2025年の超高齢社会で求められる「看取り」とは? 藤和彦氏の著者インタビュー
2019.10.02(liverty web)
2025年、最も人口の多い「団塊の世代」が、75歳以上の後期高齢者になる。これにより後期高齢者の数が2179万人に上り、実に全人口の約18%を占めると予測されている。65~74歳の前期高齢者を含めると、人口の30%以上が高齢者になる。世界が体験したことのないレベルの超高齢社会だ。
そんな中、経済産業省が所管する独立行政法人「経済産業研究所」で上席研究員を務める藤和彦氏は、「死」とどう向き合うかが日本社会の最大のテーマになるとし、このほど『日本発 母性資本主義のすすめ 多死社会での「望ましい死に方」』を発刊した。
超高齢社会で問われる「死生観」について、著者に話を聞いた。
(聞き手 片岡眞有子)
経済産業研究所
上席研究員
藤 和彦
プロフィール
(ふじ・かずひこ)1960年生まれ。通商産業省(現経済産業省)入省後、エネルギー・中小企業政策などに携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』など。
『日本発 母性資本主義のすすめ:多死社会での「望ましい死に方」』
藤 和彦著
ミネルヴァ書房
──著書で、死にゆく人々への「看取り」がこれからますます重要になると指摘されています。
藤和彦氏(以下、藤): 高齢者がこれだけ増える中、「死」の問題をタブーにしたままでよいのかという疑問があります。私たちは、死についてもっと積極的に語り合い、「どうやって自分の人生を整理し、納得しながら死んでいくか」を考えるべきです。
今の日本では、「死は無価値だ」ということになっていますが、やはり「望ましい死に方」というのがあるのではないでしょうか。死が無価値であり続ければ、人の臨終に立ち会う介護などの仕事をしていても、死に向かっていく相手とどう触れ合えばいいのか分からず、仕事へのモチベーションも湧きづらいでしょう。「望ましい死に方」をサポートしてくれる産業が、日本で育つべきだと考えています。
死を価値づけし、望ましい死とは何かを示す。それができるのが宗教ではないですか?
「死生観」が醸成されなければ、死を価値づけすることはできません。「あの世はあるのか」「人は死んだら無になってしまうのか」。いまわの際にある人が求めているのは、こうした疑問への答えです。
米バージニア大学のイアン・スティーヴンソン博士は生前、「生まれ変わり」の研究を続け、前世の記憶を持つ子供たちの事例を検証しました。その研究結果は科学的な裏付けがなされ、それを見た懐疑派の人が「信じざるを得ない」と言ったほどです。こうしたエビデンスを示しながら、あの世の存在を伝える。それだけでも、安らかにあの世に旅立てるのではないかと思います。
特に、これから後期高齢者になっていく団塊の世代は、唯物論教育を受けた人が多いです。ですが、唯物論のまま死ねるほど、人は強くありません。「霊的なものは一切存在せず、人は死んだら無になる」。そう信じたまま死ねますか? 唯物論思想で生きた人ほど、あの世や生まれ変わりの真実を求めているはずです。
──幸福の科学グループとしても、宗教として、死後、一人でも多くの方に安らかな世界に還ってほしいと願っています。
藤: 幸福実現党のマニフェストは非常に包括的ですね。自民党と同じに見えます(笑)。もっとあの世とか生まれ変わりとか前面に押し出したらいかがですか? たとえば、「老後に2000万円なくても幸せに死ねる社会を」と政策で打ち出すとか。
──なるほど……。釈量子党首が街宣などであの世の存在について語ってはいますが、宗教政党だからこその強みをもっと訴える必要があるのかもしれません。
藤: 死への価値づけに加えて、死に携わる人々への正当な報酬も必要です。
介護など福祉に従事する方は年々増えていますが、福祉系の職業はあまり給料が高くありません。一方、いま全国で600人以上の「看取り士」が活躍していますが、ある程度の報酬をきちんといただけるようにしているようです。人の臨終を看取り、望ましい死に方をサポートするという行為を、社会として正当に評価すべきではないでしょうか。
看取り士の活動が全国展開できるようにするため、いま葬儀業界などにもアプローチをかけているところです。業界や宗派の垣根を超えて、死に向き合う風土をつくりたい。幸福の科学さんとも、一緒に連携してやっていければと思います。
看取りが「あの世への旅立ち」という通過儀礼になることで、「次の世のためにどのように生き、どのように死んでいけばいいのか」を考えることになり、高齢者も生きがいを取り戻せるはずです。
さらに、死が復活すれば、生も復活します。高齢者が死を明るく語るようになれば、若い人たちも将来に希望を持て、少子化問題の解決にもつながるんじゃないでしょうか。看取りが、この国のさまざまな問題を解決し得ると思います。
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2019年9月23日付本欄 秋の彼岸に考える、それでもお墓が必要な理由
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