こ も れ び の 里

長崎県鹿町町、真言宗智山派、潮音院のブログです。平戸瀬戸を眼下に望む、人里離れた山寺です。

憂愁な坊主

2006年09月28日 | つれづれ
お寺の鐘を、ヘリコプターで
高さ100メートルの上空までつり上げ、
地面に惹かれた鉄板めがけて切り落とす。

落ちた瞬間に鳴り響く鐘の音が、
果たして何メートル先まで聞き取ることができるのか?
という「トリビアの泉」での実験番組。

このTV番組は、子どもたちも好んで視聴する、
所謂親の視聴許可済みの番組だ。
残念ながら、ネタが燃え尽き果ててしまい、
来年までお休みするらしい。
そこで最終の放送になったその締めくくりがこの実験。

某寺院で使用しなくなった鐘を、
そこの住職が魂抜きの作法をして、
ただの鉄の塊にして実験開始、という。

・・・?????

お寺の梵鐘は、匠の伝統を代々引き継いだ専門の職人(匠)が、
たいへんな時間をかけて精魂込めて丁寧に造りあげていく。

お寺が梵鐘を供えるときには、
お檀家や信者さんが、
それぞれの思いを込めた多額の寄付をして
初めて整備される。

そして、それ相当の時間の流れの中で、
地域の人々へ佛の音声とともに時刻を告げ、
毎日の生活を見守り続けてきた、はずだ。

梵鐘ひとつの中に、そんなさまざまな背景が見えてくる。

それを、娯楽番組の一こまのために、上空100メートルの高さから
落としてしまうという愚行。

そんな企画をする制作会社にも、
それを了承してしまう寺院関係者にも、
仏罰があたらないことを祈るばかりだ。

テレビに出ていた住職さんの掛けた袈裟が、
私の掛けてる袈裟と同じ紋がついていたように見えたのも、
深い憂愁に閉ざされる原因だ。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする