英語と他の言語(8)から続く。
4)文体(Style of Language)
文体には「だ・である調」と「です・ます調」がある。ビジネス文書では、「である調」が一般的であるが、「です調」や「ます調」でも問題はない。しかし、「である調」と「ます調」など、文体の混交は避けるべきである。
英語では「だ・である調」や「です・ます調」に該当する文体はない。手紙やビジネス文書や論文は、日本の学校で教わる普通の文体で書けばよい。しかし、使い古された表現や話し言葉のような文章は良くない。何よりも、自分の言葉(Original Thought)が大切だと教えられた。これは、日本語の作文でも同じである。
文体とは直接の関係はないが、日本語の敬語・謙譲語・丁寧語は難しい。また、人称代名詞の使い方も複雑である。しかも、人代名詞の主語を省くので文章が曖昧になる。何事も曖昧に、丸く収めるのが日本流かも知れないが、主語のない文章は外国語への翻訳が難しい。
5)内容(Content)
すでにこのブログのあちこちで触れたが、ここに作文やビジネス文書に当てはまるルールを再整理する。なお、このルールは日本語と英語に共通である。
◇パラグラフ
作文は幾つかのパラグラフ(段落)から成り立っている。それぞれのパラグラフは、一つの主題文(Topic Sentence)と幾つかの支持文(Supporting Sentence)から成り立っている。しかし、主題文だけで、支持文がないパラグラフもある。
◇主題文と支持文
主題文は、そのパラグラフの主題となる文章である。一つのパラグラフには、主題文は一つだけである。
支持文は、主題文の内容をサポート(支持、支援、裏付け、説明など)する文章である。支持文と主題文の順序は自由である。
◇率直な表現
主題文と支持文は、それぞれ「。(句点)」で終わる文章である。平易で分かり易い文章を心掛ける。つまり、Straightforward(真っすぐな、率直な、複雑でない、簡単な)で、Ambiguous(曖昧な、両義にとれる、多義の)言葉使いを避ける。StraightforwardでUnambiguousな表現は、日本の流儀に反するかも知れないが、ビジネスでは必要と割り切る。
◇短文
文章はできるだけ短くする。説明の重複や無駄な美辞麗句、不必要な丁寧語・敬語は排除する。古今東西、短文の名文は多い。
繰り返しになるが、アメリカでは32語以上の長文はダメと教えられた。日本語では、筆者の独断であるが、80文字以上の長文を書かないように注意している。
ここで、パラグラフの中身を例文で説明する。
【例1:三段論法を説明する1つのパラグラフ】
三段論法は、大前提と小前提と結論から成り立つ。たとえば、すべての政治家はウソつきである(大前提)。すべての首相は政治家である(小前提)。すべての首相はウソつきである(結論)といった論法である。ただし、三段論法の大前提と小前提の真偽を確かめないと結論を誤る。
解説:
上の文章は一つのパラグラフである。その中身は、1つの主題文と4つの支持文から成り立っている。
主題文=三段論法は、大前提と小前提と結論から成り立つ。
支持文1=たとえば、すべての政治家はウソつきである(大前提)。
支持文2=すべての首相は政治家である(小前提)。
支持文3=すべての首相はウソつきである(結論)といった論法である。
支持文4=ただし、三段論法の大前提と小前提の真偽を確かめないと結論を誤る。
【例2:三段論法を説明する3つのパラグラフ】
パラグラフ1=大前提を説明する1つの主題文+いくつかの支持文
パラグラフ2=小前提を説明する1つの主題文+いくつかの支持文
パラグラフ3=結論を説明する1つの主題文+いくつかの支持文
パラグラフ1~3の具体例は、長くなるのでここでは省略する。もし、支持文をさらに詳しく説明したいときは、支持文を主題文とするパラグラフを加えて説明する。
最後に、オー・ヘンリー(O. Henry:1862-1910)の短編小説"The Last Leaf"(最後の一葉、1907年)からパラグラフを引用して、主題文と支持文の関係を説明する。
【例3:The Last Leaf】
背景:
安い家賃(Low Rents)を求めて芸術家たちが集まるNYのグリニッジ・ビレッジの物語
登場人物
スーとジョンシー:
彼女たちは画家の卵で共同アトリエに住んでいる。二人の芸術、食べ物、着るものの趣味がso congenial that the joint studio resulted.
ジョンシーは重い肺炎にかかり、スーが看病している。ジョンシーは、窓の向かいのツタの葉がすべて散るときに自分も死ぬと決め込み、残りの葉の数を逆算している。The lonesomest thing in all the world is a soul when it is making ready to go on its mysterious, far journey.(世の中で最も寂しいものは、あの世に旅立つ準備を始めた心である。)
ベールマン:
40年も絵筆を振るうが、未だに傑作を描けない酒好きのドイツ系老画家。プロのモデルを雇えない若い芸術家から僅かなモデル料を得て家賃が安い地階で暮らしている。
パラグラフの引用:
・・・(前のパラグラフ)・・・.
She arranged her board and began a pen-and-ink drawing to illustrate a magazine story. Young artists must pave their way to Art by drawing pictures for magazine stories that young authors write to pave their way to Literature.
・・・(次のパラグラフ)・・・
解説:
主題文=She arranged ・・・ a magazine story. (She=Sue、看病の合間に挿絵の仕事を始めた。)
支持文=Young artists ・・・way to Literature. (SueはYoung artistsの一人)
支持文は、芸術や文学の極致を目指して修業する芸術家や作家の卵の生活を上手く表現している。画家と作家の関係を関係代名詞(that)で効率よく24語の一文に収めている。
・・・(前のパラグラフ)・・・.
The ivy leaf was still there.
・・・(次のパラグラフ)・・・
解説:
主題文=The ivy ・・・still there.
支持文=なし。主題文だけで改行して、次のパラグラフに移る。文章が1つだけのパラグラフは、読者に強い印象を与える。
ツタの最後の一葉は風雨に耐えてあの場所に残っていた。それもその筈、あの一葉は、夜の内にベールマンが建物の壁に描いたものだった。
ジョンシーは、いつまでも散らない最後の一葉に勇気付けられて肺炎が快方に向かった。他方、夜の冷たい風雨に打たれたベールマンは、急性肺炎で2日後に息を引きとった。ジョンシーに生きる気力を与えたあの壁のツタの葉は、彼の傑作(Masterpiece)だった。
次回は、言語教育の在り方に続く。