水揚げされた魚は既にセリにかけられ、搬出も終わっているようだ。
幾人かの母さんが寄って来て、高志に話しかける。
「あんた、良い処に潜り込んだね。当面飯と寝ぐらの心配はないね」
「あそこなら身を隠すには、もってこいだわ」」
「暫くはおとなしくしていて、時期を待ちなさい」
「僕は別に身を隠す必要はありません」
「いいって、誰もあんたを売ったりしないから」
「でも顔色が真青だよ」
高志は、母さん達の悪のりに、打つ手もなく苦笑いをするばかりだ。そこに鉄さんが事務所から
出て来て、ちょっとそんな母さん達を見ていたが、やがて無表情に言った。
「じゃ、連行する」
一瞬、母さん達が一斉に鉄さんを見た。
続いて哄笑が弾ける。
その後はてんでに勝手な言葉を投げ合う。
「浜の母さん達は、若い新顔をからかうのが好きなんだ」
言いながら鉄さんは高志の背を押して、陽気な彼女達の輪の中を潜り抜けた。
時刻はそろそろ昼時だった。
「何か食べてそれから少こし買い物をして、引き揚げよう」
二人は最寄りの食堂に入った。その後は雑貨店、食料品店を廻り、用意したリュックと手提げ袋
を満杯にして港に戻った。
食堂を出た後も買い物をしている時も、鉄さんはしきりに空模様を気にしていたが、不安は的中
した。
幾人かの母さんが寄って来て、高志に話しかける。
「あんた、良い処に潜り込んだね。当面飯と寝ぐらの心配はないね」
「あそこなら身を隠すには、もってこいだわ」」
「暫くはおとなしくしていて、時期を待ちなさい」
「僕は別に身を隠す必要はありません」
「いいって、誰もあんたを売ったりしないから」
「でも顔色が真青だよ」
高志は、母さん達の悪のりに、打つ手もなく苦笑いをするばかりだ。そこに鉄さんが事務所から
出て来て、ちょっとそんな母さん達を見ていたが、やがて無表情に言った。
「じゃ、連行する」
一瞬、母さん達が一斉に鉄さんを見た。
続いて哄笑が弾ける。
その後はてんでに勝手な言葉を投げ合う。
「浜の母さん達は、若い新顔をからかうのが好きなんだ」
言いながら鉄さんは高志の背を押して、陽気な彼女達の輪の中を潜り抜けた。
時刻はそろそろ昼時だった。
「何か食べてそれから少こし買い物をして、引き揚げよう」
二人は最寄りの食堂に入った。その後は雑貨店、食料品店を廻り、用意したリュックと手提げ袋
を満杯にして港に戻った。
食堂を出た後も買い物をしている時も、鉄さんはしきりに空模様を気にしていたが、不安は的中
した。