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シリアからの米軍撤退直後にトルコがクルドを攻撃 トランプ大統領の判断は正しかったのか

2019年10月12日 06時20分22秒 | 日記

シリアからの米軍撤退直後にトルコがクルドを攻撃 トランプ大統領の判断は正しかったのか

 

シリアからの米軍撤退直後にトルコがクルドを攻撃 トランプ大統領の判断は正しかったのか

 

 

《本記事のポイント》

  • 米軍撤退後、トルコのエルドアン政権はクルド人武装勢力を掃討し始めた
  • アメリカはイスラム国掃討の盟友であるクルド人を裏切るのか
  • イスラム国の戦闘員の捕虜が世界にばらまかれる可能性も

 

トルコ軍が9日からシリア北部で少数民族クルド人の武装組織「人民防衛隊(YPG)」の掃討を始めた。トランプ米大統領がシリアからの米軍撤退を決めた直後のことだ。

 

トランプ氏は6日、米軍を撤退させ、この地域をトルコ軍に任せる決断をした。これによってトルコは、シリア領土内のクルド人部隊に攻撃が可能となった。

 

トルコのエルドアン政権は先月、シリア北東部にシリア難民100万人を居住させる「安全保障地帯構想」を発表している。ここに居住区を作り、トルコ軍の管理下で学校を建設し、トルコ国内にいるシリア難民の移住を考えている。

 

だがシリア北部の「安全保障地帯」は、2011年以降のシリアの内戦で、支配地を広げたクルド人勢力の居住地と重なる。

 

つまり「安全地帯構想」というのは一つの口実で、エルドアン政権は、この居住地にいるYPGに打撃を与え、さらにその地に暮らす強制移住をするというのが、もともとの狙いである。

 

YPGはトルコ領土内のクルド人勢力「クルド労働者党(PKK)」と関係している。トルコ政府はPKKをテロ組織とみなしているため、YPGを追い出すことが、トルコにとって安全保障上、理にかなってはいる。

 

 

「イスラム国」掃討に協力したクルド人部隊を裏切るのか

だがアメリカがイスラム国を掃討する際に、地上軍で唯一信頼できる兵力として選んだのがYPGだ。空爆だけでは戦争は終結しないため、地上のクルド人部隊の協力なくして、アメリカはイスラム国を掃討することはできなかった。

 

トランプ政権はイスラム国掃討に「成功した」ので、シリアから撤退したい。だがその外交上の手柄は、協力者であったクルド人部隊に対するトルコの攻撃を容認し、YPGを裏切る形での撤退となった。このためトランプ氏に与野党から批判が噴出した。

 

共和党のチェイニー下院議員は「トランプ氏がなぜ米国の盟友が虐殺されるのを放置するのか理解できない」と述べている。

 

対応に追われ、トランプ氏は、「攻撃は支持していない」「トルコがクルド人勢力の掃討に踏み切れば、トルコ経済を壊滅させる」と言わざるを得なくなった。

 

 

トルコとサウジアラビアの件で、裏取引があったのか

2018年12月24日の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、アメリカとトルコとの間で話し合いが行われ、米軍が撤退した後の、権力の空白地帯にトルコ軍が入り、地域安定化のために米軍の肩代わりをすることが決められたという。

 

そうなればトルコの矛先は、自国の敵のYPGの掃討に向くことは明らかだ。そのような「お墨付き」を与えたトランプ政権と、エルドアン政府との間に何らかの取引があったのではないかとの疑念もある。

 

サウジアラビア政府を批判してきたジャーナリストのカショギ氏が1年前、トルコのサウジアラビア領事館で拘束し殺害された。その事件の真相を伝える音声をエルドアン大統領が所有している。それを暴露されるのは、中東の安定のためにサウジアラビアと深い同盟関係にあるトランプ政権にとって都合が悪い。このため音声を公開しないことを条件に、トルコ政府に攻撃容認を与えたという疑惑がある。

 

この疑惑が本当かどうかは定かではないが、さも本当だと思えてくるほど、シリア北部からの米軍の撤退は、トルコにとっては「おいしい話」となっている。

 

 

イスラム国の戦闘員らが解き放たれる可能性も

盟友の虐殺とともに問題なのが、捕虜となっているイスラム国の戦闘員がどうなるのかという点だ。

 

これまで、誰も引き受けたがらないイスラム国の戦闘員の捕虜をクルド人部隊が管理してきた。

 

現在シリア北東部のアル・ホールキャンプには、1万1千人のISの戦闘員が捕虜となっており、6万人以上の市民が避難民となっている。

 

彼らの管理がうまく引き継がれなければ、イスラム国の戦闘員が世界に拡散し、イスラム国が復活する可能性がある。すでにトルコ軍の侵攻と同時に一部の収容者がテントに放火して脱走を試みている。

 

トランプ氏は、「クルドは第二次世界大戦でアメリカを助けたわけではない。ノルマンディーも協力していない」と突き放すが、もう一度中東にイスラム国が復活したとき、二度とクルド人は助けてくれないだろう。

 

 

プランなき撤退より100年後の植福を

トランプ大統領は、イスラム国掃討という手柄を強調するが、中東と簡単に手を切れると思っているとしたら間違いだ。

 

一方、中東の大国イランへは最大限の圧力をかけ、第二次大戦前の日本に対して行われたABCD包囲網にも比肩されるような経済的圧力をかけている。

 

その結果、イランを屈服させたいのかもしれないが、シリアからの撤退の仕方を見れば、屈服させた後の未来を描いているのか、疑念が頭をもたげてくる。

 

長期的なプランがない場合、今回のシリアのケースと同様、難民問題や過激派の台頭を招く。難民が欧州に流れ込めば、欧州に極右政党が台頭し、安全保障の問題はアメリカに跳ね返ってくることもあり得る。

 

自由な政治体制を創設するには、啓蒙されたリーダー層を創るための粘り強い教育が必要だ。それは100年後に開花する「植福」にあたる。

 

アメリカは、独裁者さえ倒せばよくなると思っているようだが、イラク戦争後、治安が安定しないのを見れば、実験済みの間違った手法だと言える。ビジョンなき撤退は禍根を残すだろう。

(長華子)

 

【関連記事】

2019年10月10日付本欄 トルコがクルド勢力を攻撃 中東情勢は「対岸の火事」ではない 【これだけ知っトクNews(10月10日版)】

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2019年8月5日付本欄 トルコがロシア製S400を導入し揺れるNATO 軍事増強の本当の目的は?

https://the-liberty.com/article.php?item_id=16109

 

2019年2月23日付本欄 米軍が一転してシリア残留決定 ISの再拡大やクルド人勢力への攻撃などを懸念か

https://the-liberty.com/article.php?item_id=15462

 

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