■朝、家主のツウさんに誘われて定年後あの食堂で働いている彼(名前が覚えられない)と一緒に7階の家主さんの居間でお茶をご馳走になることになった。今まで彼らの家族とは家の外では会うことがあっても家の中に入ったことはない。僕のいる501号室の階からはいつも鉄の格子戸に施錠されていて階下の店子の居住区とは行き来ができなくなっている。
格子戸の錠をあけて最上階のお宅にはいると、孫むすめのアンとその弟が飛び起きて走り路って来る。僕たちはとても仲がよくていっしょに遊びたいんだけど家の人からまるで「知らないおじさんには近寄ってはいけないよ」といわれているみたいな雰囲気だ。
実は前回格子戸越しで会ったときはまわりに人がいなかったのでアンは僕と電話番号を交換した。もちろん電話はしてないし彼女からもかかってはこない。
ツウさんがエレベーターのモーターなどのある屋上や最上階のテラスの観葉植物やそこからの眺めは普段とはちがうハノイの高層ビルの建築ラッシュの景観を見せてくれた。ここでは普通の家で3階4階。ビルになると6,7階のビルが隣り合ってぎっしり建っているのが普通だ。このビルも5階までは主に学生マンションになっていて、一階の駐輪場のバイクの台数から推測すると50人くらいいて、150~200ドルの部屋に住んでいる。
ツウさんに応接室に案内された。ベトナムの立派な応接室にありがちな、それもまた飛び切り上等な木の彫刻のある机椅子セット、周囲には世界各国のおみやげやら贈り物がならんでいて、立派な日本人形もあった。壁には息子さんがバージニアの大学院を卒業したときの家族の記念写真や、珍しいドル紙幣のセットなどが掛けてあった。
僕も10年の在米生活で1度もみたことのない2ドル紙幣がかけてあった。ツウさんいわく来年の正月に1枚くれるとか、、。
応接室のテーブルの上にティーカップ4個をおいてポットにお茶をいれて僕たちに飲ませてくれた。渋いくらいの緑茶でおいしいと思った。なにしろ一番有名な銘柄らしい。中国、台湾、韓国といろいろお茶を飲んだけれどそれぞれ趣があっていい。
学校の先生の彼は今では食堂で「おしん」(ベトナム語で家政婦のこと)をしているが一応インテリということで一緒に招待されたのだがこの国の格差を垣間見る機会になった。