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【経営コンサルタントのお勧め図書】2024年は歴史の大転換点 ~ 日経大予測2024「これからの日本の論点」 2401

2024-01-23 12:01:00 | 【経営】 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】2024年は歴史の大転換点 ~ 日経大予測2024「これからの日本の論点」 2401

経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。

 幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけましたところ、ご協力いただけることになりました。

 それが、今日まで継続されていますので、10年余もの長きにわたって、皆様にお届けできていることに誇りを持っています。

本

■    今日のおすすめ

『日経大予測2024「これからの日本の論点」』

                    (編著:日本経済新聞社 発行:日本経済新聞出版)

本

■ 2024年のP・E・S・Tを見てみよう(はじめに)

 紹介本「2024これからの日本の論点」は、「2024年を予測する3つのキーワード」「日本は豊かになれるか」「世界企業の新常識とは」「対立深まる世界のゆくえ」の4分野23論点を展開します。
 2024年は、まさに先が見えない「歴史の大転換」の時代と言えます。その中で注目した視点を次項で見てみたいと思います。

本

■ 2024年の注目情報はこれ


【2024年の3つのキーワード】
 紹介本が示す2024年を予測するキーワードは、「生成AI」「グローバルサウス」「世界で相次ぐ重要選挙」の3つです。「世界で相次ぐ重要選挙」に注目してみましょう。
 注目選挙を早い方から見てみましょう。1月13日投開票の台湾総統選は、現在リードしている与党民進党の頼候補が勝利した場合の米中の動きに注目です。

【 注 】
 当原稿執筆の際には、まだ台湾総統選の結果はわかっていませんでした。
 結果は、頼候補の勝利となりました。

 3月17日には5選を目指すプーチンのロシア大統領選があります。ウクライナ戦争におけるロシア軍の死者数(15万人)、高いインフレ率(卵・青果物+23%前年比)、若者・技術者の流出(80万人)、高い政策金利(15%)とルーブル安(1ドル100ルーブル:2023年11月は2022年4月と同レベルの安値)などの不安材料を見ると、5選は確実でも、政権の先行きは?でしょうか。6月の欧州議会選挙については、最近のオランダにおける極右政党の勝利などから考えると、結果次第で、対ウクライナ・ロシア政策に変化が起こる可能性があります。

 2024年最大の重要選挙は11月の米大統領選挙です。トランプの勝利になるか、世代交代が起こるか事態は流動的です。いずれにしても世界の政治経済に大きな変化をもたらす11月5日の米大統領本選挙の動向に注目です。


【「脱炭素」の行方は「脱中国」か?】
 「脱炭素」の行方について、紹介本の『論点9「綱渡りの電力供給、脱炭素と安定供給を両立するエネルギーは」』と『論点19「経済安全保障論が半導体からグリーンに広がる」』から見てみましょう。
 科学的根拠に欠けプロパガンダ的な「脱炭素」を否定できない風潮が、世界の政治・経済で蔓延しています。〔本ブログ2021年10年27日『「脱炭素」は噓だらけ』(杉山 大志著 産経新聞出版)を参照ください。〕

  https://blog.goo.ne.jp/keieishi17/e/42b29b40391d305ed7478a4019362a45


 この流れの象徴的な動きを米・欧・日の政策から見てみましょう。
 米国では、2022年8月に成立したインフレ抑制法(IRA法)により2031年までの10年間で3,600憶ドル(52兆円)を投じ、CCS(CO₂の地中貯留技術)や水素製造などの脱炭素技術を税控除や補助金を通じ実用化を図ります。この政策の重要なポイントは脱炭素技術の生産拠点を米国内に確保しようとする経済安全保障です。最近、その具体事例が出てきました。『米政府、脱炭素より脱中国 EV税優遇で中国材料排除(2023.12.2日経電子版)』です。中国産の部材・鉱物(2024年からは電池部材、25年からはニッケル、リチウムなど重要鉱物)を使ったEVは、1台当たり約110万円の税優遇を受けられなくなるのです。米国内生産の部材・鉱物でも、中国関連資本が25%以上を握る企業やグループによる製品は対象となる見通しです。
 次はEUです。欧州委員会では2023年2月グリーンディール産業計画を発表しました。この計画では、2027年までの間に、ネットゼロ技術の域内での生産能力の拡大および脱炭素戦略的技術の支援を目的に5,470憶ユーロ(86兆円)の支出を計画しています。
 ここで注目したいことは、グリーンディール政策の一環として導入された国境炭素調整措置(CBAM:Carbon Border Adjustment Measure)です。
 CBAMとは気候変動対策をとる国が(EU)、対策の不十分な国(中国など)からの輸入品に対し、水際で炭素課金を行う仕組みです。加えて、EUから対策の不十分な国(中国など)への輸出に対し、水際で炭素コスト分の還付を行います。

 詳細は「〔図解〕国境炭素調整措置とは」を下記URLからご覧ください。[ここから]
     http://www.glomaconj.com/joho/blog/sakai20240123CBAM-ver1.pdf

 このCBAMは、2023年10月から移行期間に入り、2026年1月1日から本格実施となります。移行期間ではCBAM対象製品の排出量報告のみが義務付けられ、課金は行われません。CBAM対象製品は、セメント・電気・肥料・鉄と鋼鉄・アルミニウム・化学物質(水素)の6品目です。ここで注意しておきたいことは、EUは移行期間終了の1年前(2024年12月31日)までに、追加製品を決めるとしていることです。日本からEUへの輸出金額が大きい自動車や自動車部品、建設・鉱山用機械、プラスチックなどがCBAMの対象製品になることが見込まれます。
 その動きが既に始まっています。『EV保護主義、欧州で拡大「中国依存低減図るフランスやイタリア」、アジア製を一部補助対象外に(2023.12.10日経電子版)』です。
 フランスでは、EV購入に5000~7000ユーロ(約80万~110万円)の補助金を支給する制度を改定し、車種ごとに炭素排出量を反映した「環境スコア」を算定し、補助金対象車を決めます(2023.12.15に発表予定)。「環境スコア」は部材の生産や組み立て、輸送による炭素排出量により、地域や国ごとに算定されます。原子力発電や再生可能エネルギーによる発電比率が高く、生産拠点と販売地の距離が近い欧州生産が有利となり、アジアで生産するEVの大半はスコアが規定を下回るとみられています。
 フランス政府は、上記発表日に、「中国製EV」の3車種を補助金対象外にしました。中国の国有自動車大手、上海汽車集団の「MG4」、アメリカのテスラが中国の上海工場で生産している「モデル3」、フランスのルノーが中国・湖北省の合弁会社で生産している「ダチア・スブリング」です(2024.1.4東洋経済オンライン)。
 最後に日本です。2023年2月閣議決定の“GX(グリーントランスフォーメーション)基本方針”です。2032年までの10年間に、カーボンニュートラルと産業競争力の強化、経済成長の同時実現を推進することを目標に、20兆円の政府支出と150兆円の民間投資の実現を目指します。
 最近のニュース『日本含む有志国が「原発3倍拡大」宣言、COP28で(2023.12.2日経電子版)』『排出対策ない石炭火力発電所「新設せず」岸田首相表明、COP28で(2023.12.1日経電子版)』を見ると、日本は、フランスや米国主導の石炭火力発電禁止の有志連合への参加を見送り、日本が優位にある脱炭素型石炭火力発電を世界に広げようとする姿勢が見られます。また日本は、「原発3倍拡大」宣言有志国(21か国)に参加しました。日本政府は、不安定でコストの高い再生エネルギーの限界を認識し、バックアップ電源として不可欠な火力発電と原子力発電について、現実的な認識をし始めています。
 米・欧・日の脱炭素の動向を見てきましたが、経済安全保障や脱炭素の大義名分の下で、米欧日それぞれの産業・通商・技術政策に於いて、自国の産業の保護と育成を目指して、しのぎを削る戦いに突入したと言ってよいでしょう。中国もこの競争に参加してくるでしょう。これは、グローバリズム(ポスト冷戦時代)が終わり、新冷戦時代に突入と言ってもよいでしょう。
 さらに言えば、CO₂排出量の世界シェア30%越と断トツで、2022年比でも+4.8%と、米欧の減少とはうらはらに、増加が見込まれる中国に対する「“脱炭素”の行方は“脱中国”」の時代ともいえます。

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■ 2024年の企業経営のキーワードは“大転換”(むすび)

 2024年は、2019年~2023年の世界的コロナ禍、ウクライナ戦争、脱炭素プロパガンダ等を反映した「歴史の大転換」の年になるのではないでしょうか。

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【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

  http://sakai-gm.jp/index.html

【 注 】  著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

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 経営コンサルタントを目指す人の多くが見るというサイトです。経営コンサルタント歴半世紀の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。


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