2999年異性への旅/マイク・ニコルズ監督
邦題を見て選んだ人は失望するだろうし、邦題を見て観ることを諦めた人は楽しむことすらできない。そういう意味では、ひたすら残念な佳作コメディ。だって普通はこんな題名の映画を選んで観るなんて考える方がどうかしてるよ。確かに下半身ネタだし、家族で観ると気まずくなる場面も多いのだけど、なかなかどうしてかなり面白いんだから見なきゃもったいないという気すらする。まあ、人は選ぶということは言えても。
ただしかし、説明しても観る気にならない可能性はある。クローンで増殖し続けたために生殖能力が無くなり男しかいない星の宇宙人が、その未来をかけて地球に選ばれた一人を送り込み、地球人との子供をもうけようと奮闘する物語。なんだけど、まあ、その筋だけでもくだらないことは見てとれる。しかし、このくだらなさがあんがい深くて、女性を理解することの難しさや、人間社会そのもの問題なんかも考えさせられるということになって行く。もちろんくだらなさを保ちながらそのような展開になるところが偉い訳で、こいつら本当にバカかもしれないと思いながら感心してしまい、しまいにはなんだか感動すらしてしまう。つまり、地球人必見なのではないかと思う訳だ。
人間界に限ってのことだけれど、人間どうしの分かりあえなさというのはあんがい深くて、それぞれに勘違いしながら傷つけあったり、知らず知らずにダメージを受けたりしている訳だ。相手あってのこととはいえ、自分自身では相手のことすらうまく理解することも難しい。自分自身を鏡みていろいろ試みる人もいるのだろうけど、やはり何となくつらくなったりして長くはその努力も続けられない。終いには諦めて、その関係性の修復すら怠るようになってしまう。非常に不幸なことだけれど、実にありふれたことになってしまっている。
たとえそうではあっても、ひょっとするとうまくいく秘訣はあるのではないか。そういうことに悩んでいる人は、ひょっとするとこの映画を見て、笑いながらその術を体得できるかもしれない。いや、適当に笑って忘れてしまってもぜんぜんかまわないのだけれど…。
とにかく、バカ映画には違いないにせよ、面白いだけじゃなくていい映画だという感じになるところがなかなかなのである。邦題が悪くて損している見本のような佳作なのではないだろうか。