ゴールデンウィークという事もあり、久しぶりのデートで、カオリと一緒に遊園地に来ていた。
観覧車に乗るまでは良かったが、どうやら風邪をひいたみたいだ。
季節の移り変わりで熱も少しあるのだろう。
カオリの顔が薄っすらと歪んで見える。
カオリが遊園地の中にある鏡の世界という建物に入りたいと言った。
私は、あまり気が乗らなかったが、店の従業員にチケットを見せ、手を引かれる様に入りこんだ。
全 . . . 本文を読む
満月の夜、家の周りでは猫の集会があっていた。
月に向かって「にゃぁ。」「にゃぁ。」とうるさい。その声に目覚め、夜の散歩に行くことにした。
外に出ると、夏の終わりの冷ややかな風が吹いていた。
近くのコンビニで、オレンジジュースを買って、飲みながらブラブラと歩いた。
山の側までやってきた。山の奥の方でボンヤリと明かりが見えた。
祭りでもあっているのだろうか。
ドンドンという音の方へと行く . . . 本文を読む
薄気味悪い月夜の晩。静寂の中に時々犬の鳴き声が聞こえてくる。
提灯のボンヤリとした薄暗い明かりと塀に埋め尽くされた黄色の菊の花。
そこはまるで異次元空間のように違う世界に思われた。
葬儀屋をして大分月日が経った。人の死に関わる仕事をして本望だ。
葬儀屋はけして笑ってはいけない。いつでも暗い顔で接していかないといけない。
例え、葬式の顔写真で禿げた人が写っていようが、唇が腫れていて、道端 . . . 本文を読む
私は、その女性を何度も見ている。
ある時はカフェで、ある時は橋の上で、またある時は、駅のホームで見つける。 私の幻影なのか、実物なのか分からない。もちろん名前も住所も分からない。そんな事お構いなしに君は素敵だった。
茶色のロングスカートをヒラヒラさせて、ジージャンを羽織っていた。カフェでは小さい本を読んでいた。時々涙ぐむ姿に私は好きになっていった。春風のように爽やかだった。
私が仕事に行く . . . 本文を読む
とても大きいしっかりとした木がポツンと真ん中にある。樹齢何年だろうか。千年くらい経っているのではないだろうか。
木を囲むように美しい湖があった。辺りは、薄い霧がモヤッとかかっていて、神秘的にボンヤリと輝いていた。
私がいつものように木にぶら下がっているブランコに乗っていると、白いドレスを着た小学生くらいの女の子がスキップしながら近寄ってきた。
まるで踊りを楽しむかのようだった。
「また、 . . . 本文を読む
君はいったい誰なんだ。いつも隣にいる君の顔が見えない。
毎日見る夢をただひたすら嘆いていた。子供の頃に出会った人なのか。近所の人なのか。理想の人なのか。毎日決まって同じ夢を見る。
その夢は、遊園地で楽しそうに二人で遊んでいる。
彼女の顔は見えない。いつも覗こうとするとそこで目が覚めてしまうのだ。
だから、彼女の顔を見ないように心がける。彼女との一時の時間を楽しみたいからだ。
コーヒーカ . . . 本文を読む
ある七月の暑い夜、星を囲むように月が輝いていた。真ん丸い大きな月を見ると大好きだった人のことを考えてしまう。
今頃、あの人は、どうしているだろう。
浴衣でも着て、花火でもしているのだろうか。
彼女の浴衣姿を想像しただけでも幸せになれる。
一緒に線香花火ができたらとても幸せだろう。
ジリジリと線香花火を見つめあう。息を止めて、落ちる瞬間までじっと見つめあう。
線香花火が落ちて微笑む、ふ . . . 本文を読む