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グローバル化への準備---英語と他の言語(11):数学と英語教育

2013-04-10 | ビジネスの世界
英語と他の言語(10)から続く。

2)世界共通の理論と言語
このブログの2013-01-25で、『国語=文学、という不思議』を紹介した(参照:「横書き文章読本」高橋昭男著、日経BP出版センター、1994年)。確かに、高校や大学の国語では日本文学、英語やフランス語では英米や仏文学の授業が中心だった。また、高校では論理的な日本語や英語の作文方法を学んだ記憶がない。

高校などで、アメリカの作家の作品を学ぶとき、その教材には日本語と英語の語学的な違いと学習者(日本人)と作家(アメリカ人)の考え方の違いが含まれている。それらは裏腹の関係にあり、語学的な違いと考え方の違いのどちらが、英語を難しくしているのかが分らなかった。その結果、日本語にない表現や言いまわしを丸暗記することになった。

このような混乱を避けるために、筆者はかねてから、易しい数学の教科書で英語を学ぶ方が効果的だと考えている。たとえば、数学の教科書(英語)で英語を学ぶことを考える。

初歩的な数学は世界の常識、その考え方やルールは日本人やアメリカ人に共通である。したがって、日本人とアメリカ人の考え方の違いは大まかに相殺され、英語の教材には日本語と英語の言語上の違いが浮き彫りになってくる。その違いをよく理解すれば、英語という言語がよく分かる。

下の図は簡単な一次関数と二次関数である。式(1)は直線、式(2)は二次曲線である。これらの数式は日米共通であるが、日本語と英語の読み方には違いがある。(以下、“読み方”または“言い方”をまとめて簡単に“読み方”という。)

          一次式の例
          
式(1)の読み方:
日本語=ワイ は に(2)エックス マイナス さん(3) に等しい。
 また、上の日本語を、“ワイ イコール にエックス マイナス さん”と読むこともできる。
英 語=Y equals two times x minus three.
 また、上の英語の"equals"の代わりに"is equal to"と読むこともできる。

          二次関数の例
          
式(2)の読み方:
日本語=エフエックス は エイエックス2乗 プラス ビーエックス プラス シー に等しい。
英 語=F of x equals a times x squared plus b times x plus c.

また、"f(x)"を"Function of x"(xの関数)と丁寧に読む人もいるが、一般に、"f of x" と読む。もし、s(x)でsがxの関数であれば、"function, s of x"と読む。また、"x squared"の代わりに"x to the second power"と読む人もいる。

ついでながら、数式でよく見かける下の図のような文字は、左から順に次のように読む。

          簡略化した読み方の例
          
日本語=ビー分のエイ、エイアイ(ai)、エイアイ(ai)・・・下付きと上付きの添え字は、一般に区別しない。
英語=a over b (エイオーバービー)、a sub i (エイサブアイ)、a super i (エイスーパーアイ) ・・・"a over b"の代わりに"a divided by b"でも良い、sub(サブ)はsubscript(サブスクリプト)の略、super(スーパー)はsuperscript(スーパースクリプト)の略、通常は、subとsuperのように略語で読む。

上の式(1)と(2)ともに、日本語と英語の読み方に多少の違いがあるが、文章の構造はほぼ同じである。その理由は、数学の記号(文字)と数式の書き方(一種の文法)は、日本語と英語の文法より優先するからである。その結果、式(1)と(2)の日本語と英語の読み方の違いは、主に両国語の言語上の違いといえる。

また、式(1)と(2)を生成するときには、言いたいことを一度日本語で考えるというステップを踏まず、いきなり数学の共通語(英語)で数式を書き始める。ただし、昔は日本語と数学の共通語にギャップがあったので、たぶん漱石の「坊ちゃん」や「山嵐」は、幾何学の式ではまず正弦や余弦を頭に浮かべて、次にこれらの単語をSineやCosineに変換して、黒板にSin θとかCos θと書いていたと思う。しかし、今では正弦や余弦は死語に近いので、いきなりSineとCosineという言葉を書き始める。

さらに、式(1)のxは独立変数、yは従属変数、aとbは定数と日本人もアメリカ人も認識する。しかし、言語の上では、独立変数:independent variable、従属変数:dependent variable、定数:constantの違いになる。これらの違いは、日本語と英語の直訳で片付く問題であり、厄介な意訳をするまでもない。

以上のとおり数式の生成では、日米の発想に大きな違いはないといったが、風俗習慣に起因する違いもあると断っておく。たとえば、ものの数を数えるとき、日本では正の字を使い、欧米やタイでは、下の図の下段のようにスラッシュ(/)を並べて数える。

          カウントの違い
         

ここで言いたいことは、英語教育では文学作品やエッセイだけでなく、初歩的な数学も教えることを提案する。それは単に数学と英語の力を付けるにとどまらず、英語で論理を組み立てる訓練にもなる。

この項は、次回の英語と他の言語(12)に続く。

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