「課長まだ残ってるんですか?」
「ちょっと仕事が長引いてね。」
「今日はクリスマスイブですよ。早く帰らないと奥さんと子供が待ってるんじゃないですか?」
「そうだけど、なるべく早く帰ろうと思っているが、まだ終わるかどうか分からない。」
「ほどほどにして下さいね。お先失礼します。」派遣社員の薫から言われた。なぜか彼女はウキウキしていたが、今から彼氏とでも会うのだろうか。
派遣社員は早く帰れ . . . 本文を読む
ピーポー。ピーポー。頭の中で救急車のサイレンが鳴り響いている。信号機が赤でもお構い無しに夜の街を走っているようだ。
田川義三は工事現場で働いていた。
若い兄ちゃんがアルバイトで入って来て、一緒に飯を食べている時「おめぇ彼女でもいるんか。」と聞いた時からの記憶が無かった。
それから、なぜか河の辺に来ていた。
河の砦の所には大きな古い看板が立っていて、掟が書いてある。
「今から流れて来る舟 . . . 本文を読む
まったく何で俺がサンタクロースの恰好をしているんだ。男は、自分の姿を上から下まで見下ろして思った。こんな事なら、バーバリーのコートを持ってくればよかったと後悔した。
そもそものはじまりは、部屋の隣に住むかわい子ちゃんから、「あなたサンタクロースにならない?」なんて言われたからだ。
本当にする事ないだろうと嘆きつつ、子供達にプレゼントを配っていた。
プレゼントといっても小さな袋に詰めたお菓子 . . . 本文を読む
賑やかな繁華街を歩いていたら、彼女がショーウィンドウに映っていたサンタクロースの蝋人形を見て呟いた。
「私、サンタクロースが恐いの。」
「えっ。それは何でだい?」
「子供の頃、お父さんがお酒を飲んで家を出て行ったきり、帰って来なくなったの。その後、女の人から電話がかかって来て、父は帰らないと言ったわ。」
私たちの前を父と母と楽しげに歩いている子供がクリスマスソングを大声で歌っていた。
. . . 本文を読む
とある街角で佇む男。長身で黒いジャケットを羽織り、タバコを吹かす姿が夕日に溶け込んで、絵になっている。
今日はどのカワイ子ちゃんと遊ぼうかなと目を凝らして見ていた。
まるで獣。野良犬。蛇男。
いい男のはずなのに女達は見向きもしない。
きっと仕事や家庭に忙しいのだろう。
街行く人々は冬の空をただ風とともに通り過ぎて行くだけだった。
「今日は駄目だな。」と呟き、カフェテラスで一息つくこと . . . 本文を読む
夜空が綺麗で、寒さも本格的になり、街行く人は忙しそうに家に帰っていた。
近所では、トナカイ、サンタクロース、クリスマスツリーのイルミネーションが灯り始め、それを見ている子供たちは目を輝かせ、恋人たちは寄り添い合い、おもちゃ屋は賑やかに繁盛し、クリスマスという日を楽しんでいた。
周りを見渡すと、赤い格好をしたサンタクロースがたくさん街に出ている。
看板を持っているサンタ。ティッシュを配ってい . . . 本文を読む