悟と朋美はいい関係を続けて三年が経とうとしていた。
真夏の暑い午後、大事な話しがあると言って、朋美が悟を部屋に呼んだ。
部屋に入ると朋美はこの世の終りみたいな深刻な顔をしていた。
悟が「どうかしたのか。」と聞くと、「私、妊娠したの。」と言葉を探すように答えた。
悟は一時考えて、「俺、絶対朋美を幸せにするから生もうぜ。」と呟くと同時に朋美は泣き出した。
「実は悟の子供じゃないんだ。」部屋 . . . 本文を読む
勝ちと負け。富と貧。強と弱。陰と陽。月と太陽。プラスとマイナス。晴れと雨。そして男と女。
全ての出来事が反対で世の中うまい様に出来ている。
それが重なる時、どちらかが上にいこうとして争いが起きる。
新一と佳奈子は、大声を出して道路の真ん中で別れ話しをしていた。行き交う人々が何事かとおもい目を向けている。
言い争って大分時間が過ぎていた。何がきっかけだったのかは、真夏の暑さでとっくに忘れて . . . 本文を読む
拝 啓
これが最後の手紙です。
あなたが私の目の前からいなくなって大分時間が経ちました。
別れてから何度もあなたの事を考えていました。
これから先もあなたを好きな事には変わりありません。
何でこの手紙を書いたと思いますか。
私が結婚するからです。
自分にとってけじめをつけたかったからかもしれません。
この手紙を書いてどうなる事でもないかもしれません。
ただ私は文章としてあなたに . . . 本文を読む
学校が夏休みに入って何日か経ったある日、祖父と祖母と一緒に親戚の家に行く事になった。
初盆だからという事で、子供の私にはよく分からなかった。
電車を降りるとのどかな田園風景があり、草むらの香りが漂っていた。人もいなくて駅員さんがぽつんと一人駅の所に立っていた。
祖父が険しい顔をして「行くぞ。」と声をかけた。
久しぶりに兄を訪ねて行くので気合いが入っているみたいだった。私は、祖母の手を握り . . . 本文を読む