いったい僕は、この映画そのものに感動したのか?それとも、
不良男子高校合唱部員達がシャウトする「15の夜」に魂を揺さぶられたのか?
それは、人生自体に意味があるのか?それとも、
優れた芸術作品と出会い感動しているその瞬間、
あるいは、他人との心のふれあいで嬉しくて思わず涙してしまった瞬間、
またあるいは、セックスの至幸の頂にある瞬間
に意義があるのか?
という問いに似ている。
その答えを知りたくて、僕は旅に出た。
始めは2泊3日くらいのつもりが、1週間、1ヶ月と続き、3ヶ月目で貯金を使いきり、
見知らぬ砂浜で、ぼうっと座り込んでいたところ、
白髪の老人が現れ話しかけてきた。
「やあ。」
「あ、どうも…。」
「答えは見つかったかね。」
「え?何?何の答えですか?」
その頃には、何の目的で旅に出たのかもわからなくなっていた。
「若者は悩み事があると、この砂浜に来るんだよ。」
「悩み事ですか…。僕は、この美貌で女の子にモテてモテて困っているんです。」
JOKEのつもりで言ったのが、老人は真に受けた。
「ほう、どんなふうにモテるのかね?」
「この美貌ですよ。」
答えになってない。モテたためしなどないのだ。
「それに美声。僕が歌いだすと女共は皆、潮を吹いて失神しちゃうんです。」
「ほほう、どんな美声か聞かせてもらえんかね。」
もう焼糞だ。
「♪ぬ~すんだばいくでは~しりだす~
♪ゆくさきもーわからぬまま~」
「盗んだのかね、バイクを。そりゃいかんな。
君、今夜わしの家に泊まりなさい。」
老人の家まで車に乗せてもらうことにした。
老人は意外と金持ちらしくベンツを乗り回していた。
10分くらい走って、ベンツは「東松原海岸精神病院」という看板のある建物に吸い込まれていった。
「ここはいったい?」
「わしの家じゃよ。」
車から降りると、若い女が迎えに来て、
「おかえりなさい、理事長先生。」
と礼をした。
老人は「ごくろうさん。」と優しい声で応答した。
「清潔なベッドに、カロリー計算されたバランスの良い食事もついちょる。
君はここで毎日、昼寝でもしてりゃあよい。」
渡りに舟と、昼寝させてもらうことにした。
ところがである。
毎日昼寝ばかりというわけにもいかなかった。
「風呂」がそれである。
週に2回だけ風呂の日がある。
風呂の日は湯をわかす1時間前から、たらいとタオルと石鹸とシャンプーを持って、
入り口の前に並ばなくてはならない。
早めに陣取りしておかないと、悲惨な目にあう。
どんな悲惨かというと、お食事中の方には申し訳ないが、
うんちのプカプカ浮いた浴槽に浸かる羽目になるのだ。
その日も1番風呂を味わいながら、いい気分になって
「♪らくがぁきの、きょうかしょと、まーどばかりみてるおれ」と、
鼻唄を歌っていると、シンナー中毒の岡倉君が、
「♪ちょうこうそうびるのうえのそら、とどかないゆめをみてる~」
と唄い返してきた。
そのあとは、2人で湯舟に浸かりながら尾崎メドレーの大合唱となってしまい、
看護師さんに「いいかげん出ろっ!」と怒鳴られる始末だった。
昼間入る風呂は実に気分がいい。
病室の窓から入る風で岡倉君と涼んでいると、
「キューピーさん、理事長先生の診察です。」
と看護師さんに声をかけられた。
ここに来て診察なんて初めてだ。
ナースステイションの鍵を開けてもらい中に入ると理事長先生がでんと構えていて、
砂浜で見たときより貫禄があるように見えた。
「どうだね、答えは見つかったかね?」
と理事長先生は前と同じ質問をした。
「ハイ。」
と答えた。
「そうか、見つかったか。退院はいつごろがいいかね?」
「え?僕、退院できるんですか?」
「ああ、君の好きな日に退院していいよ。」
「じゃあ、明日なんかは?」
「いいよ。明日退院ね。
そしたら、君の本名と住所と電話番号をここに書いてくれんかね。」
僕は名前を聞かれるたびに、ハンドルネームのキューピーで通していたのだ。
翌日、退院した。親が病院まで迎えに来てくれていた。
ずいぶん心配をかけたもんだと思っている。
実はあの時の理事長先生の質問の答えは、まだ見つかっていない。
いつかわかるのか、死ぬまでわからないのか、それすらわからない。
でも、これだけは言える。
尾崎の歌は、ずっと歌い継がれていくことだろう。
不良男子高校合唱部員達がシャウトする「15の夜」に魂を揺さぶられたのか?
それは、人生自体に意味があるのか?それとも、
優れた芸術作品と出会い感動しているその瞬間、
あるいは、他人との心のふれあいで嬉しくて思わず涙してしまった瞬間、
またあるいは、セックスの至幸の頂にある瞬間
に意義があるのか?
という問いに似ている。
その答えを知りたくて、僕は旅に出た。
始めは2泊3日くらいのつもりが、1週間、1ヶ月と続き、3ヶ月目で貯金を使いきり、
見知らぬ砂浜で、ぼうっと座り込んでいたところ、
白髪の老人が現れ話しかけてきた。
「やあ。」
「あ、どうも…。」
「答えは見つかったかね。」
「え?何?何の答えですか?」
その頃には、何の目的で旅に出たのかもわからなくなっていた。
「若者は悩み事があると、この砂浜に来るんだよ。」
「悩み事ですか…。僕は、この美貌で女の子にモテてモテて困っているんです。」
JOKEのつもりで言ったのが、老人は真に受けた。
「ほう、どんなふうにモテるのかね?」
「この美貌ですよ。」
答えになってない。モテたためしなどないのだ。
「それに美声。僕が歌いだすと女共は皆、潮を吹いて失神しちゃうんです。」
「ほほう、どんな美声か聞かせてもらえんかね。」
もう焼糞だ。
「♪ぬ~すんだばいくでは~しりだす~
♪ゆくさきもーわからぬまま~」
「盗んだのかね、バイクを。そりゃいかんな。
君、今夜わしの家に泊まりなさい。」
老人の家まで車に乗せてもらうことにした。
老人は意外と金持ちらしくベンツを乗り回していた。
10分くらい走って、ベンツは「東松原海岸精神病院」という看板のある建物に吸い込まれていった。
「ここはいったい?」
「わしの家じゃよ。」
車から降りると、若い女が迎えに来て、
「おかえりなさい、理事長先生。」
と礼をした。
老人は「ごくろうさん。」と優しい声で応答した。
「清潔なベッドに、カロリー計算されたバランスの良い食事もついちょる。
君はここで毎日、昼寝でもしてりゃあよい。」
渡りに舟と、昼寝させてもらうことにした。
ところがである。
毎日昼寝ばかりというわけにもいかなかった。
「風呂」がそれである。
週に2回だけ風呂の日がある。
風呂の日は湯をわかす1時間前から、たらいとタオルと石鹸とシャンプーを持って、
入り口の前に並ばなくてはならない。
早めに陣取りしておかないと、悲惨な目にあう。
どんな悲惨かというと、お食事中の方には申し訳ないが、
うんちのプカプカ浮いた浴槽に浸かる羽目になるのだ。
その日も1番風呂を味わいながら、いい気分になって
「♪らくがぁきの、きょうかしょと、まーどばかりみてるおれ」と、
鼻唄を歌っていると、シンナー中毒の岡倉君が、
「♪ちょうこうそうびるのうえのそら、とどかないゆめをみてる~」
と唄い返してきた。
そのあとは、2人で湯舟に浸かりながら尾崎メドレーの大合唱となってしまい、
看護師さんに「いいかげん出ろっ!」と怒鳴られる始末だった。
昼間入る風呂は実に気分がいい。
病室の窓から入る風で岡倉君と涼んでいると、
「キューピーさん、理事長先生の診察です。」
と看護師さんに声をかけられた。
ここに来て診察なんて初めてだ。
ナースステイションの鍵を開けてもらい中に入ると理事長先生がでんと構えていて、
砂浜で見たときより貫禄があるように見えた。
「どうだね、答えは見つかったかね?」
と理事長先生は前と同じ質問をした。
「ハイ。」
と答えた。
「そうか、見つかったか。退院はいつごろがいいかね?」
「え?僕、退院できるんですか?」
「ああ、君の好きな日に退院していいよ。」
「じゃあ、明日なんかは?」
「いいよ。明日退院ね。
そしたら、君の本名と住所と電話番号をここに書いてくれんかね。」
僕は名前を聞かれるたびに、ハンドルネームのキューピーで通していたのだ。
翌日、退院した。親が病院まで迎えに来てくれていた。
ずいぶん心配をかけたもんだと思っている。
実はあの時の理事長先生の質問の答えは、まだ見つかっていない。
いつかわかるのか、死ぬまでわからないのか、それすらわからない。
でも、これだけは言える。
尾崎の歌は、ずっと歌い継がれていくことだろう。
しかも「クワイエットルームへようこそ」の感想のようにも思えるし・・・。
多分キューピーさんはこの映画に感動したというよりも、尾崎の歌に感動したのでしょう。
私もそうでしたから・・・。
この映画に関してはもうゴリのことしか覚えておりません。
夏帆演じる子がイマイチ好きじゃなかったから~
フィクションですが、浴槽にうんちが浮いていた、というのは実際に経験した事です。
すぐに湯舟から上がり体を洗いましたが、いくら洗っても体がきれいになった気がしませんでした。