40年ぶりの同窓会の帰り、タクシーで急に胸が痛くなり、意識が朦朧としている中で、救急病棟についた。
木漏れ日の中、教室の窓から差し込む南風が心地よい。白いカーテンが揺れている。
黒板に何かを書いている先生。隣には、レミがいた。
ポニーティールに髪を結び、一生懸命先生の言っている事をノートに書いている。
そういえば、レミはこんな感じで、いつも横顔ばかり見ていた。
ちらっと私の方を見た . . . 本文を読む
晴れわたる青い空。パレットで描いたような白い雲。家のベランダには洗濯物がたくさん干されてある。
「あなた行ってらっしゃい。」エプロン姿の小夜子が夫を玄関まで見送っている。
「行ってくるよ。」今年40歳になる夫、近くの会社で働いている営業部長。
その間をくぐる様に走って出て行く小学生の息子。
「おい。危ないから気をつけろよ。」夫が叫ぶと、息子は、シューズ袋を高く上げて合図をした。その姿を一 . . . 本文を読む
夕方、タクシー会社の同僚と一緒にコンビニで買った缶コーヒーを飲んで一息ついていた。
「今日は大分温くなったな。」
「朝と夜はまだまださみぃーよ。」そんな会話をしていると同僚の方に無線が入る。
「えーただ今大通り2丁目交差点に一名のお客様が待っています。」
「こちら今から向かいます。」同僚が答えた。
「それじゃ行ってくる。」と私の方に向かって言い、いそいそと車を発進させた。
私もそろそ . . . 本文を読む
27歳独身。男性。彼女いない歴…大分経った。就職にもついてない。
大学の友達から電話があり、子供が来月生まれると言って結婚したからと言った。
私はハローワークの帰りにそんな事を聞いたので物凄く驚いた。
近くの公園では浮浪者が空き缶を一生懸命集めていた。私は、公園のベンチに座り、彼と彼女との結婚生活についてぼんやり揺れているブランコを見ながら考えていた。
「あなたお帰り。ご飯にします。それ . . . 本文を読む
学生服を来た男女が砂浜で座って海を眺めていた。
男が砂浜に足跡がついている事に気付くと、指で砂浜に相合傘を書いて両サイドに名前を書いた。
かなえ、かずお。照れくさそうにしていると、かなえは傘の上にLOVEと付け足した。
かずおは更に顔を赤らめて、羽織っている学生服を脱いで海に飛び込んだ。
ざぶっーん。
全身ずぶ濡れである。だけど満足そうに笑うとかなえも「ばかぁ。」と言って一緒に笑った。 . . . 本文を読む
パカパカパーン。結婚式場でファンファーレが鳴り響いた。
鉄は結婚式に呼ばれていた。友人代表でスピーチをする為だ。
三ヶ月前くらいに高校の友人の芳樹から電話がかかってきて、結婚するからスピーチを頼むと言われてこうやって来たのだった。
ただ問題なのは、高校の頃から好きだった瞳が芳樹の相手だということが気にかかっていた。
芳樹もよく分かっているハズなのになぜ鉄を友人代表でスピーチをさせるのかが . . . 本文を読む
「王様だぁれだー?」3対3のコンパで、王様ゲームをしていた。あまりにも出会いがないと知っているノブが開いてくれた。ノブは、高校の頃の同級生だった。 ジャニーズの様な顔立ちで、目がクリッとして、ノリが良い事もあり、女には結構もてているみたいだった。
私を誘ってくれたのはいいが、こんな感じの出会い方は嫌いだった。
「ハ~イ。」手を上げたのは、サトミだった。ノブの友達で、茶髪で、まつ毛が長く、アイ . . . 本文を読む
ブヨブヨした腹。三重アゴ。細い目。それを囲んでいる分厚いメガネ。歩いている時、ショーウィンドウに自分の体が映った。何度見ても嫌になる。自分の事だから誰にも文句は言えない。
そんな僕だが、一目惚れをしてしまった。よく行く喫茶店の彼女にだ。メイドの服が似合いそうな彼女が私の方を見て、「いらっしゃいませ」と声をかけてくれたのが初まりだった。
僕は、恥しくて下を向いて、イソイソと案内されたテーブルに . . . 本文を読む
今日はいい天気だった。ふと、庭を見ると、母が植えていた黄色のチューリップが綺麗に咲いていた。
春も中盤にさしかかって、温かい風が吹き始めていた。
私は、春の風を感じながら、チューリップを見ていると、大好きな彼が目の前に浮かんだ。
今頃、仕事でもしているのだろうか。
私は超がつくほどの寂しがりやだから、いつでもどこでも彼の事を想ってしまう。
雨蛙に少し似ている彼は、仕事がバリバリ出来るの . . . 本文を読む
「大好きです。付き合ってください。」私は、ベタな告白をした。何十回と言った言葉だ。ナオコは、好きな人がいるからと何度も断って来た。
三年間想っていたナオコから、ふられて一年くらい落ち込んでいた。そんな時になぐさめてくれたのが、同級生のサユリだった。
いつからか、サユリと付き合うようになった。
ある時、何の運命の巡り会わせなのか。サユリとショッピングに行ってて、たまたま、トイレの前でナオコに . . . 本文を読む
私は、あの人が大好きだった。背が高くて、目が澄んでいて、お笑い芸人に少し似ていた。あの人の側にいるだけで、楽しくて胸がときめいた。
あの人は7年付き合っていた彼女がいた。私とあるきっかけで出会い、彼女と別れて、付き合うと言ってくれた。
私はうれしくてあの人の前で子供みたいに泣きじゃくった。
あの人は困ったような顔をして頭を撫でてくれた。
私は、勇気を出してあの人の胸の中に飛び込んだ。温か . . . 本文を読む
昨日徹夜で好きな人にあげるチョコレートを一生懸命手作りで作った。私のオリジナルチョコレートだ。
体中チョコレートだらけになった
体も甘くなったので、私の事もトオルが食べてくれたりなんかしちゃってとか考えていたら顔がにやけてきた。
トオルは、私のチョコもらってくれるだろうか。
トオルとは幼なじみで、サッカー部のキャプテンだ。
頭もよく、足も速く、顔も超かっこいい。女の子にもモテモテだ。私 . . . 本文を読む
心で何度叫んでも君に届かない。毎朝電車ですれ違う。君は降りて私は乗る。その瞬間に恋をしてしまった。
毎日同じ時間、同じ車両の所で顔を合わせる。
彼女と肩と肩があたりそうになるが彼女とは決して触れ合う事はない。目と目が合って時間が止まる事があっても彼女は私の方をふりむく事はないだろう。
大きな目が私の肩に突き刺さっても彼女は知らぬ顔で電車を降りていく。
通りすがる時、シャンプーのいい香りが . . . 本文を読む
男の気持ちと女の気持ちはシャボン玉のようにフワフワと浮かんでは消えていく。次から次へと新しいシャボン玉が出来上がるがみんな消えていく。
男も女もシャボン玉のように壊れやすい生き物だ。一人の女性がシャボン玉のようにまた消えていった。
リュウジは彼女の後ろ姿を見送った。新しい彼氏が出来たらしいのだ。部屋にあった荷物を全部まとめて出て行った。
部屋にポツンと一人になって孤独という一文字が頭に浮か . . . 本文を読む
キヨシは、最近悩んでいた。花屋の店員に恋をしているからだ。彼女はエプロン姿で長い黒髪を後ろで一つに結んでいた。街を通る人に愛想よく挨拶する姿に好意を抱いてしまった。
母が入院していたのでお見舞いの花を買いに行く時に必ずその店員さんに包んでもらっていた。
名前はカオリだった。エプロンについているネームプレートを見て確かめた。花屋にぴったりの名前で印象深かった。
今日もカオリから花を包んでもら . . . 本文を読む