傘を2本持って駅の改札口で彼は待っていた。
午後から雨が降るとニュースで言っていたが、朝から晴れていたので傘を忘れたのである。
見事に天気予報は当たっていた。
土砂降りとまではいかないが、結構な雨の量である。
家にたどり着くまでにはびしょ濡れになること間違いなしである。
「待った?」
「いや。そんなに待ってないよ。」彼は惚けている。私と違い時間に正確の彼は、20分前には必ず行動すると . . . 本文を読む
部屋の四角い窓から夜空を見ていると、小雨が降っている。その雨で近くの電灯を濡らし、淡い光がぼやけていた。
冬の雨は冷たくて寒くて嫌になる。
そう言えば昔好きだった彼女もこんな日が嫌いだと呟いていた。
喫茶店でコーヒーを飲んだ彼女が、窓から見える雨を見て「こんな日は、頭が痛くなるの。」と落ち込んでいた。彼女のその仕草も好きだった。スマートで何もかもが魅力的だった。
ただ問題なのは、彼氏がい . . . 本文を読む
冬休み、小学4年生の勇樹がある男を探していた。
名前は、綾小路寿久。毎年、母親に真っ赤な薔薇と一緒にお年玉を送ってくれる男だ。中味は千円だが、母親と勇樹は嬉しかった。
その病弱な母親が入院している。
ただ一目でいいから寿久さんに会いたいと寝言の様に言っていたので、勇樹がこっそりと探しに来たのだ。
薔薇についているマンションの住所を探し出した。呼び鈴のボタンを押しても誰も出てこなかった。
. . . 本文を読む