カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

史上最速のインディアン

2008-01-15 | 映画
史上最速のインディアン/ロジャー・ドナルドソン監督

変人の信念は幸運になる

 インディアンというのはオートバイの名前らしい。そのことに気付くまでずいぶん時間がかかった。人間の思い込みというのは恐ろしいものだ。いかに型破りかということも、それだけ極端でなければ破ることが出来ない。それこそ彼のようにつきぬけでもしないかぎり。
 何が起こるか分からないのがロードムービーだが、この映画はある意味で最後はどうなるかということがあらかじめ予想できる。なんと、僕はひねくれているので外してしまったけれど、普通の素直な人々は、恐らく映画の流れの予想がつくはずである。しかしそれでいて退屈するかといえばとんでもない話で、どうなるのかウキウキしながら映画にかじりついてしまうに違いない。僕だって思わず両手を上げてハイタッチしたい気分にかられた。気分よく高揚感の持続する映画である。本当にすばらしい。
 年齢で人間が固くなるという話はよく聞く。しかしこの人は頑固であるが硬くは無い。限りなく自由である。しかし世の中は障害だらけ。難題が次々降りかかってくるが、自分自身の力だけでなく、明らかな幸運を積み重ねて、どんどん前にすすんでゆく。完璧な楽観主義だからということではない。運を呼び込むのだ。もちろんそのためのリスクも大きい上に数も多い。ちょっとこれは無謀だと思えるほどだが、不思議と応援せずにはいられない。映画を観ているほうがそうなのだから、映画に出演している人たちが同情しないはずが無い。そういうことで幸運が得られていくのだろう。
 なんていうのは半分冗談だが、実際のところそうとしか思えないような気分のいい幸運だ。本当に心が優しい、人のいい人たちばかりが協力してくれるのではない。協力してくれる人たちだってひと癖もふた癖もあるような人たちばかりだ。しかし彼に少しだけ協力する気になって、彼だけでなく自分自身が幸福なっていくのである。彼から影響を受けて、心の中のわだかまりのような何かが少しだけ解けて、そうして何かをしたくなるのである。彼はそういう賭けのような人間の感情に勝てるだけの強靭な人物なのだろうか。いいや、ぜんぜん違う。恐らく未知の変人だ。そしてここまで変わっているからこそ、信じることが出来るのだ。
 物語が終わってテロップが流れ、さらに呆れてしまう。これで終わらなかったのか。人間粘っこく生きていけるものなのであるなあ。あははは。
 アンソニー・ホプキンスは久しぶりに怖くない役に当たってよかった。だいたい個性的だが善人である方がいいようにも思う。この映画の主人公に負けず劣らず変人であるという噂は聞くが、彼が本当にこのような人であったらいいのになあと、本心から思ったのであった。
コメント
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