伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

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ジャコシカ35

2018-04-28 10:22:15 | ジャコシカ・・・小説
水揚げされた魚は既にセリにかけられ、搬出も終わっているようだ。

 幾人かの母さんが寄って来て、高志に話しかける。

 「あんた、良い処に潜り込んだね。当面飯と寝ぐらの心配はないね」

 「あそこなら身を隠すには、もってこいだわ」」

 「暫くはおとなしくしていて、時期を待ちなさい」

 「僕は別に身を隠す必要はありません」

 「いいって、誰もあんたを売ったりしないから」

 「でも顔色が真青だよ」

 高志は、母さん達の悪のりに、打つ手もなく苦笑いをするばかりだ。そこに鉄さんが事務所から

出て来て、ちょっとそんな母さん達を見ていたが、やがて無表情に言った。

 「じゃ、連行する」

 一瞬、母さん達が一斉に鉄さんを見た。

 続いて哄笑が弾ける。

 その後はてんでに勝手な言葉を投げ合う。

 「浜の母さん達は、若い新顔をからかうのが好きなんだ」

 言いながら鉄さんは高志の背を押して、陽気な彼女達の輪の中を潜り抜けた。

 時刻はそろそろ昼時だった。

 「何か食べてそれから少こし買い物をして、引き揚げよう」

 二人は最寄りの食堂に入った。その後は雑貨店、食料品店を廻り、用意したリュックと手提げ袋

を満杯にして港に戻った。

 食堂を出た後も買い物をしている時も、鉄さんはしきりに空模様を気にしていたが、不安は的中

した。

コメント
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