いよいよ、コロナウイルス蔓延対策として、緊急事態宣言が出されることになった。
この宣言は今の事態への対処療法だ。この処方により、今の事態が快方に向かう事が期待される。しかし、この処方はあくまでも応急処置である。
コロナショックにより、分断されたサプライチェーンが以前のように回復し、経済活動が2019年秋ごろのレベルに戻るのにはいばらの道を通らなければならないだろう。
コロナショックは突然に襲ってきた災禍だが、以前にもこのようなショックが全世界を覆った事があった。覚えている方もあろう。リーマンショックである。
リーマンショックとは2008年終盤に大手投資銀行のリーマン・ブラザーズの倒産による高い信用力を持っていたAIG、ファニーメイやフレディマックが国有化される事態にまで至った金融危機である。 この事態の引き金はサブプライムローンの不良債権化であった。
サブプライムローン問題とは、当時のアメリカでの旺盛な住宅需要を背景に住宅ローンの過度の貸し出しが破綻した事であった。このローンの特徴は次のように言える。サブプライムローンは通常の住宅ローンの審査には通らないような信用度の低い人向けのローンであった。これにより従来ならば返済がおぼつかない人までがこのローン制度に飛びついた。その結果はどうであったろうか。経済のほんの少しの停滞がローンの返済に支障を生み出した。支払い不能者の続出により、このローン制度はあえなく沈没してしまった。そして挙句の果てが、全世界的な金融不安をもたらした。
私たちはこのサブプライムローン問題から、教訓として何を学べるだろうか。
住宅ローンなどの長期の返済は経済がそのまま大きく変化しないという事を前提としている。しかし、10年~20年も社会情勢が変化しないなどと誰が言えるだろうか。
そのローン制度は経済は発展してゆくものだと考える「増大モデル」という幻影を追っていたといえる。
さて、今のコロナショックは世界経済に大きな影響を与えるだろう。その一つは消費マインドの変化があるだろう。我が国のインバウンド需要に支えられた産業分野では、旅館やバス会社の倒産が発生する。
いま、この産業分野に支援の手を差し伸べても、それまでのビジネスモデルに留まっている限りではそれは一時しのぎにもならない。この先、インバウンド需要が過去の旺盛なレベルまで回復することは難しいだろう。インバウンド需要を喚起する為に政府は多くのそのための施策を応援してきたが、他人の懐を当てにした思惑は、今再検討を迫られている。観光立国のヨーロッパ諸国はこの先、どんな生きる道があるのだろう。我が国もその例外ではない。
「人の懐」を当てにしないだけではなく「自分の懐具合」も当てにはできない現状では「お金が回らなければ経済は回らない」とわかっていても、消費マインドは冷え込むことが予想できる。
「増大・発展モデル」からしばらくは離れて、身の丈に合った「縮小・退歩モデル」を考えておくことも無駄ではないと思われる次第である。
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