熊本県川柳研究協議会(熊本川柳研)

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熊本の川柳人

2020-09-10 08:09:18 | 川柳一般

熊本の川柳人 北川 甘泉 きたがわ かんせん(本名・初喜)  1920年(大正9年)~2010年(平成22年)               

「北川甘泉川柳句集 よあけ」(平成十二年三月発行 私家版)には、タイトルのとおり甘泉さんの川柳のよあけが記されています。そのよあけは台湾にありました。最初のページには次の記載があります。

昭和18年8月 台湾川柳社「国姓爺」入会

指導 塚越迷亭(正光)師

川上三太郎師門下

助手 陸軍衛生伍長 新谷一挙

係長 陸軍衛生兵長 北川初喜

会場 台中陸軍病院本院

戦後は熊本市川尻で六代目として老舗和菓子店を営み、甘泉の柳号で川柳を続けました。

昭和29年11月 川尻きまぐれ川柳会 入会  主幹 安永理石

昭和30年1月  熊本川柳研究会 入会    指導主宰 田中(鳴風)辰二先生

昭和30年1月  川柳噴煙吟社 入会    指導主宰 大嶋涛明先生

昭和48年1月  川柳噴煙吟社 同人推奨   指導主幹 吉岡竜城

平成9年1月   川柳熊本教室 入会    指導 安永理石

平成11年12月 川柳「声」 入会    代表 寺本隆満

     (上記青字部分は「よあけ」に記載のあるとおりです。涛明は濤明、竜城は龍城とおもわれます。漢数字はアラビア数字に直しました)

注目すべきは戦中の台湾時代に詠んだ川柳12句が赤黒く座していることです。

制服の乙女等黒し決戦下

担架持つ腰に三角巾があり

常会で防空知識増して行き

ここには3句だけ掲げましたが、戦意高揚を意図とした川柳がならんでいます。私たちは川柳の歴史として、文化遺産としてこれらの句を大切に保存しなければなりません。書かれた時代背景を真直ぐに受け止める覚悟と寛容さを持ち合わせる必要があるでしょう。

写真は色紙に書かれた参加者の名前の寄せ書きです。うらに次の記載があります。

川尻気まぐれ川柳会 安永理石主幹 昭和30年7月16日 於 例会 北川甘泉宅

 

また、「ふんえん」№604(平成12年5月発行)には〈一ページ句集〉として36句掲載されています。その中にはご家族や営まれている和菓子店を詠んだ句があります。やさしいまなざしが見えます。

菓子折りが高く積もった回復期

信じきるこの子に託す七代目

評判のお店笑顔を絶やさない

ひ孫抱く妻は達者の昇り竜

2句目にある七代目さんは最近、甘堂という柳号で川柳をはじめられました。そして現在は八代目さんが店を継いでおられます。

        ※ここで引用した資料は甘泉さんの奥様(92歳)から提供していただきました。 貴重な資料をお借りすることができたことに感謝申し上げます。

                                               本研究協議会 いわさき楊子