サンザシの樹の下で/チャン・イーモウ監督
中国の下放の時代、女子高生が農村に研修のような、ホームステイのようなことでやって来る。その家に居た青年から好かれて、猛烈にアタックされる日々、徐々に恋に落ちていく。だが、女子高生の家庭は、いわゆるインテリ層で、当時の中国では迫害されていた階級だった。農村の家族や青年はとても温かい人々だが、だからといって共産党当局がこの若い二人を受け入れていくものとは考えない、疑い深い母の思惑もあった(そのように考えないと、いつ共産党が襲ってくるのか怖いのだろう)。
若い二人は、それでも小さなデートのようなことを繰り返す。ついには一夜を共に明かすチャンスが巡ってくるのだったが……。
まあ、いわゆる中国版の純愛物語なのだろう。非常に美しく、しかし残酷に映像が撮られており、いわゆる、観ている人の心は揺り動かされるわけだ。僕としては、いくら何でもそれは無いだろう! と思ってしまうタチだが、普通考えてみると、それくらい心がねじ曲がっているので仕方がないことかもしれない。だが、この映画の展開は、相手の本当の幸福を思っている、ということを言いたいのかもしれないが、そんなきれいごとを考えるのは、実は自分の心から逃げているからだ。恋や愛というのは、相手を奪ってなんぼである。それができないようじゃ、生物としておしまいである。要するに彼らは、人間として生きていないのではないか。恋愛というのは、相手のことを思いやるような余裕があっては、成就するような甘いものではない(あくまで個人の見解です)。
という物語であるが、しかし多くの人は僕のような感想は持たないだろうから、ご心配なく。安心して名画をお楽しみください。