学校がやっと終わり、帰ろうと思って、玄関に立って大粒の雨を見ていた。
目の前には、紫陽花が咲いていて、綺麗だなと見とれていると隣にクラス一の美女が佇んでいた。
私は、密かに片思いをしていた。
水色の制服は、他の女子が着ているとダサく見えるが、彼女が着ていると、まさに校庭に咲く一輪の紫陽花の様だった。
彼女が大きな目を丸くして、空から降っている大粒の雨を見て、「傘がないと帰れないなー。」と . . . 本文を読む
もうすぐ3時間目の国語が始まる。
窓から、校庭の運動場を見るとどんよりとした薄暗い曇り空から雨が降っている。
まったく雨の日は嫌いだ。じめじめと蒸し暑くなり、サウナに入ったような感覚に陥る。
国語の児玉先生がドアをガラガラと入って来た。
「ハイ。今から授業を始めます。」細長い男の先生だ。
先生が黒板に問題を書いて、「誰か分かる人~」と聞いてきた。
みんな分からないから俯いているのを見 . . . 本文を読む
喫茶店の窓際の席で、何気なく外を見ていた。
ゆっくりと雨が降り出して来た。
新聞紙を頭にかざし、雨をよけようとしているサラリーマン、折りたたみ傘を広げている禿げたおじさん、ハンカチを頭にあてて、雨に濡れないようにしている細い女性が足早に通っている。
まるで、四角い窓が映画のスクリーンのように鮮明に映し出されている。
私がその女性を思い出す時は、決まってこんな雨の夕暮れだった。
静かな . . . 本文を読む
久しぶりに車で遠出をした。山奥にあるレストランで食事をして、家に帰っている所だ。助手席の彼女も機嫌が良いみたいだ。
「美味しかったね。今日は最高のデートだった。ありがとう。」
「気に入ってくれたならよかった。」そんな会話をしてクネクネとした山道を進んでいると、ザァザッーと強い雨が降って来た。通り雨のようで遠くでゴロゴロと雷もなっている。
「急に降るなんて、ついてないね。」彼女がボソッと呟い . . . 本文を読む
黒い暗雲が立ち上がり、光が失われ、ゴォゴォという音と共に雨が降り出す。
病院の一室で寝ている老人。ベッドの周りを囲む家族。
孫であるナオトが祖父の所へ近寄り、手を握っている。
「じぃじぃ目を覚まして。」隣で、泣いている母親がナオトの頭を撫でながら言った。
「お父さん。返事をして。」その声が病室に響くと、答えたかの様に心電図の音が一本、左から右へと流れていった。
号泣する家族。まだ温もり . . . 本文を読む
シトシトと降る雨の中、ランドセルをからった男の子と女の子が、水溜まりでしゃがんで、捨てられた白い子犬に話しかけていた。男の子が自分の傘を雨に濡れないように子犬の方にかざしている。女の子は、男の子が濡れないように傘をかざしていた。その姿を見た近くのオジサンが更に大きな傘で二人を包んでいる。
小さな窓ガラスから外を見ていると雨が降っている。
彼女の部屋に来ているが、彼女は少しだけ機嫌が悪 . . . 本文を読む
いつものように郵便局の前で待ち合わせをしていると、彼女が来た。
彼女が現れると雲行きが悪くなり、必ず雨が降る。今も晴れていたのだが、来た途端に小雨が降ってきた。梅雨前線にとりつかれているに違いない。
彼女は、そのせいで傘を常に持っている。彼女にとっては秘術品だ。
今日は、虹色の傘を広げて悲しそうに笑った。
「今日晴れだと天気予報で言ってたんだけどね。」
「ま、しょ~がないんじゃないかな . . . 本文を読む
傘を2本持って駅の改札口で彼は待っていた。
午後から雨が降るとニュースで言っていたが、朝から晴れていたので傘を忘れたのである。
見事に天気予報は当たっていた。
土砂降りとまではいかないが、結構な雨の量である。
家にたどり着くまでにはびしょ濡れになること間違いなしである。
「待った?」
「いや。そんなに待ってないよ。」彼は惚けている。私と違い時間に正確の彼は、20分前には必ず行動すると . . . 本文を読む
部屋の四角い窓から夜空を見ていると、小雨が降っている。その雨で近くの電灯を濡らし、淡い光がぼやけていた。
冬の雨は冷たくて寒くて嫌になる。
そう言えば昔好きだった彼女もこんな日が嫌いだと呟いていた。
喫茶店でコーヒーを飲んだ彼女が、窓から見える雨を見て「こんな日は、頭が痛くなるの。」と落ち込んでいた。彼女のその仕草も好きだった。スマートで何もかもが魅力的だった。
ただ問題なのは、彼氏がい . . . 本文を読む
外は雨。まるで僕の心の中をあらわしているかのようだった。憂鬱な気分が続いている。
彼女が浮気をしているからだ。トイレに行っている間、彼女の携帯がなって着信履歴を見たら、男の名前が出ていた。
田中タケルどこからどう見ても男の名前だ。その時は彼女に問いただす勇気もなかった。
次の日から彼女の行動が気になって仕方なかった。田中タケルいったいどこの誰だろうか。
今日は、友達と買物に行くから逢えな . . . 本文を読む
会社帰り、外に出ると雨が降り出していた。折りたたみの傘を広げようとすると、隣には好きな人が傘を忘れて、駐車場の車を止めている所までどうやっていこうかと、立ち往生していた。
雨の中見る彼女は、更に美しかった。雨の季節に咲く紫色のアジサイの様な感じがした。
私は傘を持っていたので「一緒に入っていかない」と言って、傘をかっこよく広げた。
彼女は、「いいんですか。」と言って私に寄り添って来た。近寄 . . . 本文を読む
秋の雨はなぜこんなにもせつないのだろう。冷たい風に吹かれて雨がポツリポツリと降っていた。私は近くの家の屋根で雨宿りをしていた。隣には若くて背が高いジーパンがよく似合う女の人がいた。まつ毛が長くて目が透き通るように薄い茶色の女の人だった。私と目と目が合うと話しかけてきた。
「雨ひどいですね。」
「そうですね。」何気ない会話だったが、私はその女の人に好意を抱いてしまった。目が大きな彼女にうっとり . . . 本文を読む