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【経営コンサルタントのお勧め図書】 「真実」は何か 『SDGsエコバブルの終焉-「脱炭素」幻想は崩壊-』

2024-10-22 12:21:00 | 【経営】 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】 「真実」は何か 『SDGsエコバブルの終焉-「脱炭素」幻想は崩壊-』   

経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。
 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。
 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。
 幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけましたところ、ご協力いただけることになりました。
 それが、今日まで継続されていますので、10年余もの長きにわたって、皆様にお届けできていることに誇りを持っています。
【 注 】
 今月は、図版ファイルのページ数が多いためにリンク付きURLにて掲載しています。
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■    今月のおすすめ

   『SDGsエコバブルの終焉-「脱炭素」幻想は崩壊-』

(杉山 大志編 川口マーン恵美+田中博+渡辺正ほか 宝島社)

出版社 ‏ : ‎ 宝島社 発売日 ‏ : ‎ 2024/6/14
言語 ‏ : ‎ 日本語 単行本 ‏ : ‎ 304ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4299055497
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4299055491
 

本

■  SDGsエコバブルは終焉する(はじめに)

 “SDGsエコバブル”の言葉を、誤解のないように筆者流に、読み解いてみます。

 SDGsの17の目標は“エコ(環境重視)”と“サスティナブル(社会の持続可能性重視)”の二つの領域にグループ分けされます。

 紹介本は、この“エコ”の政策である脱炭素政策が世界規模で破綻し、終わりを告げることを様々な事実を以って詳らかにしているのです。

 このことについて、紹介本の編者である杉山大志(IPCC報告書執筆責任者、経産省産業構造審議会の委員などを歴任し、現在はキヤノングローバル戦略研究所研究主幹を務める科学者)は、“はじめに”で、次の様に述べています。抜粋です。一部は編者のH・Pより引用。

 『1992年のリオに於ける「地球サミット」で気候変動問題が国際的に格上げされましたが、これは当初から(科学的根拠のない)幻想に過ぎなかった。つまり、1991年のソ連崩壊により、西側にいた共産主義者・社会主義者はソ連というロールモデルを失い、環境運動に転向した。この運動は、反資本主義運動にルーツがあり、科学的根拠は全くないのです。』

 『いまや、ウクライナと中東で戦争が勃発し、日本周辺では台湾有事のリスクも高まっている。この様な状況に及んで、自国経済の身銭を切って、高くつく脱炭素のために全ての国が協力することなどありえない。軍事力を増強する、ロシア、イラン、中国が、敵であるG7の説教に応じて、豊富に有する石炭、石油、ガスの使用を止めることなどありえない。ごく近い将来、脱炭素・気候変動はもはや国際的な「問題」ですらなくなるであろう。』

 『それで日本はどうするのか。ドイツなど欧州の一部と共に自滅的な脱炭素政策を続けるのか、中国を利するだけの愚かな脱炭素政策を止めるのか。それを決めるのは政治であり、政治は世論の反映である。ここにきて、再エネをめぐる一連の事件を受け脱炭素への疑問の声が高まってきた。読者諸賢の意見がやがて大きな力になり、SDGsエコバブルを終焉させるだろう。』

 ここまで、紹介本の編者の所見を紹介して来ましたが、次項では、編者の所見を裏付けする、12名の科学者、経済学者、アナリスト、ジャーナリストによる、「IPCCの温暖化説の崩壊」、「環境原理主義への反乱」、「なぜ学者もメディアも脱炭素の嘘をつくのか」等についての執筆の中から、注目記事を紹介します。

本

■  「脱炭素」の「真実は何か」

 

【化学は嘘をつかない。でも科学者は嘘をつく。IPCCの温暖化仮説は「完全崩壊」へ

 -田中博(大気科学者・筑波大学名誉教授)-】

 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)の提言を基に、2015年のCOP21(Conference of the Parties:締約国会議)の「パリ協定」で採択され、今や世界の定番となり、ドイツの緑の党や米民主党などの環境原理主義者が唱え、また、米バイデン大統領に追従した日本の菅政権が目指したポリシーは次の通りです。「地球の気候は危機に瀕しており、脱炭素化は最重要課題である。産業革命後の気温上昇は産業革命前の1.5℃以下に抑えねばならず、その為には温室効果ガス排出量を2030年に半減、2050年にはゼロにしなければならない。」

 この1.5℃の意味するところについて、執筆者の田中教授は次のように解説します。「気候システムにはティッピングポイント(閾値;反応を起こさせるのに必要な、最小の強度や刺激などの物理量)と呼ばれる温度上昇の臨界点があり、地球温暖化がその1.5℃という臨界点を超えると温暖化が暴走しはじめ、人間の力ではコントロールできない灼熱地獄が訪れる」という仮説です。

 執筆者の田中教授は、この様な気候危機説による脅しは次の2つの点から「完全崩壊」であると論説します。

 1つ目は、IPCC説の「産業革命後の気温上昇が、1.5℃という臨界点を超えると、温暖化が暴走し始める」というIPCCの仮説モデルの崩壊です。

 IPCCの仮説モデルは、IPCCの設立された1988年の前後の、温暖化が指数関数的に増大していた1970~2000年に測定された温暖化トレンドに、CO2の増加による放射強制力(正の放射強制力<CO₂>は温暖化を起こす)をモデルに組み込み、「1.5℃という臨界点を超えると、温暖化が暴走し始める」という結論を導いたのです。(負の放射強制力<植物、水蒸気など>は、気温を下げます。)

 EUの気象情報機関“コペルニクス気候変動サービス(C3S)”によれば、2024年6月の世界の平均気温は16.66℃で6月の気温としては観測史上過去最高でした。6月までの12か月間の年間ベースの平均気温は、産業革命前の同年間の気温に比べ1.64℃高く、5月に続いて2カ月連続、年間気温でパリ協定の「1.5℃」目標を超えたことになります。(環境金融機構2024.7.4記事より。)

 このC3Sの観測によれば、「IPCCの温暖化暴走モデル」の臨界点の1.5℃を超えましたが、IPCCモデル通り、灼熱地獄が到来するのでしょうか?それとも田中説の通り、気候変動の基本は自然変動(CO2の排出による影響も数%はあるが)であるとの前提で、数十年規模振動指数(1860-2000年:赤祖父線)に基づき、昇温が+1度/100年のモデルに近い気温の推移となるのでしょうか。

 筆者は、創り上げたIPCCモデルには無理があり、過去の気候変動をベースとした執筆者の田中説が正しい方向と思います。

 IPCCモデルと田中説の図示は下記URLの【図1】を参照ください。

  http://www.glomaconj.com/joho/keiei/sakai20241022ecobubble/sakai20241022ecobubble1-ver2.pdf

 

 二つ目は、太陽放射強度(地球の気候変化に影響する太陽活動変化)についての違いです。

 田中説は、太陽放射強度により、長期的に気候が大きく変動し、それによる気温の自然変動(0.7℃/100年のトレンド線)を主張します

 IPCCモデルでは、太陽放射強度については、太陽の黒点数の11年周期のみの太陽定数(長期的には殆ど横ばい)を使い、二酸化炭素(CO2)に焦点を合わせたモデルを使い「温暖化が暴走する要因は、太陽活動ではなく、CO2の排出による」との結論を導き、温暖化防止策として脱炭素一辺倒を主張します。

 田中説のポイントは、脱炭素を実現しても気候変動への影響は僅かであり、気候変動の要因の殆どは、太陽放射強度などの自然要因とするのです。

 太陽放射強度についてのIPCCモデルと田中説の図示は下記URLの【図2】を参照ください。データから判断すると、田中説が科学的に正しいのではないでしょうか。

  http://www.glomaconj.com/joho/keiei/sakai20241022ecobubble/sakai20241022ecobubble2-ver2.pdf

 上記から、田中教授は、『「完全崩壊」したIPCC仮説に基づく、意味のない脱炭素への多額の税金・投資の投入や(GX投資への2022年から10年間の官民投資150兆円、うち政府支援20兆円)、意味のないFIT(再エネの固定価格買取制度)による電気代の高騰(電気代の値上がり<2010~2022年>は+59%で、うちFIT分は+10%。)を止め、他の有意義なことに、国民のお金を活用すべき』と主張します。

(注)IPCCとは。

 IPCCとは「Intergovernmental Panel on Climate Change」の略で、「気候変動に関する政府間パネル」と呼ばれます。 1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された政府間組織で、2024年3月時点における参加国と地域は195となっています。

【ついに農民の反乱が激化!岐路に立たされた欧州の気候変動

  -川口マーン恵美(ドイツ在住・作家)-】

 2022年、オランダで始まった農民デモは、ベルギー、ドイツ、ポーランドなどへ野火のように広がっていきます。農民デモの要因の共通項は、EUの押付けてくる理不尽な規則への不満ですが、抗議の重心は様々です。ここでオランダの農民デモの要因を見てみます。

 オランダの農民の抱えている問題は、温室効果ガスの一つである「窒素」です。オランダ政府は、EUの〝Fit For 55”(2019年メルケルが送り込んだ欧州委員会委員長のフォン・デア・ライエンが就任早々に打ち出した2030年までに「CO2の排出を55%削減する」を目標とする「欧州グリーンディール政策」)を背景に、2019年に、「2030年までに窒素の排出を50%削減」という過激な目標を打ち出しました。オランダで窒素が高い理由は、豚と牛が毎日排出するゲップです。

 この基準を守るには、違う場所に引っ越すか、廃業するしかない訳ですが、オランダ政府は農家を守る意思は見られず、4~50,000件ある農家の内、12,000件が廃業し、17,000件は規模が1/3から1/2になるとの試算を出し、農家を怒らせます。

 畜産をしていては守れないような厳しい基準に追い詰められた農民たちによる大規模デモが始まり、オランダ以外の国からも応援する農民がトラクターを繰り出し集まったのです。

 昔から存在する家畜由来の「窒素」の削減が、気候変動に影響を与えるのでしょうか?

 この様に、気候政策について、このオランダのケースの他、夢ばかり追うドイツ経済相や、権力志向の強い欧州委員長など、国民のイライラが急速に広がっており、今後の動向が注目されます。

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■  「真実」を踏まえた経営を!(むすび)

 世の中、特に政治の世界では、利権やピアプレッシャー(同調圧力)など様々な力が働いており、必ずしも「真実」にもとづいて動いていません。その一つが脱炭素政策です。最近の温暖化は、CO2の排出が原因でしょうか。産業革命前の気温に比べ+1.5℃を既に超えており、温暖化が指数関数的に激化するのでしょうか。

 紹介本を読んで頂き、「真実」は何かを、突き詰めてみませんか。その上で「真実」を踏まえた経営をしませんか。

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【酒井 闊プロフィール】
 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。  企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
【 注 】  著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。
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