立場を変えて考えさせる
理解と協力の真理を利用した説得は失敗する確立がほとんどない。人間は他の人の立場を理解して協力しようと言う欲望が何よりも強いからだ。
相手に対して有利に立っていると考えている人であるほど「立場を代えて考えてくれ。」と言う要求に素直に説得されやすい。人間の天性がそれぐらい善いところがあるからだ。
相手を自分の立場に立たせるということは、心理的な役割を代えることに該当する。すなわち、自分ではない他の人に、自分自身の状況をより確実に理解させると共に、協力の美徳と言う自己献身を経験させるということだ。
会社の仕事で長期間、海外出張に行く人が必要な時に、よりによってあなたが着目されたと仮定しよう。
その仕事はあなたでなくてもできる仕事で、あなたは現在、年老いた母が病気で難しい状況に置かれている。それにあなたは一人息子だ。もちろん個人的な事情であり、やむなく出張に行かなければならないならば、どうすることもできず、あなたも行かなければならない。だが、あなたでなくても適任者がいくらでもいて、それにあなたの家庭に問題が生じているのだ。
「可能ならば海外出張を他の人にしてもらうことはできませんか。」
担当の部長に事情を話して了解を求めた。会社のことであり、個人の事情がどうであれ、国内の仕事であれば無条件に方針に従いうが、長期の海外出張はいずれにしても難しく、結局、仕事に忠実になることができないと、正直に自分の立場を話した。
部長は難色を示したままだ。
「さあ、まだ君以外には考えられる人がいないんだが。」
部長は、特別な理由もなくほかの人に代えようという考えがなかった。こういう時、部長をして、役割を代える自己献身の経験をさせる言葉の一言が、説得の成功の要因になることがある。
「難しいでしょうが部長が私の立場になってちょっと考えてみてください。」
だからと言って卑屈な態度をとることはない。話をする人の態度が、あまりにも気弱な印象を与えたり、へつらってぺこぺこする感じになると聞く人が疲れてしまう。
あなたは、今、理解と強力を求めているのであり、同情を誘発させるのではない。真摯に相手を説得するために、何より重要なことは、自己主張の正当性を行動で見せることを覚えておかなければならない。
※ 相手を自分の立場に立たせることは、心理的な役割交換に
該当する。すなわち、自分でない他の人に自分自身の状況を
より確実に理解することができるようにして、合わせて協力の美徳と言う
自己献身を経験させるということだ。