キューピーヘアーのたらたら日記

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『特権的情人美食』 村上龍

2008-04-29 18:31:26 | 
すでに文庫本の中に収録されている短編小説から、

(主に『村上龍料理小説集』から)

『特権的情人美食』というタイトルにふさわしい作品を選りすぐった作品集です。



小説家の資質とは、大嘘つきであることだと、花村萬月がどこかで書いていた。

小説家はその想像力を駆使して小説を書く。

あたりまえである。

村上龍の小説を読んでいると、そのあたりまえのことが麻痺して分からなくなる。


飛行機のファーストクラスに乗って高級リゾート地に赴き、

スイートルームに宿泊し、高価なワインを飲み、

えもいわれぬ美味なるものを食し、コカインをやり、

美女とセックスに耽る。

それら全てが、村上龍が体験したことのような錯覚を覚える。

小説に書いたこと全てが作家の経験なら、

体はいくつあっても足りないし、お金もいくらあっても足りない。

ましてや、いくら印税で金持ちになったとはいえ、

まだ麻薬に耽っているはずがない。


僕が小説を読みながら味わっていた美味なるものは、

作家村上龍の才能だったのだと気付くのは、

次に凡庸な作家の下らない小説を読んでいる途中なのだ。

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