先に標記につき、意見を申し述べさせていただきましたが、末尾に述べさせていただいた、「イギリス解体、EU崩壊、ロシア台頭 EU離脱の深層を読む」(PHP新書、岡部伸著)について、前回、私は一面的な見解を記した、と思われましたので、このたびその部分を訂正させていただきます。
岡部さんの立ち位置とすれば、産経新聞のロンドン支局長として、イギリスにあり、このたびのEU離脱(Brexit)を契機に、UK(ユナイテッド・キングダム・オブ・グレートブリテン・アンド・ノースアイルランド)(正式名称、以下「英国」と呼びます。)と、EUとの国際関係、EU各国の思惑、大国、米、ロ、中の思惑、その働きかけについて、英国にいるジャーナリストとして観察と分析を行うところにあったようです。
このたび、読みとおさせていただきましたが、それこそ、先に、英国が、EU加入存続について、「国民直接投票」というあたかも地獄の釜のふたを開けるような賭けに出ました。その結果(EU離脱)を受け、スコットランド、北アイルランド(アイルランドも含めて)などにおいて、あたかもユナイテッドのくびきを外されたように、歴史的にも、経済的にも、連合以前の民族国家としての直接利害を求める連合以前の国民(?) の思惑により、英国傘下の各連合国家で一斉に分離、独立の意欲が再燃焼し始めたこと、ましてはロンドン市の独立 (?) すら論議され始めていることなど、私には大変興味深い話でした。
伝統ある議会制民主主義の「先進地」で、新しい英国首相は、少なくとも日本国の大多数の政治家に比し、明らかに優秀で手堅いように思われますが、EU世界でのグローバリズムの幻想(虚妄)のもとで、国民国家を軽視したことにより一挙に噴出した大問題に際しやはり無力であり、私たちが承知おいているだけでも、英国民が過去に流血と戦いによって選び取った筈の「国民国家」<連合>の歴史が求心力を失ってしまうかもしれないという現実を視て、このたび、改めて、グローバリズムという社会の混乱と伝統の破壊、紛争しかもたらさないようなイデオロギーの大罪を苦く深く感じるところです。
メイ新首相による、親中共の有力閣僚(オズボーン前財務相)の更迭、英国内部の各国の連合の強化努力など、英国の「国民国家」のたがをしめなおす努力も、なかなかうまくいかないようです。
国民への求心力の復活のために、日本国の「天皇制」のように、先頃からの夜郎自大な中共政府高官の国家の品格を汚すような外交行為に、苦言を呈されたという、英女王など毅然たる英国王室が今後登場し、国民統合の象徴として、よりよく機能するわけにはいかないのでしょうかね。
本書でも、アメリカでの、米国民の期待した民主党のオバマ首相の改革の失敗と分析、親中共が予測されるクリントン民主党大統領候補の動向など、きちんと観察してあります。
そのうえで、①英国のように日本国は階級社会ではない、②日本国での資本家、労働者の対立は激しいものではない、②福利厚生も高く、地域コミュニティも残っている、③欧米ほどの賃金格差もない、日本の情況の利点を指摘します(いずれにせよ、安倍政権の経済政策を私たちが常に監視しておかなければ、いずれ全部反目に振られるかもしれない、というわけですが。)。
日本国民は、「「移民問題」やグローバル化に伴う格差問題を真剣に議論する心構えが整っていない」という指摘や、「統合の理想主義よりも現実主義を優先させた英国の決断は少なからぬ教訓になる」という指摘も得心が行きます。また、ほかの方々の指摘もあったように、島国国家で、中国・ロシアなど大陸の少なからぬ大国の影響下にある地勢的な状況下で、親米路線もほころびつつある中で、(伝統ある国民国家として)、日本国の世界外交として新たな日英同盟(同時に英連邦の尊重)の締結も可能ではないか、という著者の問題意識と論理は納得できます。
しかしながら、私には今世紀の最大の迷妄と思われる、グローバリズムにより引き起こされた災厄と、EUの不安定化、各国民国家の大多数の国民たちのグローバリズムへの幻滅と怒り、それにも拘わらず、あくなき利害を求める国境を超えた金融資本などの害悪(不道徳性)への告発や指弾が、前に挙げた藤井厳喜氏の著書(「国家」の逆襲(著者藤井厳喜))に比べて、今一つ不徹底(彼はグローバリズムというイデオロギーは終焉した(歴史的に破たんした)と書いていましたが、私もそのとおりだと思いました。)なのは、不満なところでした。
岡部さんの立ち位置とすれば、産経新聞のロンドン支局長として、イギリスにあり、このたびのEU離脱(Brexit)を契機に、UK(ユナイテッド・キングダム・オブ・グレートブリテン・アンド・ノースアイルランド)(正式名称、以下「英国」と呼びます。)と、EUとの国際関係、EU各国の思惑、大国、米、ロ、中の思惑、その働きかけについて、英国にいるジャーナリストとして観察と分析を行うところにあったようです。
このたび、読みとおさせていただきましたが、それこそ、先に、英国が、EU加入存続について、「国民直接投票」というあたかも地獄の釜のふたを開けるような賭けに出ました。その結果(EU離脱)を受け、スコットランド、北アイルランド(アイルランドも含めて)などにおいて、あたかもユナイテッドのくびきを外されたように、歴史的にも、経済的にも、連合以前の民族国家としての直接利害を求める連合以前の国民(?) の思惑により、英国傘下の各連合国家で一斉に分離、独立の意欲が再燃焼し始めたこと、ましてはロンドン市の独立 (?) すら論議され始めていることなど、私には大変興味深い話でした。
伝統ある議会制民主主義の「先進地」で、新しい英国首相は、少なくとも日本国の大多数の政治家に比し、明らかに優秀で手堅いように思われますが、EU世界でのグローバリズムの幻想(虚妄)のもとで、国民国家を軽視したことにより一挙に噴出した大問題に際しやはり無力であり、私たちが承知おいているだけでも、英国民が過去に流血と戦いによって選び取った筈の「国民国家」<連合>の歴史が求心力を失ってしまうかもしれないという現実を視て、このたび、改めて、グローバリズムという社会の混乱と伝統の破壊、紛争しかもたらさないようなイデオロギーの大罪を苦く深く感じるところです。
メイ新首相による、親中共の有力閣僚(オズボーン前財務相)の更迭、英国内部の各国の連合の強化努力など、英国の「国民国家」のたがをしめなおす努力も、なかなかうまくいかないようです。
国民への求心力の復活のために、日本国の「天皇制」のように、先頃からの夜郎自大な中共政府高官の国家の品格を汚すような外交行為に、苦言を呈されたという、英女王など毅然たる英国王室が今後登場し、国民統合の象徴として、よりよく機能するわけにはいかないのでしょうかね。
本書でも、アメリカでの、米国民の期待した民主党のオバマ首相の改革の失敗と分析、親中共が予測されるクリントン民主党大統領候補の動向など、きちんと観察してあります。
そのうえで、①英国のように日本国は階級社会ではない、②日本国での資本家、労働者の対立は激しいものではない、②福利厚生も高く、地域コミュニティも残っている、③欧米ほどの賃金格差もない、日本の情況の利点を指摘します(いずれにせよ、安倍政権の経済政策を私たちが常に監視しておかなければ、いずれ全部反目に振られるかもしれない、というわけですが。)。
日本国民は、「「移民問題」やグローバル化に伴う格差問題を真剣に議論する心構えが整っていない」という指摘や、「統合の理想主義よりも現実主義を優先させた英国の決断は少なからぬ教訓になる」という指摘も得心が行きます。また、ほかの方々の指摘もあったように、島国国家で、中国・ロシアなど大陸の少なからぬ大国の影響下にある地勢的な状況下で、親米路線もほころびつつある中で、(伝統ある国民国家として)、日本国の世界外交として新たな日英同盟(同時に英連邦の尊重)の締結も可能ではないか、という著者の問題意識と論理は納得できます。
しかしながら、私には今世紀の最大の迷妄と思われる、グローバリズムにより引き起こされた災厄と、EUの不安定化、各国民国家の大多数の国民たちのグローバリズムへの幻滅と怒り、それにも拘わらず、あくなき利害を求める国境を超えた金融資本などの害悪(不道徳性)への告発や指弾が、前に挙げた藤井厳喜氏の著書(「国家」の逆襲(著者藤井厳喜))に比べて、今一つ不徹底(彼はグローバリズムというイデオロギーは終焉した(歴史的に破たんした)と書いていましたが、私もそのとおりだと思いました。)なのは、不満なところでした。