英議会がEU離脱を否決 それでも諦めないジョンソン英首相
2019.10.20(liverty web)
《本記事のポイント》
- イギリス下院議会がEU離脱を否決
- EU離脱に必要な2つの承認
- それでもジョンソン首相はEU離脱を諦めない
イギリス下院議会が19日、ジョンソン英政権がEUと合意したEU離脱協定案を否決した。英議会が離脱協定案を否決したのは、これで4回目となる。
今回の否決に追い打ちをかけるように同日、「英国内で離脱関連法が成立するまで、EUとジョンソン政権が定めた離脱協定案の承認を保留する」という内容の動議が提出され、賛成多数で可決された。
それでも諦めないジョンソン首相
イギリスがEUから離脱するには、欧州議会と英議会の承認が必要になる。
もともとイギリスは、2016年6月に行われた国民投票の結果を受けて、EUからの離脱を決めた。その後テリーザ・メイ前英首相がEUと離脱協定案を取りまとめたものの、英議会は3回にわたって離脱協定案を否決。その後下院は、「合意なき離脱」も否決したため、離脱の期限を2019年10月31日に先延ばした。
しかし、後任として19年7月に首相に就任したのは、EU離脱を掲げるボリス・ジョンソン氏。ジョンソン氏は、離脱強硬派のリーダーとして、2016年の国民投票を牽引。一貫して、EU離脱を主張してきた。就任演説では、10月31日のEU離脱を明言している。
ただ、ジョンソン氏が「合意なき離脱」も辞さない姿勢を示していたことから、イギリスでは今年9月、「合意なき離脱」を避けるための法律が施行された。
これは、ジョンソン政権がEUと離脱協定案で合意しても、英議会の承認を得られず、さらに「合意なき離脱」の承認も得られない場合は、離脱期限を2020年1月31日まで延期することをEUへ要請するようジョンソン氏に義務づけるもの。
実際にジョンソン政権は今月17日、EUと新たに離脱協定案を取りまとめたが、残る英議会の承認を得ることができなかった。
ジョンソン氏は、離脱期限の延期を求める手紙をEUの議長へ送ったが、手紙に署名せず、「議会の手紙であり、自分の手紙ではない」と主張。あくまでも10月31日の離脱を目指しており、来週にも離脱に必要な法整備を進める意向を明らかにしている。
こうしたジョンソン氏の姿勢に対し、イギリスでは「合意なき離脱」への警戒が強まっている。中には、2回目の国民投票を求める声や、解散総選挙をささやく声もある。
サッチャーは自由からの繁栄を目指した
英議会が審議をした19日は土曜日。週末に英議会の審議が開かれたのは、1982年のフォークランド紛争以来、37年ぶりのことだという。
37年前に首相を務めていたマーガレット・サッチャー氏は生前、ヨーロッパが経済共同体をつくることに懐疑的だった。大川隆法・幸福の科学総裁が2013年4月、死後間もないサッチャー氏を招霊すると、サッチャー氏はイギリスについてこう語っていた。
「『小さな政府』が望ましいと思います。政府は、産業の民営化を支援するだけでよいのです。民間企業の発展を阻害するような法律があまりにも多いので、民間企業を自由にし、繁栄を勝ち取るべく自らの力で戦えるように育成することです。私たちが民間企業から求められた力は、『いかに時代遅れの法律を廃止して、一般の人々からエネルギーを引き出すか』ということだけです。ですから、それは、もちろん思想の問題であると思います」
(『サッチャーのスピリチュアル・メッセージ』大川隆法著)
サッチャー氏は新自由主義に基づき、国有企業の民営化や規制緩和、所得税・法人税の減税などを通して「自由からの繁栄」を目指した。こうした一連の改革は、「サッチャリズム」と呼ばれたが、既得権益にメスを入れたこの改革には反発も大きく、批判も多かった。
こうしたサッチャー氏の姿は、ジョンソン氏が直面している状況と奇しくも重なる部分があるかもしれない。EUが定める細かい規制から解放されれば、イギリスは自由に経済活動ができるようになる反面、これまでEUの規制によって"守られてきた"産業は、自分たちの力で戦うという変革を迫られるからだ。
それでもジョンソン氏が「合意なき離脱」も辞さない覚悟を示してまでEU離脱を進めるのは、イギリスの自由と繁栄、誇りを取り戻すことを誰よりも真剣に目指しているからかもしれない。
(飯田知世)
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