ソフレとは添い寝フレンドの略である。一線を越えないという事が、見えない決まりの様なものがある。
今の彼氏とは、合コンで知り合い、付き合って二年ほど経つ。お気に入りの喫茶店で、ご飯を食べて、近くにあるシティモールで、洋服店を見て回り、たわいもないない会話をして、モールを出る。
午後9時いつもの様に、「明日会社だから。」と言い、お互い自分の家の方角へと足を向ける。
彼氏に気を使っている訳で . . . 本文を読む
幼い頃の思い出は、大人になった頭の片隅に残っている。
幼稚園の先生に恋をしていたのを思い出した。ブランコで遊んでいた時、ジャンプをして転んでしまった。膝とオデコを擦り剥き、ワンワンと泣き叫んでいたら、水色のエプロンをしたポニーティールの女の先生が手当てをしてくれた。
「また、転んで。」保健室で、絆創膏を貼ってくれた。その後に「痛いの痛いの飛んでけ。」と言っておまじないをしてくれた。先生の笑顔 . . . 本文を読む
君といるといつも嘘ばかりついてしまう。
「大嫌い。」
「逢いたくない。」
「手なんかつなぎたくもない。」
心と言葉がちぐはぐになってしまう。この心の奥底の気持ちをどうやって伝えたらいいのだろうか。
そうだ。今日から素直に何でも言うようにしよう。
「君といると嬉しい。」
「君を抱きしめたくなる。」
「君といるとせつなくなる。」言葉に出すとなんてちっぽけなものなんだろうと思う。
こ . . . 本文を読む
飛行場は、人が多くて混雑している。
第2ターミナル発、東京行き。私はこの飛行機で帰らなければならない。
飛行場の中の喫茶店で、彼女とコーヒーを飲んでいた。
「映画面白かったね。」
「そうそう。最後意外な犯人だった。」
「まさか。あの犯人だとはね。」彼女の家で見たDVDの話をしていた。外を見るとJALとANAと書かれてある飛行機を洗浄している男の人が見えた。この飛行機が空を飛ぶんだからた . . . 本文を読む
彼に嘘をついた。ほんの些細な嘘。
出会い系サイトで知り合った男の人と一度だけ浮気をした事がある。彼とうまくいかなくて、喧嘩ばかりしていた時に優しく声をかけてくれたのがきっかけだった。
一夜だけの恋。戻る事が出来ない恋。
抱かれながら夜の闇へと落ちていった。
彼は今日も知らずに優しく声をかける。私は心の奥の方がむず痒くなる。
ほんの些細な嘘。自分に嘘はつけない。
時には残酷な嘘になる。 . . . 本文を読む
会社を辞めて随分と時間が経った。会社をリストラされ、ホームレスになるくらいなら、石焼芋でも売って食っていくだけあればいいと思った。
愛想すかして嫁と子供は家を出て行った。白状ものだといいたいが、私はそれほどいい男ではなかった。
「いしやきいも。ほかほかのおいもだよ。いかがですか。」軍手をはめ、バンダナをして、寒い街中を車で一周するのだ。外は凍るように寒いが、冬は稼ぎ時で寒いからこそ売れるのだ . . . 本文を読む
一人暮らしをして、一週間が経った。明日晴れるという事で、溜まっていた洗濯物をコインランドリーに持っていき、大きな洗濯機の中へと投げ込んだ。
金額は300円。機械に入れると、ウィーンと音と共にシャカシャカと回りだした。一週間の汚れが洗い流されて、私も気分がよかった。私の人生もそんな風に洗ってくれたらいいのだがと思った。
洗濯機が回っている間、暇なので浅田次郎の小説を読むことにした。
私が読ん . . . 本文を読む
テレビもない。ラジオもない。布団もない。お金もない。仕事もない。保険証もない。帰る家もない。会社をリストラされ、私はとうとうホームレスになってしまうのだろうか。
目の前で、ダンボールを広げ、空き缶が無造作に横に積み上げられ、髪は伸び続け、真っ白な髭も髪以上に伸び、泥だらけの素足の老人がニヤッと私の方を見て笑っていた。
私に何か囁いている様に感じた。「こっちへおいで居心地がいいよ。」と言ってい . . . 本文を読む
どんよりとした曇り空だった。もうそろそろ雨が降り続く梅雨に入るのだろうか。ジメジメとした日々をこれから過ごさなければならないかと思うと、ウンザリしていた。
「何か良い事ないかな」と呟いていると、踏切の遮断機が下りて立ち止まった。 この遮断機は一度下りたら二十分くらい開かない「開かずの踏切」で有名な場所だった。
カンカンカンカンと音が鳴り響いた。
踏切で待っている間、どんよりとした空を見てい . . . 本文を読む
ボーという音と共に船が旋回して走り出した。私は三月の休みを使い、船に一人で乗って旅をしていた。鞄一つ持って気楽な旅だった。周りを見渡すと乗客はまばらで所々にいた。私は、海を見るために客室から出た。
波の音が心地よくて静かな海が広がっている。私の住んでいる町がだんだん遠く離れて行って、小さくて模型みたいに見えた。古里というものは、一度出るとありがたい気持が湧いてくる。
船の近くをカモメの群れが . . . 本文を読む
居酒屋で友達と待ち合わせをしていた。女友達ユウコから男の人を紹介をしてもらう予定だ。
店に入るとノリノリのヒップホップの歌が流れていた。この歌の題名を思い出していると、ユウコが私に気づいて席で手を振っていた。
「アユミここだよ。」
「久しぶりだね。」
「カズを紹介してもらった時以来だね。今日は私が紹介するからね。結構いい男だから期待してていいよ。仕事でユウジは遅れてくるんだって。」ユウコ . . . 本文を読む
私が海沿いを歩いていると、女の人が手を振っていた。初めは、誰に手を振っているのか分からなかった。よく見ると近くにゴールデンレトリバーがいた。大人のレトリバーだ。目がトロンとして、退屈そうに飼い主を見ていた。
女の人は、ジーパンに白いTシャツを着ていた。髪は後ろで一つに結んでいた。
犬を置き去りにしようとして冗談で、手を振っているみたいだった。犬も分かっているらしく、退屈そうに前足で顔をかいて . . . 本文を読む