生温かい南風が通り過ぎた。体育館の側にある咲いている桜が所々揺れている。
今日は卒業式。体育館に集まり、整列をしている卒業生90名、贈りだす在校生73名。
バーコードというあだ名を誰かがつけていた禿げた校長先生の挨拶が終わり、大ちゃんの父親がPTA会長の挨拶をしている。
後ろで膝かっくんをしてきたヨウジが話しかけてきた。
「おい。アヤが見てるぜ。」
「嘘つくなよ。」
「今日卒業式で、告白しないのかよ。」
「するわけないじゃん。」
「お前、三年間想っていたんだろう。大人になって、一生後悔するんじゃないか。」
「仕方ないよ。アヤはヒロと付き合ってるからな。」
「お前それでもいいのかよ。」左側の三列目を見る。アヤがハンカチで涙を拭っている。大きな目から涙が溢れていた。
PTA会長の挨拶が終わり、来賓の紹介があって、校歌を歌い始める。音楽が流れて、卒業生と在校生が一緒に歌を歌った。
歌声が響く体育館。ステージの日の丸の旗が揺れている。
すすり泣く卒業生達。
校歌が終わり、在校生が集まり出し、手と手を繋ぎ、出口までの道を作り、その中を卒業生が二人ずつ通って行く。
バンプオブチキンの3月9日のテープが流れ始める。
この歌を聞くともう卒業だなと実感が湧いてきた。
明日から学校に来なくていいのだ。いや、行きたくても行けないのだ。
そういう気持ちを胸に在校生の間を通る。
後輩が、わざと手を下して遮り「先輩おめでとうございます。」と言ってニヤついている。
後ろから来たアヤと同じ列になった。
手と手が触れる。温かい手だった。
出口まで手を繋いでいた。気が付くまで手を握ったままだった。このまま時が止まればいいとさえ思った。
体育館の前で、見つめあった。
「卒業おめでとう。」言いたい事はたくさんあったが、言葉が見当たらなかった。
「もう卒業だね。明日から、みんなと逢えないんだね。寂しいな。」アヤが言葉を探すように呟いた。そう、もう二度と逢う事はないだろう。
そう考えると人って、なんで出会ったり、別れたり、卒業したりするんだろう。世の中の不条理を考えても答えなど出なかった。
「死ぬわけじゃないんだから、また逢おうよ。」
「そうだね。」一粒の涙を流すアヤ。どうせヒロと別れるのがつらいのだろう。
校門の前で卒業証書の筒をクルクルと回しながら、ヒロが待っていた。
ヒロの所に走り寄って行くアヤ。揺れる長い髪。シャンプーの残り香。抱き合う二人。
そんな姿を何度も見ている桜の木々。
後ろから頭を筒で叩くヨウジ。
「女は、桜の数ほどいる。」
「珍しいな。慰めてくれるのか。」
南風で舞い散る桜の花びら。
☆人気ブログランキングへ☆
今日は卒業式。体育館に集まり、整列をしている卒業生90名、贈りだす在校生73名。
バーコードというあだ名を誰かがつけていた禿げた校長先生の挨拶が終わり、大ちゃんの父親がPTA会長の挨拶をしている。
後ろで膝かっくんをしてきたヨウジが話しかけてきた。
「おい。アヤが見てるぜ。」
「嘘つくなよ。」
「今日卒業式で、告白しないのかよ。」
「するわけないじゃん。」
「お前、三年間想っていたんだろう。大人になって、一生後悔するんじゃないか。」
「仕方ないよ。アヤはヒロと付き合ってるからな。」
「お前それでもいいのかよ。」左側の三列目を見る。アヤがハンカチで涙を拭っている。大きな目から涙が溢れていた。
PTA会長の挨拶が終わり、来賓の紹介があって、校歌を歌い始める。音楽が流れて、卒業生と在校生が一緒に歌を歌った。
歌声が響く体育館。ステージの日の丸の旗が揺れている。
すすり泣く卒業生達。
校歌が終わり、在校生が集まり出し、手と手を繋ぎ、出口までの道を作り、その中を卒業生が二人ずつ通って行く。
バンプオブチキンの3月9日のテープが流れ始める。
この歌を聞くともう卒業だなと実感が湧いてきた。
明日から学校に来なくていいのだ。いや、行きたくても行けないのだ。
そういう気持ちを胸に在校生の間を通る。
後輩が、わざと手を下して遮り「先輩おめでとうございます。」と言ってニヤついている。
後ろから来たアヤと同じ列になった。
手と手が触れる。温かい手だった。
出口まで手を繋いでいた。気が付くまで手を握ったままだった。このまま時が止まればいいとさえ思った。
体育館の前で、見つめあった。
「卒業おめでとう。」言いたい事はたくさんあったが、言葉が見当たらなかった。
「もう卒業だね。明日から、みんなと逢えないんだね。寂しいな。」アヤが言葉を探すように呟いた。そう、もう二度と逢う事はないだろう。
そう考えると人って、なんで出会ったり、別れたり、卒業したりするんだろう。世の中の不条理を考えても答えなど出なかった。
「死ぬわけじゃないんだから、また逢おうよ。」
「そうだね。」一粒の涙を流すアヤ。どうせヒロと別れるのがつらいのだろう。
校門の前で卒業証書の筒をクルクルと回しながら、ヒロが待っていた。
ヒロの所に走り寄って行くアヤ。揺れる長い髪。シャンプーの残り香。抱き合う二人。
そんな姿を何度も見ている桜の木々。
後ろから頭を筒で叩くヨウジ。
「女は、桜の数ほどいる。」
「珍しいな。慰めてくれるのか。」
南風で舞い散る桜の花びら。
でも、何だか懐かしい光景が…
青春がよみがえってきて、甘ずっぱい様な、いいなあ~余韻がいいですう~
読んでいる人に共感してくれたら嬉しいですね。
余韻っていいですよね~。
書いてて自分でも、その場所に行っているようで、楽しいですよ。私って妄想癖なのかな(笑)
なんだかいつも大事な場所にいるようだけど、実際はとめどなく時間が流れてるんですよね~。
時間と命と女性と儚い事ばかりですね。(笑)