キューピーヘアーのたらたら日記

ガンバレ日本!!!TB&コメント大歓迎♪

異国の花

2009-07-26 14:42:56 | 雑文
2005年6月、少年は仲間達と夜の片町で遊んでいて、

公園の花壇に紫色の花のつぼみを見つけた。

つぼみは異国のものらしく、見たこともない形と色をしていた。

いったいこれはバラ科なのか蘭科なのか見当もつかない。

少年は持っていたジャックナイフでつぼみを切り取ると、

家に持ち帰り花瓶に入れて部屋に飾った。

つぼみは水道水のわずかな酸性アルカリ性に反応するらしく、

あるときは赤く情熱的に燃え、

あるときはこの世に存在しないと言われる青いバラのように寂しげだった。


少年はつぼみに

「Honey.」

と話しかけた。

すると、つぼみは

「Honey ka jan.」

と英語でも日本語でもタガログ語でもない自分だけの言葉で答えた。

それは、「私にあまり近づかないで。」という警告の意味にも取れたし、

あるいは、少年の覚えたての英語を茶化したジョークのようにも解釈できた。


少年は学校が終わると真っ直ぐ家に帰り、

飽きることなくつぼみを愛でた。

そして、つぼみが花になるところを想像してはめまいを覚え、

心臓がドクンドクンと高鳴るのを感じた。

少年はいまだアルコールをいたずらでしか飲んだことがなかったが、

アルコールの酔いだってこのつぼみが自分に与える陶酔感には

到底かなわないだろうということは予測がついた。


つぼみは毎晩、少年にわかるように日本語と英語とタガログ語を混ぜながら、

異国にいた時の話を聞かせた。

そして、自分がつぼみのままなのは日本の気温のせいかも知れないと言った。


そうして、4年の月日が流れた。

少年の髪には白髪が混じり、

下腹はぽこんと膨れ、

背は猫背になり、

太腿は間伐材のように細くなった。

異国のつぼみはエキゾチックな「美」を無言で差し出す代償として

少年から精気を奪い取り、

老人になった少年はかすんだ眼で、

ゆうべ、つぼみのまま花が枯れてしまっているのに気付いた。


かつての少年は、自分のためだけにつぼみのままで4年間もいてくれた花に

深く深く感謝した。





昨夜、ちひろちゃん(仮名)がお店を辞めたことを店の人から聞いて知った。

突然の幕引きだった。

コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« チェンジリング | トップ | ベンジャミン・バトン 数奇... »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
あきらめないで (リブロ)
2009-07-26 22:38:28
あきらめないで、ずっと心の中につぼみをしまっておいてください。
いつかきっと、花開く日が来ます。

1Q84が教えてくれたのは、そういうことだったでしょう?
返信する
寂しくなるね (jack aman)
2009-07-27 11:51:35
そうなんだ。
お店をやめると、ケータイもなの?
そうかもしれないね。
うーん・・・
返信する
リブロさん♪ (キューピー)
2009-07-27 20:23:31
れれれ?
心の中のつぼみがどっかいっちまったい。
なんと疎そうな
ってゆーか、自分の心をうまくコントロールできない。
でも、これが普通だよね。
夏物衣装を秋物衣装に整理しなおすようにはうまくいかないね。
返信する
jack amanさん♪ (キューピー)
2009-07-27 20:40:53
じゃない、携帯は繋がってるの。
向こうが電話に出ないだけ。
メールを送っても返事が無いの。
もう、あと3歩でストーカーになるくらいだよ。
で、昨日「あさって、放送大学の試験なんだ。」てメール送ったら、
「goodluck」って返事が来たの。

今日は仕事してても苦しかった。
でも、今は「ちひろちゃんがどこかで見守ってくれている
と感じることが出来て楽になった。
返信する

コメントを投稿

雑文」カテゴリの最新記事