伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

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ジャコシカ26、27

2018-04-09 23:45:28 | ジャコシカ・・・小説
 鉄さんは少こし慌て、吹いてきた鍋の蓋を取り、練り置いた団子をボールから箸でつまんで入

れ始めた。

 ラジオはいつの間にか民謡の歌番組に変わっている。

 津軽あいや節が流れ出すと、鉄さんは薄く眼を閉じてコップを空けた。

 高志も思わず鍋の手を止め、コップに手を伸ばした。

 それから二人はラジオに耳を傾けながら、黙々と食べそして飲んだ。


 食事が終ると鉄さんは土間から、テグスと釣りバリと幾枚もの笊(ざる)を運んできて、延縄の仕掛け作

りを始めた。

 高志は言われたとおり食事の後片付けをやり、それが済むと釣リバリの結び方を習い、自分も仕

掛け作りに加わった。

 陽はとっぷりと落ち、窓の外からは間断ない波の音が聴こえてくる。

 部屋の中ではストーブが燃え、電灯の明かりが隅々まで照らし、ラジオからは伸びやかな民謡の

声が流れてくる。

 「なかなか文明的な生活ではないか」

 高志は船酔いで朦朧とした眼で眺めた入江の、人跡断えた秘境かと疑うばかりの荒びた奇観の心

細さを忘れ、いつしかハリ結びに没頭していった。






 「栄子は頑張っているね。二人も子供を抱えて浮田の義父さん、お義母さんのお世話をして、

亭主の面倒を見て、その上農家の手伝いまでやらされているのだから、私やっぱり後悔してるわ。

 あの娘、街場で働いて、勤め人と結婚したいって言ってたのだから、早くに街に出して、そこで

良い人を探してやれば良かったんだ」

 妻のトキは忙しく台所と、卓袱台の間を往き来しながらも、口は止まらない。

 主の猛は「うん、うん」と生返事をしながら、一人で食事をしている。

 漁協に勤める今年21歳になる次女の清子は、既に出勤している。

 末娘の千恵はまだセーラー服姿で、居間と二階の自室の間をウロウロしている。

 四っ隣の町の高校に汽車通学をする、彼女のいつもの姿だ。

 年中あれを忘れた、これを遣り残したとか大声で騒いでいる。

 後継ぎの豊はまだ23歳だが、早くも一端の農家の男の顔になっていて、この時間には納屋で何

かしら作業をしている。

 冬でなければとうに畑に出て、一仕事片付けている。

 赤間家の朝は冬でも、騒々しくて忙しい。

 3人の子供達が出払ってから、ようやく猛とトキの落ち着いた時間がやってくる。

 とは言ってもそれは今暫く、農作業の無い冬場だけのことだ。

 それもいつもの冬なら、最後に卓袱台に残っているのはトキ一人だ。と言うのも猛は冬場は営林

署の伐採仕事で山暮らしになり、家を空けてしまうからだ。

 開拓3代目を迎えるこの辺りの農家は、田は狭く畑になる土地も少ない。

 どこも野菜だけでも、田だけでも成り立たない小規模経営だ。

 だから冬場は山仕事に出るところが多い。

 赤間猛も開拓3代目で、同じように冬場は例年山仕事をやってきた。

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一喜一憂

2018-04-09 12:20:30 | 自家菜園
 先日から少しずつブドウ棚の補修をしていた

 今日は私も脚立をおさえるお手伝い。

 ついでに

 玄関に避難させていた鉢たちを並べた

 その瞬間強風と淡雪が降ってきた。

 館山が不気味に唸っている・・・

 あぁ

 北国の春には一喜一憂です。


 


  




 
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