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世にも不思議な物語。
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一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

18.おばあちゃんと孫

2022年01月15日 | 家族
 大好きなおばあちゃんは、私が20歳の成人式を見ることなく亡くなった。
 地方の大学に合格して、おばあちゃんの家から近いという事で、1人暮らしのおばあちゃん家から通うようになった。
 おばあちゃんは、快く迎えてくれた。
 一軒家で、広々とした畳の部屋があり、仏壇が置かれてある。家に入ると、ツンとしたお香の香りが漂っている。
 おばあちゃんの匂いだ。
 大学で嫌なことがあったり、アルバイト先のコンビニで嫌なことがあったりすると、「そうか。そうか。」と聞いて、慰めてくれた。
 夜遅く、アルバイト先のコンビニでおでんを買って帰ると、「おいしい。」と言って喜んで食べてくれた。笑う時のくしゃとなる皺が好きだった。
 そんな時、成人式の振袖を選んでいるときに父から電話があり、おばあちゃんが癌で入院すると聞いた。
 ショックで、着物どころではなくなった。
 すぐに病院に言ったが、おばあちゃんは横になってて、辛そうだった。話しかけても横を向いて、辛そうだった。
 そのまま、おばあちゃん家に帰り、母親が泊まるという事になった。
 おばあちゃんがいない家は、なんだかとても寂しく、ガランといつもより広々と感じた。隙間風から、冷たい風が入ってくる。
 そんな事があって、一週間後おばあちゃんが、急に危篤になり、父と母も病院に呼ばれ、最後の挨拶をした。
 管だらけになっているおばあちゃん。見るだけで辛かった。
 心電図がユラユラと呼吸みたいに揺れている。それが、天国に行く階段のようだった。
 私の成人式の振袖姿を見るのを楽しみにしてくれたのに、あんなに話してくれたのに。神様なんていないのだろうか。
 私が「おばあちゃん。」と呼ぶと、いつものくしゃとした笑顔で、私の方を見て、そのまま亡くなった。
 最後は穏やかな顔をしていた。家族三人、大声で泣いた。
 
 成人式当日。
 振袖を着て、おばあちゃん家に行った。
 入るとおばあちゃんがいつもの炬燵に座っているような気がしていた。
 仏壇のおばあちゃんに挨拶をする。「おばあちゃん。20歳になったよ。ありがとう。」
 遺影の額がガタっと風に揺れた。
 おばあちゃんが「おめでとうな。」と言っているような気がした。
 これから、大人になっても頑張るから見といてね。
 「おばあちゃん。」
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