仁義の墓場 Graveyard of Honor Trailer
仁義の墓場/深作欣二監督
字幕だとつれあいが眠たくなるというので邦画を観ることにしました。でも、僕のこの選択で良かったのかどうかはよく分かりません。
仁義なきシリーズらしく、実話を元にしたドキュメンタリー調でありながら、完全に創作モノなんじゃなかろうかという作りです。石川力夫というのは実在の人物だったらしいですけど、確かに変わった人だったみたい。シマを守るという意識から過剰に敵対する団体に暴力をふるい、身内に迷惑ばかりかけている。しまいには自分の親分にまで反抗して切りつける始末。もうどうにもならんということで、大坂に飛ばされ、そこで麻薬に侵され、ちょっと気がふれた感じになって戻ってきて、自分をかばって面倒を見てくれている兄弟分に逆切れして射殺してしまったりするのであった。自分の奥さんというか女も、強引に強姦(強引だからそういうんだっけ)して手なづけている感じだし、それでも一途に支えてくれているものの結局病気をうつして自殺されてしまう。なんというかやくざの矜持に生きている人というより、単なる狂人の一生ということのようです。
もともと暴れん坊だったのだろうけど、ヤクザ社会のしきたりさえ守れない反発をしたために命を狙われてもおかしくない立場になってしまい、その時におそらく精神を病んだのだろうと思いましたね。正直に見るとそのようにしかとられないんじゃないでしょうか。女が苦しみながらもいうことを聞いて支えていたのは、そんな男が好きでもあり不憫でもあったのではないかと思います。そうするとこの話はすんなり理解できて、単に治療しとけばよかったのかもね、ということなのでありましょう。渡哲也の病的な感じの演技も、それは見どころには違いないけど、それはそうなって当たり前でしょう、と、僕のような業界人間には見えてしまうのでありました。
しかしながらたくさん血糊と分かる血が流れ、なんでそうなるの、という破天荒ぶりは、ストーリーさえ破綻させる力強さがありました。
また、ヤクザ社会を描いているわけですけど、戦後の焼け跡から資本主義社会が成り立っていく様も、なんとなく見て取れて、なるほどな、とは思いました。日本という国は、本来は裏社会であるヤクザというものが、地道に資本主義の土台を築きあげていったのだということなのかもしれません。表の出ようと選挙に立候補しても落選したり、しかし米軍とつながって政治的に画策する術は持っていたり、結局今の時代とそんなに違うことをしているわけではありません。そういう中で石川という男は、幼いまでにヤクザだった、ということなんだろうと思います。仁義さえ守れない破滅したヤクザだったくせに、自分の墓には仁義と掘らせて眠っている。矛盾しているようだけれど、ヤクザとしての生き方はまっすぐだったと思っていたのかもしれません。
こういう世界に憧れたり共感したりする日本人がいたからこそ、このような映画が一時期たくさんつくられた訳ですが、今の日本人には基本的なところはよく分からなくなってしまったようにも思われます。むしろ外国の映画好きから、今だに熱狂的なファンがいたりするわけで、日本って面白いってことになってしまったんだな、という思いがしてしまった映画でありました。
仁義の墓場/深作欣二監督
字幕だとつれあいが眠たくなるというので邦画を観ることにしました。でも、僕のこの選択で良かったのかどうかはよく分かりません。
仁義なきシリーズらしく、実話を元にしたドキュメンタリー調でありながら、完全に創作モノなんじゃなかろうかという作りです。石川力夫というのは実在の人物だったらしいですけど、確かに変わった人だったみたい。シマを守るという意識から過剰に敵対する団体に暴力をふるい、身内に迷惑ばかりかけている。しまいには自分の親分にまで反抗して切りつける始末。もうどうにもならんということで、大坂に飛ばされ、そこで麻薬に侵され、ちょっと気がふれた感じになって戻ってきて、自分をかばって面倒を見てくれている兄弟分に逆切れして射殺してしまったりするのであった。自分の奥さんというか女も、強引に強姦(強引だからそういうんだっけ)して手なづけている感じだし、それでも一途に支えてくれているものの結局病気をうつして自殺されてしまう。なんというかやくざの矜持に生きている人というより、単なる狂人の一生ということのようです。
もともと暴れん坊だったのだろうけど、ヤクザ社会のしきたりさえ守れない反発をしたために命を狙われてもおかしくない立場になってしまい、その時におそらく精神を病んだのだろうと思いましたね。正直に見るとそのようにしかとられないんじゃないでしょうか。女が苦しみながらもいうことを聞いて支えていたのは、そんな男が好きでもあり不憫でもあったのではないかと思います。そうするとこの話はすんなり理解できて、単に治療しとけばよかったのかもね、ということなのでありましょう。渡哲也の病的な感じの演技も、それは見どころには違いないけど、それはそうなって当たり前でしょう、と、僕のような業界人間には見えてしまうのでありました。
しかしながらたくさん血糊と分かる血が流れ、なんでそうなるの、という破天荒ぶりは、ストーリーさえ破綻させる力強さがありました。
また、ヤクザ社会を描いているわけですけど、戦後の焼け跡から資本主義社会が成り立っていく様も、なんとなく見て取れて、なるほどな、とは思いました。日本という国は、本来は裏社会であるヤクザというものが、地道に資本主義の土台を築きあげていったのだということなのかもしれません。表の出ようと選挙に立候補しても落選したり、しかし米軍とつながって政治的に画策する術は持っていたり、結局今の時代とそんなに違うことをしているわけではありません。そういう中で石川という男は、幼いまでにヤクザだった、ということなんだろうと思います。仁義さえ守れない破滅したヤクザだったくせに、自分の墓には仁義と掘らせて眠っている。矛盾しているようだけれど、ヤクザとしての生き方はまっすぐだったと思っていたのかもしれません。
こういう世界に憧れたり共感したりする日本人がいたからこそ、このような映画が一時期たくさんつくられた訳ですが、今の日本人には基本的なところはよく分からなくなってしまったようにも思われます。むしろ外国の映画好きから、今だに熱狂的なファンがいたりするわけで、日本って面白いってことになってしまったんだな、という思いがしてしまった映画でありました。