(Why))」をCSVのスタートにすべきとし、著者はJ‐CSVを提唱します。

〔J-CSVによって日本企業は飛躍できる〕

 著者は、かつてアメリカ発のTQC(Total Quality Control )が日本の現場の力と相俟って「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を築いたように、現場力を生かしたJ-CSVに日本企業の飛躍のチャンスがあるとして、J-CSV経営実現のための「J-CSV経営実現の7要件」と「J-CSV経営実現の4つの課題」を提唱しています。ポーターの理論は「7要件」「4課題」にまで具体化した理論になっていないのです。それを次の項で見てみましょう。

日本的経営の強さを改めて認識しよう。J-CSV経営で日本企業は飛躍できる。

【J-CSV経営実現の7要件】

 7要件として、次の7つをあげています。①社会課題をどうとらえるか?②大義はあるか?③「(我社)ならでは」のひねりがあるか?④儲けの仕組みにどう変換するか?⑤誰をどう巻き込むか?⑥いかにスケールするか?⑦いかに持続的成長を実現するか?の7つです。

 この7つは、次の「4つの課題(経営モデル)」を作る前提として、不可欠の要素として上げています。著者が、日本人の感性をもって、いろいろな形で係ってきたCSV企業の成功要因を抽出したものとも言えます。著者が係った企業のケース・スタデイと合わせ、詳細は紹介本をお読みください。

【J-CSV経営実現の4つの課題】

 4つの課題として次の4つをあげています。著者の強調したい点は、ベストプラクティスではなく、独自の、フロンティアの「型」を作るべしと強調します。

 ①ガバナンスモデル(掲げる社会価値と経済価値が経営管理のコアとしての機能を果たせるかを見極める)②ビジネスモデル(持続可能なCSV行っていくための、規模の経済(Scale)、範囲の経済(Scope)、技能の経済(Skill)の「3Sの経済」を獲得できるビジネスモデルを創出する必要がある)③組織モデル(CSVを全社・全員に埋め込み、駆動させうる組織にする)の3つのモデルをまず創り上げ、それらを統合し、 4つ目の課題「J-CSVモデル」を創るべしとします。「J-CSVモデル」は、現場力を生かし、日本人的資質の長所を生かし短所を克服した、「共通価値」ではなく「共創価値」であり、グローバルに発信できるモデルになると著者は強調します。詳細は紹介本をお読みください。

【J-CSVが日本企業を救うグローバル・モデルになるのは何故か】

 著者は日本的経営の強みを四つあげています。その四つの強みは、CSV経営と相性が良いといいます。

 『一つは、日本的経営の根っこにあるのは、武士道と商人道の二つの「道」だ。そして武士道は社会的価値、商人道は経済的価値に当たる。「道」の本質は「極める」ことだ。つまり日本企業には「CSV道」を極めていく素地がある。

 二つ目は、日本企業らしい奥行きの深さ(悪く言うと曖昧さ)である。CSVは社会的価値と経済的価値をトレード・オフの関係でなくトレード・オンの関係でとらえていく必要のあるもの。それを可能にするのは、日本企業の二枚腰的忍耐強さや、持続力、「つなぎ」「ずらし」といった曖昧さ故に生き続ける技術である。

 三つ目は、明治の時代からある和魂洋才。つまり、外から取り入れた知識や技術を日本的文化や価値観をもって解釈し直して磨き上げる。この咀嚼力がアメリカ生まれのCSVを凌駕するJ-CSVを誕生させる。

 四つ目は、知恵を生み出す現場の力。研ぎ澄まされた現場の学習センサーは思いもつかないイノベーションを生み出す。日本的経営の一番の強みである。』と。

 著者は、以上の論拠から、J-CSVが必ず日本を救う経営ツールとなることを確信するのです。

☆☆でいちばん大切にしたい会社」になろう(むすび)

 J-CSVという概念は、日本企業の経営戦略論としては未だほとんど浸透していないのではないでしょうか。著者の言うように、「J-CSV」が、日本企業、特に中小企業の救世主になると思います。是非「J-CSV」理論を吸収し自前のものとし、「☆☆でいちばん大切にしたい会社」になろうではありませんか。

 「☆☆」には、「世界」でも「日本」でも「地域」でも「ミニ・コミュニティー」でも、何が入ってもいいです。素晴らしいですね。やりましょう。 

 

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】511 外国人から見た日本(3)

2020-10-12 05:46:00 | 【経営】 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】511 外国人から見た日本(3)

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。
 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■ 今日のおすすめ

 『文明の衝突』(著者:サミュエル・ハチントン 鈴木主税 訳 集英社)

 

■ 『文明』の視点から世界を俯瞰する(はじめに)

  「外国人から見た日本」シリーズの第三回として『文明の衝突』をご紹介します。
 本題に入る前に、『文明』の定義を明確にしておきましょう。著者は、「唯一ドイツにおいては、『文明』は、機械、技術、物質的要素にかかわるものであり、『文化』は価値観や理想、高度に知的、芸術的、道徳的な社会の質にかかわるものとして、文明と文化を区分した考えが根付いた」と説明します。更に続けて「しかし、ドイツ以外では、文明と文化は、いずれも人々の生活様式全般をいい、『文明』は『文化』を拡大したものである。『文明』とは『ある文化の領域』であり、『文化的な特徴と現象の集合』である」と説明します。ここでは『文明』を普遍的な定義で捉えます。
 著者は、現在世界には9つの文明があるといいます。西欧文明(含むアメリカ)、ラテンアメリカ文明、アフリカ文明、イスラム文明、中国文明(中華・儒教文化)、ヒンドゥー文明(インド)、東方正教会文明(ロシア、カザフスタン、ウクライナなど)、仏教文明(ミヤンマー、タイ、ラオス、カンボジア、モンゴルなど)、日本文明の9つです。日本を「近隣諸国と文化的な繋がりをほとんど持たない孤立した文明国」と他の文明から孤立した文明としてあえて一つの文明として区分しています。「『孤立文明国』日本」については、項を改めて見てみたいと思います。
 本書は、1996年に原著が発行され、1998年に日本語に翻訳された第一版が発刊され、今日現在第21刷を数える、名著といえる本です。なぜ名著なのかと言いますと、19年前に書かれた著書にもかかわらず、時代の古さを全く感じさせないのです。本書を読むと(ボリュームには泣かされますが)、今世界で起こっている事の背景が手に取るように判るのです。
 本書を、P・E・S・T(政治、経済、社会・技術)の視点から見ると、世界の政治(紛争・戦争)・経済を『文明』と言うメタ(meta=背後にある、判断の根拠に出来る事実情報)を通してみると、「目からうろこ」のように謎が解けてきます。特に1989年の冷戦終結後、イデオロギーによる対立軸が無くなり、世界中で今日に至るまで発生した、あるいは発生している、多くの紛争・戦争は『文明』というメタの視点で見ると良く判ります。「グローバル」の視点が、国内でも海外でも必要とされる今こそ、問題・課題の判断材料の一つとして『文明』を加える事が大切ではないでしょうか。

 

■ 日本文明は日本一国で成立する「孤立文明」

【最も重要な「孤立文明国」日本】
 著者は日本について次のように記述します。「最も重要な孤立文明国は、日本である。日本の独特な文化を共有する国はなく、他国に移民した日本人はその国で重要な意味を持つほどの人口に達することもなく、移民先の国の文化にも同化してしまう(たとえば日系アメリカ人がそうだ)。日本の孤立の度が更に高まるのは、日本文化は高度に排他的で、広く支持される可能性のある宗教(キリスト教やイスラム教)やイデオロギー(自由主義や共産主義)を伴わないという事実からであり、そのような宗教やイデオロギーを持たないために、他の社会にそれを伝えてその社会の人々と文化的な関係を築くことができないのである。」更に著者は言います。「それゆえ、日本主導の地域的経済グループを作る事ができない」と。
 著者の指摘の納得性はともかく、この指摘に耳を傾け、我々が「どのように見られているのか」「われわれは何者か」「われわれは何をしたら良いのか」についての基本認識の一つとしたいと思います。
 指摘の一つに「日本文化は高度に排他的」とあります。参考までにアメリカの人口について考察してみましょう。アメリカは全体では人口増加を続けています。2010年で3億1千万弱の人口を抱えます。しかし白人比率は63.7%まで落ち、下がり続けています。白人人口の絶対数はほぼ横這いです。それをカバーして比率が上がり、人口増加を支えているのは、ヒスパニック・ラテン系とアジア系を中心とした非白人です。国・文明の発展・維持の重要な要因は人口です。この点一つをとってみても、著者の指摘は示唆に富んだものと認めざるを得ないのです。

 

■ 『文明』の視点から見た日本の未来(むすび)

 本書の題名が「文明の衝突」とありますが、著者は最後に次のように結んでいます。「人類が向っているのは、さまざまな文明が平和的に相互交流し、協力して生きていくことを学ばねばならない時代である。互いに学びあい、相手の歴史や理想や芸術や文化を研究し、互いに各自の生活を豊にしていくのだ。それ以外の道を選べば、この過密で小さな世界では、誤解と緊張、衝突、破局を招くばかりである。平和と文明の将来は、世界の主要文明の政治的、精神的、知的指導者達の理解と協力いかんにかかっている」と。
 この著者の結びの進言・警告は、企業経営の観点からも、大切な事ではないでしょうか。大企業であろうが中小企業であろうが、海外進出企業であろうが国内企業であろうが、グローバルというトレンドを避けて進めないのが現実ではないでしょうか。
 各企業が抱える課題・問題の解決に、この著者の進言・警告がお役に立てたら幸いです。

【酒井 闊プロフィール】
 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm
  http://sakai-gm.jp/

【 注 】
 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

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