docomo・au・SoftBank3社の格安メニューは華々しく打ち上げたが
ドコモ、格安プラン「アハモ」好調の陰で迫る減収拡大
NTTドコモのオンライン申し込み専用プラン「ahamo(アハモ)」は3月26日にサービスを始めたが、その前に約254万件の事前エントリーが集まった。一時は顧客の自宅への端末配送が遅れ他社からの乗り換え受け付けを中断するほどだった。
ドコモがアハモをスタートさせた背景には、政府の携帯料金引き下げの要請に応えることに加え、他社よりも弱い20代など若年層を開拓する狙いがあった。つまり、念頭にあったのは「デジタルネーティブ世代」だ。
だからこそ、申し込みやサポートをオンラインに限定してコストを抑える仕組みにした。料金は月20GBのデータ通信と5分以内の通話料込みで2970円(税込み、以下同)とした。
しかし、ahamo推進室長の岡慎太郎氏によると「想定したターゲットではない、年齢層が高い既存の顧客からも割安な料金に注目が集まっている」という。契約が増えるのは当然歓迎だが、デジタルネーティブではない世代からの問い合わせが想定外に多かった。そこで急きょ、4月22日から店頭での申し込みの有料サポートを始めた。
「オンライン専用というアハモのコンセプトは変えない」(岡氏)ため、店舗スタッフは申し込みページの操作方法の説明など、顧客のサポートに徹する。20~30分ほどかかると想定されるサポートの対価は1回当たり3300円とした。
販売代理店の関係者は「ドコモからは当初、オンライン専用の新ブランドを立ち上げるが店頭での対応は不要と聞いていた。結局、店頭対応が必要になったのは想定外だった」と話す。
サポートはやらざるを得ない
ドコモは、有料サポートを使ったアハモへの加入は、ドコモ利用者が既存プランから移行してくるケースが多いとみている。高齢者が多いとみられる既存プラン「ギガライト」の場合、割引適用前の料金が1~7GBで3465~6765円。ここからアハモに切り替えられると減収要因になる。
ドコモはアハモの提供に伴って減収になることは認めている。野村証券の増野大作アナリストは、2022年3月期のアハモ契約数の前提を200万と置いて、450億円の減収になると想定してきた。ドコモによると足元の申し込みペースはその想定を大幅に上回っている。
さらに、増野氏の減収予想は、既存プランからの移行が7割、新規が3割という前提になっている。有料サポートの開始で既存プランからの移行が進めば進むほど、減収幅が拡大することになる。
MM総研(東京・港)の横田英明研究部長は「それでも利用者を他社に奪われるよりはまし。店頭サポートはやらざるを得ない」とみる。高齢者らにとって、KDDI「UQモバイル」の15GBで2728円のプランなど、魅力的な選択肢が増えているためだ。
契約者が増え、オンライン専用プランという建付けを“撤回”したドコモ。消費者にとっては助かる動きとなったが、ドコモの業績には不透明な要因が増えたと言えそうだ。
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