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世にも不思議な物語。
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一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

17.クリスマスの幽霊

2021年12月20日 | 冬の物語
 リビングに長いテーブルが真ん中にあり、クリスマスケーキが置いてある。
 妻がキッチンの方にいて、ゆうたが隣に座っている。
 私は、向かいに座って見ていた。ケーキの隣には、さっき食べたチキンの残骸が残っている。
 私がケーキの上にろうそくを立てて、火を点けた。それを見た妻が電気を消して、ゆうたが、息を吹きかける。ろうそくの火が全部消えた。
 「メリークリスマス。」と言うと、妻が部屋の奥からプレゼントを持ってきて、ゆうたに渡している。ゆうたは満面の笑顔だった。
 今年も昨年と同じように幸せな時間になるはずだった。昨年、妻とゆうたは、買い物帰りの横断歩道で、車に引かれて亡くなった。80歳のじじいに殺された。車が勝手に暴走し、車の免許を返納する予定だと言っていたが、その時はすでに遅かった。ひかれた妻とゆうたが浮かばれない。ただ、買い物に行っただけなのに。
 じじいの事を考えると、怒りなのか、悲しいのか、涙が出てきた。
 涙を流すと、目の前にいる妻とゆうたが悲しい顔をして見ていた。
 ふと我に返ると、シーンと静寂したリビング。キッチン。薄暗い電気。目の前には、誰もいない。
 幽霊でも何でもいい、ただクリスマスという日は、1人でいたくない。
 私は、遺影を見ながら、泣きながらケーキを食べていた。
 

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