せっかくだから少しは一人の時間を楽しめるかもと期待した入院生活であったが、隣のベッドの親父さんがやたらうるさい人で、とても気苦労した。
勝手に話しかけてきて延々と持論をぶつ。まあ話をするぐらいいいじゃないかと思う人もいるかもしれないが、そのひとつひとつがなかなか納得のゆかない内容で、なおかつ脈略もなく、なんだか自慢話になり、だんだんと誇張が入りでかくなっていって、少しのことに怒りに任せて差別的であったりする。一言でも口を挟むと、12倍ぐらいは話が展開してしまう。うー、とか、はあ、とか言わなければ、ものすごい質問攻勢がやってきて身ぐるみはがされそうになってしまうので、徐々にカーテンを閉めていって、本などに目を落としながら適当に流してやり過ごした。後半になるとなれてきて、それでもほぼ8割方無視していたような感じだったのだがら健闘はしたのだ。
その親父さんが外出中に、もう一人の同室の叔父さんから、「あんた、よく頑張っている方だ」とほめられたぐらいだ。退院するにあたって担当の先生からもねぎらわれて「うるさかったろう、よく頑張ったね」と肩を叩かれてうれしかった。
つれあいもどちらかというと人がいい方でなかなか無視できない。面会に来るたびに親父さんの一方的な話につき合わされ、やつれていくようでつらかった。早くこの環境を何とかしないと、家族にも被害が拡大するところであった。
親父さんは調子に乗って、入院仲間というのは特別な戦友のような友人である、と言うのである。そのこと自体には普通であればなるほどと思わないではないが、こちらはいづれは切れる縁であるから我慢が出来るというものである。この地獄のような時間もいつかは終わりが来る。そのことが希望となって入院という時間とこの親父さんと付き合うつらさを耐え忍ぶことが出来るのである。
しかしながら、話を聞いていると割合ご近所であるようで、「退院にあたって、今後もお付き合いのほどよろしく」といわれた時には、久しぶりに体が硬直して上手く返事が出来なかった。早速今年最大のホラー体験を味わったといっていい。社交辞令でこれほど萎縮するとは知らなかった。親父さんの不健康まで願うつもりはないが、出来るだけシャバに出ない方が平和というものではないか。少なくとも道でばったり出会わないように余生を送りたいものである。
勝手に話しかけてきて延々と持論をぶつ。まあ話をするぐらいいいじゃないかと思う人もいるかもしれないが、そのひとつひとつがなかなか納得のゆかない内容で、なおかつ脈略もなく、なんだか自慢話になり、だんだんと誇張が入りでかくなっていって、少しのことに怒りに任せて差別的であったりする。一言でも口を挟むと、12倍ぐらいは話が展開してしまう。うー、とか、はあ、とか言わなければ、ものすごい質問攻勢がやってきて身ぐるみはがされそうになってしまうので、徐々にカーテンを閉めていって、本などに目を落としながら適当に流してやり過ごした。後半になるとなれてきて、それでもほぼ8割方無視していたような感じだったのだがら健闘はしたのだ。
その親父さんが外出中に、もう一人の同室の叔父さんから、「あんた、よく頑張っている方だ」とほめられたぐらいだ。退院するにあたって担当の先生からもねぎらわれて「うるさかったろう、よく頑張ったね」と肩を叩かれてうれしかった。
つれあいもどちらかというと人がいい方でなかなか無視できない。面会に来るたびに親父さんの一方的な話につき合わされ、やつれていくようでつらかった。早くこの環境を何とかしないと、家族にも被害が拡大するところであった。
親父さんは調子に乗って、入院仲間というのは特別な戦友のような友人である、と言うのである。そのこと自体には普通であればなるほどと思わないではないが、こちらはいづれは切れる縁であるから我慢が出来るというものである。この地獄のような時間もいつかは終わりが来る。そのことが希望となって入院という時間とこの親父さんと付き合うつらさを耐え忍ぶことが出来るのである。
しかしながら、話を聞いていると割合ご近所であるようで、「退院にあたって、今後もお付き合いのほどよろしく」といわれた時には、久しぶりに体が硬直して上手く返事が出来なかった。早速今年最大のホラー体験を味わったといっていい。社交辞令でこれほど萎縮するとは知らなかった。親父さんの不健康まで願うつもりはないが、出来るだけシャバに出ない方が平和というものではないか。少なくとも道でばったり出会わないように余生を送りたいものである。