私の恋は幻だったのではないだろうか。
長い夢を見ていたんではないだろうか。
きっと長い長い夢を見ていたんだ。先生という職業も夢で、生徒との会話も夢だった。
初めから彼女は存在してなかったと思ったほうが楽になった。
心の病気で入院したNはどうなったのだろうか。妊娠した話しは嘘だったのか。本当なのか。私には考える余裕もなくなった。
私はNが心配で、何度携帯番号を押そうとしたか。自分の携帯を何 . . . 本文を読む
一年も経つのに、今でもNを好きな気持ちは変わらない。電話がかかってくるかなと思っていたら、電話がかかってきた。
「先生、妊娠した」悲しい声ともうれしい声とも聞こえて取れた。ただ、迷っているような声だった。私は何がなんだか分からず、無言のままずっと聞いていた。その時間は、十分、一時間、一年、十年くらい、時が止まってしまったかのように無言だった。
このまま、Nの声をじっと聞いていてあげたかった。 . . . 本文を読む
Nが転校して来てから、随分と時間が過ぎたような気がする。告白して、拒絶はされたものの、少しずつだが、私と話してくれるようになった。
Nが授業中、「先生、生きるって何?」小さいかすれた声で聞いてきた。いきなり何を言い出すのかと思ったが、彼氏のことや、家族のことを知っている私は答えたかった。
「今は、人生80年です。昔は50年でした。その中で、悲しいことや辛いことがたくさんあって、その中から、少 . . . 本文を読む