浮気ばかりしていた彼氏と別れてやった。電信柱に張ってあるチラシにレンタル彼氏という気になる記事を見つけた。
かっこいい男がたくさん載っている。この中から選んでデートをしてくれるという事だった。ホストとは違うみたいだ。
早速電話した。アナウンサーの様な声の男が受け答えをしている。
次の週の日曜日にタクヤと待ち合わせをした。予約ナンバーワンの男みたいだ。確かに、見た目は26くらいかな。金額は、 . . . 本文を読む
「お電話ありがとうございます。レンタル彼女のノブナガと申します。」アナウンサーの様な話し方の男の声だった。
「チラシを見て電話したんですけど。」
「そうでございますか。早速ですが、チラシを見てもらうと分かると思いますが、どちらを希望ですか?」隣でも電話で答える声がしている。複数の電話がある会社の様だ。チラシに載っている女の子たちを見た。
「ショートカットで黒髪の目がクリッとしたアユミを希望 . . . 本文を読む
家の近くを散歩してて、ふと見上げると秋の空を渡り鳥の群れが旋回している。
昼は温かいが、夕方になるとヒンヤリとした風が吹き抜けている。
そんな時、好きだった人の事を思い出す。あれから、何年経っただろうか。何十年かもしれない。まだ心の奥の方で、むずかゆい恋の気持ちがあった。
仕事をしてても、取引先の社長に怒られていても、駅で電車を待っている時でも、喫茶店でコーヒーを飲んでても、朝新聞読んでい . . . 本文を読む
トモミとスーパーにより、ビールとつまみと御菓子を買った。レジの横で子供が集まっていたので、覗き込むと花火セットが山のように置いてあり、一人の子供が「パパかってよ」と父親に促している。
子供ではないが、自分も花火セットをカゴに入れた。
トモミがなぜか嬉しそうにして、「子供みたいだね。」と呟いた。
大学に通うトモミは、ちょうど長い夏休みに入ったみたいだった。スーパーを出ると生暖かい夜の風が通過 . . . 本文を読む
部屋の窓から外を見ると、天気がよくて、猫が欠伸をして暖かそうだった。
おばぁさんは朝の買い物に行く準備をしていた。
その姿を見ていたら無性に外に出かけたくなった。
「私も一緒にいく。」と言うとおばぁさんは子供の様にはしゃいだ。
化粧をしてふさふさの帽子をかぶり、玄関で「はい、これ。」とか細い声で白い杖を渡された。
これがないと歩くのも億劫になった。
脳梗塞で倒れ、体の左側だけどうして . . . 本文を読む
「私達って砂時計みたいね。ひっくり返すとまた同じ時間の繰り返し、いつものように逢って、体を重ねて、愛が砂の中に埋れていくわ。」シティホテルの7階で、女は、タバコを吸いながら、全裸で外を見ながら呟く様に言った。
「それってどういう意味だい?」
「この関係に終わりはあるのかしら。私は旦那とは愛がなく結婚したの。別れることはすぐにでも出来るわ。あなたはどうなの?」
「そんな事言ったって、この前も . . . 本文を読む
勝ちと負け。富と貧。強と弱。陰と陽。月と太陽。プラスとマイナス。晴れと雨。そして男と女。
全ての出来事が反対で世の中うまい様に出来ている。
それが重なる時、どちらかが上にいこうとして争いが起きる。
新一と佳奈子は、大声を出して道路の真ん中で別れ話しをしていた。行き交う人々が何事かとおもい目を向けている。
言い争って大分時間が過ぎていた。何がきっかけだったのかは、真夏の暑さでとっくに忘れて . . . 本文を読む
赤や茶色のレンガで造られた小さな家は、都会の片隅にひっそりとあった。
私は見た瞬間、遠い昔に忘れていた懐かしい気持ちになり、その家の作りを眺めていた。昔は建築関係の仕事をしていたからだ。
レンガの前には、色とりどりの花が咲いており、モネの絵画から飛び出して来た感じだった。
家の中に入ると、ツンとしたお香の香りが漂っていた。その香りは、アジア大陸を思い起された。木で作られた椅子と大きな机が真 . . . 本文を読む
ポカポカと春の風が心地よい。近所の桜の木の下で花見の宴会があっていた。
カラオケのスピーカーから酔っ払いの下手な歌が聞こえてきた。
今日はいい天気で、花見には最高だった。
僕は布団を干しながら、下手な演歌の歌を聞いていると、なんだか眠くなりウトウトとしていた。太陽の光が眠気を誘ったのだ。隣の猫も丸くなって寝ていた。
「私サトル君のお嫁さんになる。」
「僕もカナちゃんのお婿さんになる。」 . . . 本文を読む
さっきまで降っていた冷たい雨もやんで、もう春の暖かい風が吹きはじめている。春の陽気に誘われるように君が目の前に現れた。
君の笑顔は無邪気でかわいくて、窓から差し込む光で輝いて見えた。
二階の病院の一室の窓から見える君の笑顔が好きだった。私の顔を見るといつも笑って大きく手を振っていた。
君は誰だろうと思って、毎朝病院の前を通っていた。
君は幼い様で色っぽい顔つきをしていた。歳は高校生くらい . . . 本文を読む
寒さもピークに達していた。道路で警備員の仕事をして今年で五年になる。印刷業を定年して、孫の小遣い程度を稼げればいいかなと思い、警備会社にバイトとして入社した。
家で盆栽でもいじりながら、老いていくのも悪くはないと思うが、私は働くのが好きで、ボケにくいという理由もあって入社してもう随分と時間が過ぎた。
今日は、近くの大学で音楽祭があっているので、交通の便が多い。
ただ誘導棒を振るだけだが、6 . . . 本文を読む
車や人通りが多い四つ角の交差点がある。信号が赤に変わると人や車は立ち止まり、信号機の真正面にある店に目がいくのであった。
店の名前は「ピエロ」人形屋敷なのか。喫茶店なのか。よく分からないが、誰一人として店の中に客はいなかった。
それは、窓越しに見える椅子に座っている奇妙なピエロが目立っているからだ。ピエロは、小学生くらいの身長で、中から照らされているライトでボンヤリと光り輝いて、いつも不敵な . . . 本文を読む
今日もお気に入りのサブちゃんの歌に合わせてトラックで道路を走っている。昔から演歌が好きだった。特にサブちゃんは大ファンだ。
バックミラーにはサブちゃんのストラップもついている。今年十二歳になる娘洋子からもらったものだ。俺がサブちゃんのファンと知っていてプレゼントしてくれた。携帯につける物だと言ったが携帯なんて持ってないから、バックミラーにひとまずつけていた。
ハンドルの所には愛しの家族の写真 . . . 本文を読む
夕日が綺麗な海に沈んでいく。見ていると悲しかった事や辛かった事が夕日と共に沈んで行くように忘れていく。
私が海の砂浜を歩いていると、おばぁさんが鳥に餌をあげていた。おばぁさんの周りを海鳥達が囲んでいた。
鳥達が囲んでいるおばぁさんがチラッと若く見えた。目をこすって見たら年寄りの姿に戻っていた。海の光で若く見えたのかもしれない。
カモメや鳩が餌を取りに来ていた。三十羽くらいいた。もっといたか . . . 本文を読む
私は、あなたの事を先生と呼ばない。あだ名で呼んでいた。毎日毎日メールでやり取りしていた。悲しい事やうれしい事。何でもメールで話していた。
エロい話もまざっていた。時々暴走する癖がある先生。とまる事を知らない。時々本当に先生なのかと心配になった。
だけど、超優しい。私の事となると真剣に聞いてくれる。こんな人は他にはいない。純粋で、他人の為に心から、心配して、何よりも愛を語るのが好きな人だ。
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