既にすっかり定着しているし、普通に耳にするようにはなってしまって残念な言葉の中の一つに、空弁(そらべん)がある。最初にアナウンスでソラベンと発音されているのを聞いた時には、かなりギョっとした。
それは誰もが当たり前だろうが、学生時代(厳密には生徒時代だが)は弁当を学校に持っていくので、食べた後の弁当は空弁当、略してカラベンと呼ぶのが普通だったからだろうと思う。別に古いとか古くないとか関係無くて、中学・高校と弁当だったから感覚としてしみついているという感じだろうか。空になった弁当に箸が転がってカラカラなるし、そのような響きが何となくユーモラスな感じもある。家に帰ると「空弁当出しときなさい」と母親に注意される。もちろん別物だと言われても、それほど日常にあるものを強引に違うと言われる方が乱暴である。
確かに空港の売店やおみやげ屋などでは、かなり前から目にしていたようではある。最初は空港の弁当だからクウベンという略なのかも(また、そのように言う人もいたんじゃなかろうか)とは思わないでは無かったかもしれない。それにしてもカラベンという言葉があるんだから、漢字で書くのはセンスが無いとしか言いようがない。少なくとも略すると買いたくなくなる。空のものを買わされるのは馬鹿にされているみたいだ(もちろん空ではないのだけれど)。
そんなような話をしていたら、いや、そのうち全部給食や食堂で飯を食うことが当たり前になって、母親から弁当作ってもらうような子供はいなくなりますよ、と言われた。なるほど、世の中はそのような流れなのらしい。そもそも弁当を作ったことも無いような人間がブツクサ言うことでは無いのだろう。すんません。
まあしかし、飛行機は利用しなくちゃいけないし、確かにうっかりソラベンと発音してしまう日が来るのかもしれないな。そんな屈辱的な自分になる前に、改心すべき時期にあるのかもしれない。