「ライバルは自分の仲にいるかもしれませんよ」といわれた瞬間があった。
即答で「自分の仲にはいません」といった。
「それは解らないじゃないですか。」と言われ、
「いるわけがないですよ。張り合う相手なんて私の中にはいない。いるのは足を引っ張る私とがんばるぞと協力している私。ライバルは外にいても私の弱さやその他諸々が競う対象なんかになりません」
そういうと「自信があるからそういえるんです」と言われた。
そしてすぐ「僕に足りないものを教えてください」と言われた。
「足りないものを教えてくださいと私に聞くその心です。聞くなと言ってる訳じゃないけどあなたは自分と相談しなきゃいけないことまで他人に持ってもらおうとしてる。」と突っぱねた。
怒ったのだろう。だから私にいろいろ言い訳をしてきたし、年上らしく私にいろいろ諭そうともしていた。
私は中途半端な返事をして帰ろうとした。
するとそれが気に入らないようで、「まあ座ってください。僕の話を聞いてください」と言った。
私はここぞとばかりに「ちょっと気に入らないことを言われたらムキになって耳に蓋をして、自分に都合がいいことばかり言ってくれる人を並べているのに足りないところがどこかなんてどうやって知るんです。自分がしたいことだけをして、誰かが不愉快になっていたり理不尽な思いをしていても自分さえ楽しければいいという生き方をしていて、それでまわりが冷たいと嘆くのはどれだけ自分がしていることに無頓着なんですか?私のようにはっきり言う人はきっとそんなにいません。あなたがどうなろうと困らないからです。私も困りません。でもいつまでたってもいくつになっても自分は悪くないのにと言うことを前提で話すあなたに腹が立ちます。」
ビックリした顔でそのあと言葉にならない風で固まっていた。
私は言い過ぎたなんてみじんも思わなかった。どうせまたムキになって、自分のどこが悪いのと言い返してくるだろうと思った。
もう一人そばにいた女性がフォローするように柔らかく言い直した。
そんなことするからこの人は自分に都合がいいように受け取って、言うこと、することの罪悪感がないんだろうと思った。
そのフォローのおかげで彼は腑に落ちない顔をしつつも、その場を納得したようなことを言った。
私はどうでもよくなってまた帰ろうとすると、「僕もいろんな相談事聞くんですよ。」とカウンセラー口調で言った。
「ああ。そうなんですか」と言って帰った。
いろんなものを見ているのに、何か薄っぺらさがあってそれはたぶん面倒なことや都合が悪いことは避けて生きているからなんだろう。そんな彼のへんに高圧的な感じがいつも私の地雷を踏んでいた。
私があれだけ言っても「俺が悪いのか??」とヒステリックにぶつぶつ言ってるような人なので絶対響いたりしてないだろうけど、結構すっきりした。
一緒にいた女性は二人きりになったあと大笑いしながら私のところへ来て「よく言ったねえ。私ももうすぐそこまで言いたくなったことって結構あったけど、変わってるじゃない。だからあとが怖くてさあ。」といった。
「知ったことですか。あの人はまわりが引くようなことを自分でしてて、それをまわりが冷たいと言うじゃないですか。あんなだからいつまでも薄人間なんですよ。すっきりしたし、これで縁が切れるならそれだけの人ですからどうでもいいです」というと彼女は「うん。もういいよ。わたしたち結構我慢してたもんね。」とやっぱりすっきり顔で言った。