今日は、仏の弁護士さんとの飲み会だ。六十歳で、貫禄十分のおじいさんだ。なぜ、仏なのかというと、いつもいい事をいい、お金払いがいい、人の気持ちもわかるのだ。
「今日は、みんなとの飲み会だから私のおごりです。」とあるフランス料理店で、ドンペリ約五万円くらいのを三本開けていた。それだけで、十五万だ。みんなで、五、六人来ていたので食事代も十万円は使っていただろう。全部、仏の弁護士さんのお金でおごっても . . . 本文を読む
広い道路の四つ角を曲がると信号機がある。信号機の真下にはセブンイレブンがある。
朝五時。あまり客は入っていない。
もうすぐ、一年間思いを寄せる彼女がやってくる。
新聞配達の人だ。彼女は、大きなヘルメットをかぶり、いつも走って新聞を持ってきてくれる。
大きな目が印象的で、口元は小さい。小さい口から「お疲れ様です」無邪気に声をかけてくれるのだ。
毎日、毎日、風の日も雨の日も雪の日も。カッパ . . . 本文を読む
キーンコーンカーンコーン。
僕が帰る時、下駄箱の中に一通の手紙が入っていた。兎の封筒で可愛らしかった。
なんだろうと思い、開けてみたらラブレターだった。
「今日の放課後、音楽室で待っています。ユキ。」
心臓がバクバクと破裂しそうになった。生まれて初めてラブレターをもらったので、どうしていいかわからなかった。行くしかないと思い、早速、音楽室のドアを開けた。
ユキがいた。窓から差し込む光で . . . 本文を読む
ある七月の暑い夜、星を囲むように月が輝いていた。真ん丸い大きな月を見ると大好きだった人のことを考えてしまう。
今頃、あの人は、どうしているだろう。
浴衣でも着て、花火でもしているのだろうか。
彼女の浴衣姿を想像しただけでも幸せになれる。
一緒に線香花火ができたらとても幸せだろう。
ジリジリと線香花火を見つめあう。息を止めて、落ちる瞬間までじっと見つめあう。
線香花火が落ちて微笑む、ふ . . . 本文を読む
私はデパートのエスカレーターの近くにある椅子に腰掛けていた。
隣には八十歳くらいのおじいさんが座っていた。杖をついて、髪の毛は真っ白だ。分厚い眼鏡もしていた。眉毛も白かった。あごひげも長かった。
まさしく山に住んでいる仙人のようだった。その仙人を何気なく見ていたら、杖をついて前かがみになった。ウトウトと眠りはじめたのだ。
私も仙人の魔術にかかったように眠くなって欠伸をした。
少し時間が経 . . . 本文を読む