快晴す。
惣(総)登城の日なのだが今日は欠席する。学校の当番だ。
小梅は昼前から田中へ行き、しばらくしてから荒浜へ行った。
今日は風も凪いで荒浜とは名のみで静かだ。
皆々松陰に毛氈を敷いて弁当を開く。しかし、主人が遅いのでみんな待つ。
岩一郎も岡野の稽古日なので遅くなかなか来ない。
4時頃には風が吹き始めなにもかもに砂がかかった。寒くもなってきたのでもう帰ろうということになった。
「あら浜はその名のみして春の海 なみもしずけくたつもわすれて」
さて、また田中でみな弁当をひらきみなで遊んだ。8時前にお開きとなり、みなと一緒に帰ろうとしたけど善一が書くものがあるからもう少しどうですかというのでしばらく遊んだ。
韻字を分けて詩を作った。
今、花満開でちらちらと一つ二つ散る。月は白く花に照り添い、非常に良い気分。
しかし、一句も出せないとなると心が苛立つばかり。
はや一緒に来た人たちが帰ってしまい静かになったのでほんとにもう帰ろうと立ち上がった時に、小梅は「有」という字を得ていたので余儀なくこのように書き付けた。
「よし野にもますをの清水底すみて 照らせる月に花の影有り」
この屋敷の東隣から清水が湧き出て、ここを流れ西成田地へ流れ出る筈なのだ。
※荒浜 南海電車の和歌山港改札の西口を出て南に行くと松林がある。
かって、その松林は長く続いていた。
その大きな浜辺はまさに白砂青松で人々の憩いの場所だった。
いろいろな貝類も取れるので潮干狩りでも賑わったという。